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賢者

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「アレク…リンガーでは魔導師はとても数が少なく、しかもその大半は国に使えているそうですよ。
だから、魔導師について、国民はあまりよく知らないようです。」

 「へぇ…そうなのか。
 魔導師が珍しいなんて信じられないな…
でも、それが本当だとしたら、俺もリンガーに生まれてたら今頃はもっと尊重されてたんだろうなぁ…
国のために働くんだから、給料ももちろん良いんだろ?」

 「さ、さぁ…そのあたりのことはわかりませんが、特別視されていることは確かです。
そういえば……魔女と呼ばれる人達もこちらにはいらっしゃるんですよね?」

ダニエルの質問に、スピロスがゆっくりと頷く。



 「もちろんです。
ですが、そう多くはいません。」

 「なぜですか?」

スピロスが口を開くより早く、アレクがそのことについて説明を始めた。



 「簡単に言うとだな…あまり必要がないからだ。
 魔女は、魔導師のように瞬間移動や術を使うことは出来ない。
 相手が魔導師かどうかを見抜いたり、カードや水の玉を使って未来を予測したりするようなことしか出来ないわけだ。
しかも、その予想は完璧なもんじゃないし、魔導師の気配を消す護符を身に付けていたら誤魔化されてしまうこともある。
だから、よほど強い力を持った魔女でない限り、魔女の力を使ってる者はいないな。
せいぜい、失せもの探しのようなことをして小金を稼ぐような所だ。」

 「かの昔…リンガーとの戦争に勝つために魔導師を増やそうという作戦があった時…
魔女は子を産む道具のようにされていたことがあると聞いています。
 血は伝わるもの…ですから、魔導師の力をもつ父親と魔女である母親との間に作られるのが魔導師の生まれる可能性が一番強くなります。
 出産するとすぐにまた子作りを強いられ、そのため、若くして亡くなった魔女が多かったと聞きます。
ロージックの魔女が少なくなったのは、もしかしたらそういう背景があったからなのかもしれませんね。」

 「そんな酷いことが……」

 淡々と話すスピロスとは裏腹に、ダニエルは顔を曇らせそっと俯いた。
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