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聖夜の鐘
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「レイラ…考えてみたら、僕達、最高に幸せだね。
だって、どんなに愛し合った夫婦でも、なかなか一緒には逝けるもんじゃないよ。」
そう言ってエディは微笑んだ。
「エディの馬鹿…こんな時に冗談言うなんて…」
「……冗談じゃないよ。
本心だってば。
今まで、僕はなんて運が悪いんだろうって思ってたけど、君の話を聞いてそうじゃないって思ったんだもの。
僕はこの世でもたくさんの人に愛されて、そして、最期の時には最愛の人と逝けるんだから、運が悪いなんて言えないよね。
君はどうだった?
病気で苦しんで辛い人生だった?」
「……そうね。
病気になってからは辛い事ばかりだったけど…でも、今になって思い出されるのはその間に家族が私にしてくれたことよ。
私が愚痴っても泣いても喚いても…どんな時にも私をいつも支えてくれた。
それを考えると、私、不幸じゃなかったと思えるわ。
もちろん悔いがないわけじゃないけど、病気で苦しんだのも五年だけよ。
生まれてからずっとそうだったわけじゃない。
それに…最期はあなたとこんな素敵なクリスマスを過ごせたんですもの。
これ以上、文句は言えないわよね。」
エディは、レイラをみつめ小さく笑った。
「何?どうして笑うの?」
「君にしては前向きな考えだなって思ってね。」
「……あなたの性格が移ったのよ、きっと。」
レイラもエディと同じように微笑み、肩をすくめる。
「……じゃあ、そろそろいこうか…」
「……そうね。」
満ち足りたみつめあい手を取り合った二人の身体は、真っ白な雪の降る中をゆっくりと天へ上って行く…
*
「あら…この鐘の音…
もしかして、丘の鐘、修理されたの?」
「違うだろ。
あれはもうひびが入って直せないとか聞いたよ。
きっと、他の所の鐘だよ。」
「そうかしら…?
でも、だとしたら、一体どこの鐘なのかしら…?
それにしても、とても素敵な音ね…」
「そうだね。
まるで、僕達を祝福してるみたいだね!」
「まぁ、マルコったら!」
人々は、どこからともなく響き渡る美しい鐘の音に、それぞれが幸せな想いを胸に抱いた。
その鐘をついた二人が、今、天に向かって旅立ったことを気付く者は、誰一人としていなかった……
~Fin~
だって、どんなに愛し合った夫婦でも、なかなか一緒には逝けるもんじゃないよ。」
そう言ってエディは微笑んだ。
「エディの馬鹿…こんな時に冗談言うなんて…」
「……冗談じゃないよ。
本心だってば。
今まで、僕はなんて運が悪いんだろうって思ってたけど、君の話を聞いてそうじゃないって思ったんだもの。
僕はこの世でもたくさんの人に愛されて、そして、最期の時には最愛の人と逝けるんだから、運が悪いなんて言えないよね。
君はどうだった?
病気で苦しんで辛い人生だった?」
「……そうね。
病気になってからは辛い事ばかりだったけど…でも、今になって思い出されるのはその間に家族が私にしてくれたことよ。
私が愚痴っても泣いても喚いても…どんな時にも私をいつも支えてくれた。
それを考えると、私、不幸じゃなかったと思えるわ。
もちろん悔いがないわけじゃないけど、病気で苦しんだのも五年だけよ。
生まれてからずっとそうだったわけじゃない。
それに…最期はあなたとこんな素敵なクリスマスを過ごせたんですもの。
これ以上、文句は言えないわよね。」
エディは、レイラをみつめ小さく笑った。
「何?どうして笑うの?」
「君にしては前向きな考えだなって思ってね。」
「……あなたの性格が移ったのよ、きっと。」
レイラもエディと同じように微笑み、肩をすくめる。
「……じゃあ、そろそろいこうか…」
「……そうね。」
満ち足りたみつめあい手を取り合った二人の身体は、真っ白な雪の降る中をゆっくりと天へ上って行く…
*
「あら…この鐘の音…
もしかして、丘の鐘、修理されたの?」
「違うだろ。
あれはもうひびが入って直せないとか聞いたよ。
きっと、他の所の鐘だよ。」
「そうかしら…?
でも、だとしたら、一体どこの鐘なのかしら…?
それにしても、とても素敵な音ね…」
「そうだね。
まるで、僕達を祝福してるみたいだね!」
「まぁ、マルコったら!」
人々は、どこからともなく響き渡る美しい鐘の音に、それぞれが幸せな想いを胸に抱いた。
その鐘をついた二人が、今、天に向かって旅立ったことを気付く者は、誰一人としていなかった……
~Fin~
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