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尻尾を振る犬
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「ディオ!」
次の日、ディオニシスは城に戻っていた。
ネストルの様子を探るためだ。
「ネストル、体調は良いのかい?」
「あぁ、もう大丈夫だ。」
ネストルは少し痩せたようには見えたが、眼光の鋭さはいつも通りだった。
「ネストル、無理をするでないぞ。」
「陛下、私はもう十分過ぎる程、休ませていただきました。
体も良くなりましたし、一刻も早くトラニキアに戻りたいと思っております。」
「オレスト医師の許しが出るまでは、休まねばならぬ。」
セルギオス王の強い口調に、ネストルは唇を噛んだ。
「ディオ、これから少し散歩でもしないか?」
「……いいよ。」
昼食後、ディオニシスはネストルの誘いに応えた。
「……君は何なんだ?」
ネストルが、ディオニシスに同行するウォルトに冷たい声をかけた。
「私はマウリッツ様から、ディオニシス様の傍を片時も離れるなと申しつかっております。」
「ネストル、ウォルトのことなら気にしないで。」
「はい、私はいないものと考えて下さい。」
ネストルは、疎ましげにウォルトをみつめた。
「ディオ、あの時は本当にすまなかった。私があんな所へお前を連れていかなければ、あんなことにはならなかったのに。」
「君のせいじゃないよ。」
「探検隊にロージックの者が紛れ込んでいたことにも気付かなかった。これは、私のミスだ。
私のせいで君を危険な目にあわせてしまった。
本当にすまなかった。」
ネストルは俯き、そっと涙を拭った。
次の日、ディオニシスは城に戻っていた。
ネストルの様子を探るためだ。
「ネストル、体調は良いのかい?」
「あぁ、もう大丈夫だ。」
ネストルは少し痩せたようには見えたが、眼光の鋭さはいつも通りだった。
「ネストル、無理をするでないぞ。」
「陛下、私はもう十分過ぎる程、休ませていただきました。
体も良くなりましたし、一刻も早くトラニキアに戻りたいと思っております。」
「オレスト医師の許しが出るまでは、休まねばならぬ。」
セルギオス王の強い口調に、ネストルは唇を噛んだ。
「ディオ、これから少し散歩でもしないか?」
「……いいよ。」
昼食後、ディオニシスはネストルの誘いに応えた。
「……君は何なんだ?」
ネストルが、ディオニシスに同行するウォルトに冷たい声をかけた。
「私はマウリッツ様から、ディオニシス様の傍を片時も離れるなと申しつかっております。」
「ネストル、ウォルトのことなら気にしないで。」
「はい、私はいないものと考えて下さい。」
ネストルは、疎ましげにウォルトをみつめた。
「ディオ、あの時は本当にすまなかった。私があんな所へお前を連れていかなければ、あんなことにはならなかったのに。」
「君のせいじゃないよ。」
「探検隊にロージックの者が紛れ込んでいたことにも気付かなかった。これは、私のミスだ。
私のせいで君を危険な目にあわせてしまった。
本当にすまなかった。」
ネストルは俯き、そっと涙を拭った。
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