あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
66 / 406
僕の大切な黒猫

しおりを挟む




「開けなさい。ライアン!」



準備が整い、さて、どうやってそれを実行しようかと考えている時、扉の向こうから父さんの声が聞こえた。
抜群のたイミングだ。
僕は、大きく息を吸いこみ、それをゆっくり吐き出すと、扉の方へ駆け寄った。



「父さん!大変だ!
今、みつけたんだけど、こんなものが……!」

「なんだ?」

父さんは僕から渡された紙切れに目を通し、その瞳が大きく見開かれた。



「ベッドの下でみつけたんだ。
きっと、風で飛ばされたんだね。」

「な、なんてことを……
マイケルの奴……!」

母さんもその紙を読んで、両手で口元を覆った。

その紙切れには、都会に出て行くこと。
友達の家に厄介になるから、心配はいらないということが打ってあった。
もちろん、それをタイプライターで打ったのはこの僕だ。
サインは兄さんのへたくそな字を真似て書いた。



「よし、明日早速マイケルを探しに行くぞ!」

「……僕は行かないよ。」

「ライアン、おまえ、こんな時になにを言ってるんだ。
……あ!あれが拾って来たという猫だな!
すぐに捨てて来るんだ!」

「いやだよ。
僕はあの子を飼うって決めたんだ。
それを許してくれるまで、僕は何もしない!」

「ライアン、何、子供みたいなことを言ってるんだ。」

「だったら、父さんも僕を子供扱いするのはやめてよ。
僕はもう小さな子供じゃない。
この子の世話だって出来る。
この子の食費だって出すよ。
だから……」

「だめだと言ったら、だめだ!」

「じゃあ、早く出てってよ!
それとも、僕がこの子と一緒にこの家を出て行こうか?」

父さんの顔が赤くなり、拳がぶるぶると震えている。
相当怒ってるってことはわかったけど、ここだけは引くことは出来ない。



「……勝手にしろ!」

父さんは部屋を出ていき、母さんはおろおろしながら父さんの後をついていった。 
 
しおりを挟む
1 / 3

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

ばじゅてんっ!〜馬術部の天使と不思議な聖女〜【完結済み】

キャラ文芸 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:4

トリップした私対腹黒王子

恋愛 / 完結 24h.ポイント:0pt お気に入り:93

残されたキヅナ

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:1

僕の奥さんは保育士さん

エッセイ・ノンフィクション / 連載中 24h.ポイント:0pt お気に入り:2

愛を疑ってはいませんわ、でも・・・

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:35pt お気に入り:3,446

処理中です...