あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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十字架の楽園

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ミッシェルさんについて、私は緊張しながらサムさんの隣に座り、お酒を注いだり会話をした。
なぜだかわからないけど、私は「おかしな奴」だと言われ、サムさんは機嫌良く笑ってた。
生まれて初めてお酒も飲んだ。
おいしいとは思わなかったけど、身体がふわふわしてなんとなく陽気で楽しい気分になった。
こんなに楽しい気分になれるから、皆、お酒を飲むんだと私はその時初めて理解出来た。
だけど、その後が良くなかった。
何人目のお客さんが来た頃だったかはっきりとは覚えてないけど、楽しい気分はすっかり消え失せ、私は今まで味わったことのない気分の悪さを感じた。
悪心、動悸、冷や汗までが流れ出て来た…
その時、私はジョシュアのお母さんの話を思い出していた。
こんなに気分が悪いのでは、私もジョシュアのお母さんと同じように死んでしまうのではないかととても不安な気持ちを感じた。
ちょうど、ミッシェルさんが私の様子がおかしいことに気が付いて、私を店の奥に連れていってくれたのだけど、胃の中が空っぽになるほどに吐いても私の体調は回復せず、あまりの苦しさに私は泣きそうになるのをこらえながら、廊下に横たわっていた。








頭が痛くて目が覚めた…



「どうだ?まだ気持ち悪いか?」

少し経って、声をかけたのはジョシュアだとわかった。



私が寝ていたのはジョシュアの部屋だった。
一体、いつの間に…

「ジョシュア、私…」

「昨日は大変だったみたいだな。
なんでも、ざるみたいに飲んでたって話じゃないか。
最初からあんまり無理するなよ。」 

「ジョシュアが連れて帰ってきてくれたの?」

「そうさ。
全然覚えてないのか?」

私はあれから完全に酔い潰れてしまったらしい。
お酒は飲むと酔い、飲みすぎると命を落とすこともあるということは知っていたけど、どの程度飲めばどんな症状になるのかは個人差があるということしか知らなかった。
昨夜のことを参考に、今後は飲む量を考えなくては…と私は思った。
今まで病気には無縁だった私には、昨夜のことはとても厳しい教訓となったのだ。
その後、私は店の人に酔い易いお酒とそうでないものがあること、酔いにくい飲み方等を教わり、どの程度飲めばどんな症状になるかを学んでいった。
そのおかげで、あんな酷い酔い方をすることはなくなった。

気がつけば、酒場での仕事も一ヶ月が過ぎようとしていた。
仕事にもずいぶん慣れた。
いまだに私の会話は少しおかしいようだけど、それ以外は順調にこなしてきたと思う。
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