83 / 406
黒猫の願い事
5
しおりを挟む
「おまえ、なにをくっつけてるんだ?」
ようやく彼があぜ道に出て来た時、彼の首にひっかかっているのがロザリオだってことがわかった。
「なんだ、おまえ。
今頃クリスチャンになったのかい?」
僕がロザリオをはずそうとすると、アレクは僕の手に噛みついた。
もちろん加減はしているが、どうやらこれは彼にとって大切なものらしい。
昔から、アレクはガラクタを拾う名人だったけど、ロザリオなんて一体どこから…?
「わかった、わかった。
これはおまえのもんなんだな。
取ったりしないよ。
それにしても、おまえは相変わらず自由な生き方してるんだね。
おまえも年なんだから、夜遊びも程々にしときなよ。」
僕はあぜ道の片隅に腰を降ろし、ロザリオを架けたままのアレクを膝の上に載せた。
「僕もおまえみたいに自由に生きたいよ。
都会での暮らしは楽しいけど、大変なこともけっこうあるんだ。
都会っていうのはこっちとは時間の進み方が違ってね。
僕は何度『気が利かない』って言われたことか……」
あぁ、まただ……
僕は小さい頃から、家族には言えない話をずっとアレクに話して来た。
それは大人になってからも同じで、こっちに戻って来るといつもこうしてネガティブな僕が現れて、彼に愚痴ってしまうんだ。
都会の暮らしをエンジョイしてるのも本当、でも、辛い事があるのも本当。
特に仕事と人間関係はなかなかうまくいかない。
そんなことを愚痴れるのは、やっぱり今もアレクだけなんだ。
アレクはいやがりもせず、鬱陶しい愚痴にじっと耳を傾けて、時折、僕の顔を見上げる。
おばあちゃんは、アレクは人間の言葉をわかってるってよく言うけど、その時の表情は本当にそう思える。
「そうか、君も大変なんだな。」
なんて、言いそうな顔付きなんだ。
「本当に、おまえがうらやましいよ。
一度で良いから、僕も猫になって、自由気ままに生きてみたいな。」
心の中のもやもやしたものをさんざん愚痴って、締めにそう言った時……
アレクは、いつものあの顔で僕を見上げた。
そして、いつもとは少し違う奇妙な泣き声を上げたんだ。
「アレク、どうした?
どこか痛いの……」
ようやく彼があぜ道に出て来た時、彼の首にひっかかっているのがロザリオだってことがわかった。
「なんだ、おまえ。
今頃クリスチャンになったのかい?」
僕がロザリオをはずそうとすると、アレクは僕の手に噛みついた。
もちろん加減はしているが、どうやらこれは彼にとって大切なものらしい。
昔から、アレクはガラクタを拾う名人だったけど、ロザリオなんて一体どこから…?
「わかった、わかった。
これはおまえのもんなんだな。
取ったりしないよ。
それにしても、おまえは相変わらず自由な生き方してるんだね。
おまえも年なんだから、夜遊びも程々にしときなよ。」
僕はあぜ道の片隅に腰を降ろし、ロザリオを架けたままのアレクを膝の上に載せた。
「僕もおまえみたいに自由に生きたいよ。
都会での暮らしは楽しいけど、大変なこともけっこうあるんだ。
都会っていうのはこっちとは時間の進み方が違ってね。
僕は何度『気が利かない』って言われたことか……」
あぁ、まただ……
僕は小さい頃から、家族には言えない話をずっとアレクに話して来た。
それは大人になってからも同じで、こっちに戻って来るといつもこうしてネガティブな僕が現れて、彼に愚痴ってしまうんだ。
都会の暮らしをエンジョイしてるのも本当、でも、辛い事があるのも本当。
特に仕事と人間関係はなかなかうまくいかない。
そんなことを愚痴れるのは、やっぱり今もアレクだけなんだ。
アレクはいやがりもせず、鬱陶しい愚痴にじっと耳を傾けて、時折、僕の顔を見上げる。
おばあちゃんは、アレクは人間の言葉をわかってるってよく言うけど、その時の表情は本当にそう思える。
「そうか、君も大変なんだな。」
なんて、言いそうな顔付きなんだ。
「本当に、おまえがうらやましいよ。
一度で良いから、僕も猫になって、自由気ままに生きてみたいな。」
心の中のもやもやしたものをさんざん愚痴って、締めにそう言った時……
アレクは、いつものあの顔で僕を見上げた。
そして、いつもとは少し違う奇妙な泣き声を上げたんだ。
「アレク、どうした?
どこか痛いの……」
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
校長室のソファの染みを知っていますか?
フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。
しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。
座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子
ちひろ
恋愛
マッサージ師にそれっぽい理由をつけられて、乳首とクリトリスをいっぱい弄られた後、ちゃっかり手マンされていっぱい潮吹きしながらイッちゃう女の子の話。
Fantiaでは他にもえっちなお話を書いてます。よかったら遊びに来てね。
寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい
白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。
私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。
「あの人、私が
隣の人妻としているいけないこと
ヘロディア
恋愛
主人公は、隣人である人妻と浮気している。単なる隣人に過ぎなかったのが、いつからか惹かれ、見事に関係を築いてしまったのだ。
そして、人妻と付き合うスリル、その妖艶な容姿を自分のものにした優越感を得て、彼が自惚れるには十分だった。
しかし、そんな日々もいつかは終わる。ある日、ホテルで彼女と二人きりで行為を進める中、主人公は彼女の着物にGPSを発見する。
彼女の夫がしかけたものと思われ…
【R-18】クリしつけ
蛙鳴蝉噪
恋愛
男尊女卑な社会で女の子がクリトリスを使って淫らに教育されていく日常の一コマ。クリ責め。クリリード。なんでもありでアブノーマルな内容なので、精神ともに18歳以上でなんでも許せる方のみどうぞ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる