あれこれ短編集

ルカ(聖夜月ルカ)

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幻想チョコレート

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 「剣、ハッピーバレンタイン!」

 「レナ、ありがとう!」

 店に行くと、俺は次々に可愛らしい紙袋や包みをもらった。
 受け取る度に、胸が高鳴る。



 (あぁ、この中には一体どんなチョコレートが入っているんだろう?
早く見てみたい!)



 *




 「お疲れ様です。」

 「お疲れ。
じゃあ、明日はおまえもゆっくり休めよ。」

 「ありがとうございます。
じゃあ、おやすみなさい!」

 送ってくれたリュウに手を振り、抱えきれないほどの荷物を抱えて俺は部屋に戻った。
リュウには、明日はでかけるから食事の用意はいらないと言っておいた。
これで一日中、チョコを食べていられる…



俺は、上着を脱ぎ捨てるとすぐにプレゼントの開封を始めた。
 中から出て来たのは、腕時計らしき小箱。
あれ…?
その紙袋にはそれとメッセージカードしか入っていなかった。
 俺は、小箱を開けることもせず、次の紙袋を開いた。
そこにはライターらしき小箱とメッセージカード…
どういうことだ、なぜ、チョコが入ってない?!
 俺は、次から次にプレゼントを開け、その度に失望と怒りを募らせていった。





 「はい。あ、剣さん、どうしたんです?」

 「あぁ…リュウ、ちょっと聞きたいんだけど…
今、プレゼントを見てたら、チョコが入ってないみたいなんだけど、もしかしてどこかに忘れてる?」

 俺は出来る限り、冷静を装って話した。



 「あぁ、そのことですか。
 昨年はチョコのせいで大変だったじゃないですか。
だから、皆に言っておいたんですよ。
 今年から、剣さんにはチョコは禁止!
 持ってきたら没収って!」

 「な、な、な、な……」

 俺は怒鳴りちらかしそうになるのを必死にこらえた。



 「剣さん、人が良さ過ぎるんだもん。
 昨年みたいに無理させちゃ申し訳ないってことでそう言ったら、女の子達もわかってくれて…」

 「そ、そ、そうだったのか…
悪かったな、気を遣ってもらって…」

 俺は上ずった声でそう言うと、電話を切った。





 「ば、ば、ば、馬鹿野郎~~!!」



 一年に一度の俺の楽しみを不意にしやがって…!
 酷い!
あんまりだ!
 畜生~~!!



 俺は込み上げる怒りを押さえきれず部屋の中で大暴れをし、自棄酒を飲んで無理やり眠った…
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