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王女
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「……お手上げだな。」
料理を口に運ぶ手を停めて、アレクがぽつりと呟いたその言葉に、リアナは浮かない顔で頷いた。
いくつかの町を歩き回ったが、ウォルト達に繋がる情報は何一つ耳にする事は出来ず、彼らの聞きこみは徒労に終わった。
「おそらくこうしていても、手掛かりは何も得られないだろう…
ここは一旦俺の仲間の所に戻らないか?
俺の仲間が良い知恵を思いつくかもしれない。」
「……でも、私は……」
ここ数日、仲間の消息を探すためにアレクと行動を共にしていたとはいえ、ただそれだけの知り合いでしかないアレクを信用して良いものかどうか…
リアナには、その判断がつきかねてすぐには答えられなかった。
「もしも、気が進まないなら、あんたはここで待ってたら良い。
俺は、仲間の所に戻って今後どうするかを話し合って来るから。」
(どうしよう…
このまま、アレクさんが戻って来なかったら…
私は一人でキーファを探さなくちゃならない…
それに、みつかっても私一人で救い出すのは難しい。)
「……私も行きます!」
リアナは心を決めた。
たった数日で、その人間がどういう人物かなんてわかる筈もない。
だが、この短い間だけの印象でいえば、リアナの目にアレクは真面目で親切な人間に映っていた。
「本当に良いのか?
俺だけで行って来ても良いんだぜ。」
(大丈夫。
アレクさんは悪い人じゃないわ。
それに…今はこの人しか頼れる人はいないんだから…)
リアナは自分にそう言い聞かせ深く頷く。
「私もお話をお聞きしたいので、どうか一緒に連れて行って下さい。」
「そうか…わかった。
じゃ、明日の朝…いや、今から出発するか?」
「い、今からですか?」
「あぁ、どうせなら早い方が良いだろ?
少々距離はあるが、二度の転移で飛べると思う。
あっという間に着くぜ。」
急な展開に、内心では戸惑いを隠せないリアナだったが、今はアレクを信じるしかないと考え、小さく頷いた。
「……お手上げだな。」
料理を口に運ぶ手を停めて、アレクがぽつりと呟いたその言葉に、リアナは浮かない顔で頷いた。
いくつかの町を歩き回ったが、ウォルト達に繋がる情報は何一つ耳にする事は出来ず、彼らの聞きこみは徒労に終わった。
「おそらくこうしていても、手掛かりは何も得られないだろう…
ここは一旦俺の仲間の所に戻らないか?
俺の仲間が良い知恵を思いつくかもしれない。」
「……でも、私は……」
ここ数日、仲間の消息を探すためにアレクと行動を共にしていたとはいえ、ただそれだけの知り合いでしかないアレクを信用して良いものかどうか…
リアナには、その判断がつきかねてすぐには答えられなかった。
「もしも、気が進まないなら、あんたはここで待ってたら良い。
俺は、仲間の所に戻って今後どうするかを話し合って来るから。」
(どうしよう…
このまま、アレクさんが戻って来なかったら…
私は一人でキーファを探さなくちゃならない…
それに、みつかっても私一人で救い出すのは難しい。)
「……私も行きます!」
リアナは心を決めた。
たった数日で、その人間がどういう人物かなんてわかる筈もない。
だが、この短い間だけの印象でいえば、リアナの目にアレクは真面目で親切な人間に映っていた。
「本当に良いのか?
俺だけで行って来ても良いんだぜ。」
(大丈夫。
アレクさんは悪い人じゃないわ。
それに…今はこの人しか頼れる人はいないんだから…)
リアナは自分にそう言い聞かせ深く頷く。
「私もお話をお聞きしたいので、どうか一緒に連れて行って下さい。」
「そうか…わかった。
じゃ、明日の朝…いや、今から出発するか?」
「い、今からですか?」
「あぁ、どうせなら早い方が良いだろ?
少々距離はあるが、二度の転移で飛べると思う。
あっという間に着くぜ。」
急な展開に、内心では戸惑いを隠せないリアナだったが、今はアレクを信じるしかないと考え、小さく頷いた。
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