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魔導士

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 「父上、いかがでしたか!?
お二人はなんと…」

セルギオス王とオレスト医師の返事を待ちかねていたネストルは、父親の運んで来た答えを催促した。




 「そのことなのだがな…」

 「……体調はいかがですかな?ネストル様…」

ネストルの父親の後ろから現れたのは、見知らぬ初老の男だった。



 「……あなたは?」

 怪訝な顔をしてみつめるネストルに、男は穏やかな笑みを返す。



 「申し遅れました。
 私はリガス。
セルギオス王の命により、あなたをトラニキアに運ぶよう仰せ付かってまいりました。」

 「それではあなたは魔導師?」

 「然様でございます。」

リガスはゆっくりと頷く。



 「ネストル、兄上がおまえの願いを聞き入れ、そして体調のことを考えて大切なリガスを貸し出してくれたのだ。
 感謝するのだぞ。
 用が済んだらすぐに戻ってまいれ。
くれぐれも無理なことはせぬようにな。」

 「わかっております。
 早速、セルギオス王にお礼を…」

 今にも部屋を飛び出そうとするネストルの腕を、父親が掴んで引き止めた。



 「兄上は、執務のため城を離れられた。
 礼なら戻ってから述べるが良い。」

 「そうだったのですか…」

 「では、ネストル様、準備が整いましたらお声をおかけ下さい。」

 「わかりました。」

 酷く急なことだったが、ネストルはトラニキアに行く許しが出たことが嬉しくてたまらず、慌てて身支度を整えた。



 *



 「お待たせしました、リガスさん。」

 「では、早速、宿舎の方へ…」

 「リガスさん、まずは麓の町へ行って下さい。
あの町にも部下が何人もいます…私がいなくなったことで、皆いろいろと大変だと思いますし、心配もしてることでしょう。
それと…皆にはあまり言っていないのですが、あの町では弟も働いているのです。
それで、勝手なことを言うようですが、まずはあの町に行ってみたいのですが…」

 「弟君が?それは全く知りませんでした。
では、行き先は麓の町でよろしいのですな?」

 「お願いします。
では、父上、行ってまいります。」

 父親の見守る前で、リガスとネストルは空気の中に溶け込むように姿を消した。




 (ネストル……口では酷いことを言いながらも、やはりニコラスのことを気にかけておるのだな…)

 部屋に一人残った父親の顔に、満ち足りた笑みが浮かんだ。
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