あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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たまご物語

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それは本当に突然のことだった。



「やぁ、アルフ。」

いつものように散歩に出掛けようと玄関を出た所で、僕は見知らぬ男に声をかけられた。
会ったことのない男だったけど、本能のようなものが僕に危険を知らせた。
心臓は早鐘を打ち始め、足が震える。
とにかく、逃げなきゃ…!
そう考え、駆け出そうとした時、僕は男の強い力で腕をがっしりと掴まれた。









「おめでとう、アルフ。」



一瞬で、僕はさっきとは違う場所に来ていた。
真っ白な光りに包まれたその場所には、姿ははっきり見えない誰かがいて、僕におめでとうと言ったんだ。



「今回は、ずいぶんと長い時間がかかりましたね。」

「な…なにを…
僕には何のことだか…」

「アルフ、さぁ、選びなさい。
どの道にするかを選ぶのです。」

ふと見ると、目の前に六本の道があった。
その道はすべて下に向かった斜面になっている。



「道を選ぶ?何のことだ!?
僕は、こんなもの選ばないぞ!
戻してくれ!
今すぐ僕を家に戻してくれ!」

僕は、人らしき者が立っている方に向かって叫んだ。




「あなたはもうあの家には戻らないのです。
それどころが、あなたのあの家はもうありません。」

「……家がない?嘘だ!
僕は家に戻るんだ!
僕はずっとあの家から離れない!」

その時、誰かの小さな溜め息が聞こえた。



「アルフ、あなたにも本当はわかっているんでしょう?
あなたがどれほどいやだって頑張ってもそうはいかないんですよ。
さぁ、観念して早く決めて下さい。
どの道にするんですか?」

「いやだ!僕はどれも選ばない!
僕はどこにもいかないんだからな!
……そうだ!誰かに代わってもらってくれ!
あそこから出たいと思ってる者はたくさんいる!
その誰かと交代すれば良いじゃないか!
その人は喜ぶし…僕は……」

いつしか僕の瞳からは熱いものが流れ出していた。
僕はそれほど離れたくなかったんだ…
いや…… 
 
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