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折れた杖

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 「ずいぶんと遠いんじゃな。」

 「だから、言ったじゃないですか。」

 「これほど遠いとは思わんかった。」

 「……ええ、すっごく遠いんです。」

ロダンを背負ったアレクが、不機嫌な声を出した。



 「でも、もう少しですよ。
あそこに見える、あの山の森ですから……」

 「そうか、そうか…」

 帰りのことを考えて、男達は、まだ夜が明けきらないうちから家を出た。
しばらくは皆と一緒に歩いていたロダンも、昼を過ぎた頃から腰が痛いと言い始め、それからは、のんびりとアレクの背中で揺られていた。



 「ここですよ。
この奥にある森です。」

 「そうか、アレク…ここからは歩く。
 降ろしてくれ。」

 「大丈夫なんですか?」

 「あぁ、山道は慣れたもんじゃ。」

ロダンは、先頭を歩くキーファの後を遅れずに歩いて行く。



 「ロダンさん、びっくりしないで下さいよ。」

 「楽しみじゃのう…」

ロダンは、疲れ切ったアレクとは裏腹に、子供のように瞳を輝かせた。



 「もうすぐです。あと少しですよ。」

 息を切らし、山を登って行くうちに、ロダンが突然小さな声をあげた。



 「どうしたんです?」

 「空気が変わった…この近くじゃな…
あ!あれは……!」

ロダンは、紫色の群生を目ざとくみつけ、そこに向かって走り出した。



 「こ、これは…まさに、紫魔色草……しかも、たいそう質の良いものじゃ!」

ロダンは葉をちぎり、それを口に含んで感激した様子でそう話した。



 「おぉっ!あれはガネイ草ではないか!
あ!あれは白黒魔色草!!」

ロダンは次々と魔草や薬草を発見し、その度に近寄っては目を丸くした。

 
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