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side カンナ

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「カンナ、舞踏会が近付いている。
今日からはダンスの相手をしてくれ。」

「はい。」

ダンスは私の得意分野だし、以前から少しずつ習ってるから、問題はない。



「君には、女性の役をやってもらう。良いな?」

「はい。」

王宮のダンスは、私の世界の社交ダンスと良く似ている。
社交ダンスは習ってたし、少し応用するだけだからそれほど大変でもない。
ただ、アルバートさんと密着するのはやっぱりちょっと照れくさい。



「そうだ。女性は男性のリードに任せておけば、まず問題はない。
ただ、ステップが複雑だから、それを間違えないようにな。」

「はい、わかりました。」

アルバートさんと手を組み、体を寄せる。
アルバートさんの体温が伝わり、顔が間近にあって、恥ずかしくて直視出来ない。



「カンナ、視線を合わせろ。」

「は、はい。」

そうだ、恥ずかしがってる場合じゃない。
私は、アルバートさんのダンスの練習相手をしてるだけなんだから。



ふと、頭にラドリアの花のことが思い浮かんだ。
ラドリアの花の前でふたりで踊ったあの時……
もう五年も前のことになるんだね。
あの時は、本当に楽しかった。
なんだか、ちょっと異常な程、高揚して…



あの花を恋人同士で見たら、必ず結ばれるって…
そんな伝説を聞いたからかな。



私とアルバートさんはそんな関係じゃないのに…
でも、あの時…ふたりで踊ったことは、一生の思い出だよ。
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