あれこれ短編集

贈り物配達うさぎ

１

＊



（つまんない……）


緑色の絨毯のようにも見える広い広い人参畑を見下ろしながら、ラパンは心の中で呟いた。



ラパンは、この世界で一番のお金持ちで一番幸せなうさぎ。
丘の上に佇む真っ白な城は、この世界にいるうさぎが全員集まってもまだ余る程の広さを誇り、全員の名前を覚えきれない程、たくさんの召使が仕えている。
小さな頃、ラパンが何度も迷子になっただだっ広いクローゼットには、一時間ごとに着替えても着きれない程の上等な服が並び、召使を介さないと話も出来ない程、長い長い食卓で、ラパンの一家は庶民が口にすることの出来ないような素晴らしいご馳走を毎晩食していた。
他のうさぎからしたら夢のようなそんなラパンの生活も、ラパンにとってはごく当たり前のこと。 



（あぁ…人生って、なんてつまんないんだろう…）



ラパンはゆっくりと身体を倒し、短くてふかふかした両手を頭の下に差しこむと、ラパンの赤い瞳にはまっ青な空が映った。



（つまんない、つまんない、つまんない…！）



「なにがそんなにつまらないんじゃ？」

「わっっ！」



青い空を遮った、真っ白なひげの老人にラパンは飛び起きた。



「だ、誰だ！
お、おまえ…うさぎじゃないな！
どうやってここに入った！
そ、それに、なんでボクの考えたことを……」



真っ白いひげの老人は、きんきら声でがなりたてるラパンに少しもひるむことなく、穏やかな笑みを返す。



「元気の良いうさ公じゃな。」

「う、うさ公だって！？
ボクを誰だと思ってるんだ！
この世界で一番お金もちで一番偉いド・ラージュ家の七番目の息子のラパンだぞ！」

「……それがどうかしたのかね？」




「なっ……」

身をかがめ、ラパンの顔をのぞきこむようにしてそう言った老人に、ラパンは言葉を失った。