あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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終わりなき旅立ち

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しばらく登ると、溶岩が急に途切れ、二人は拓けた場所に出た。

安堵感と同時にやけどの痛みが二人を襲う。
痛みに耐え兼ねて零した涙が、やけどにかかるとまた飛びあがるほどの痛みが走る。

二人は地べたを転がりながら、痛みに泣き叫び続けた。
噛み締めた唇からは、赤い血が流れ出る。



どのくらい悲鳴をあげていたのかわからない。
二人はあまりの痛みに気を失っていた。
気がついたのと同時に、また激しい痛みが戻って来たが少し休んだことで、気力や体力は僅かに戻って来たように感じられた。




「行きましょう。ローラン…」

「そうだね…」



二人は、壊れかけた人形のようにぎこちなく、歩き出した。
痛みのせいで、自然に涙がこみ上げてくる。
ゆらゆら揺れる二人の目の前に現れたのは、すべてを覆い尽くす茨の道だった。



「…ジョゼット、僕が君を背負うよ。」

「何を言ってるの!
私はこんなトゲなんてへっちゃらよ!」

そう言いながら、茨の中に裸足で踏み出したジョゼットの足が停まり、あたりに彼女の絶叫が響き渡った。



「ジョゼット!!」

ジョゼットは、子供のように泣き叫びながら、ローランの手をふりほどき歩き出す。



「ジョゼット!やめるんだ!
もうひき返そう!無理だ!
こんな所、行けるはずないんだ!」

「いや…!
いやよ!
私は、お日様に会いに行くの…!そこであなたに絵を描いてもらうの…!!」



一歩踏み出す度に、ジョゼットのやけどでみずぶくれの出来た足の裏に、鋭く長いトゲが突き刺さり真っ赤な血を噴き出させる。

もうどこが痛いのかさえもわからないまま、ジョゼットは泣き叫びながら歩いて行く。
まっすぐに歩くつもりが、もうまっすぐには歩けなかった。
泣き過ぎて苦しくなった肺に酸素を求めて大きく口を開けながら、ジョゼットは歩き、同じようにその後をローランが続く。

もう身体の感覚も半ば麻痺し、意識を失いそうになった頃、不意に悪魔のような茨の道が途切れた。



「ジョゼット!
…あ…あと少しだ…!頑張るんだ!」

ローランが後ろからジョゼットの身体を支えた。



そして、茨の道が途切れる場所に着いたのと同時に二人は倒れこみ、意識を失った。

 
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