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魔導士

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(……弱ったな…
最近は、お金のことをまるっきり忘れていた。
でも、本当ならここでお世話になってる分も支払わなきゃならないものなんだな。
 昔の僕はお金のことではずいぶんと苦労してきたというのに、こっちに来てからそんなことまですっかり忘れてるなんて…どうかしてた…
でも、国に戻るまでお金はどうにもならない……あ……)

ダニエルはふと落とした視線の先に、自らの腕輪をみつけた。
 金の台座に色とりどりの宝石が埋めこまれたずっしりと重い腕輪だ。



 「アドニアさん、これを売ってお金に変えられないでしょうか?」

ダニエルは、腕輪を引き抜き、アドニアの前に差し出した。



 「……まさかとは思うけど…これは本物の宝石じゃないよね?」

 「おそらく本物だと思いますが…」

アドニアは、もう一度腕輪に視線を落とし、息を飲んだ。



 「前から気にはなってたんだけどさ。これが全部本物の宝石だとしたら法外な値がつくよ。
 特に中央のこれ…これがもしも本物のレキサンデラだったら…いや、いくらなんでもそれはないね。
こんな大きな石だものね。
 金持ちは普段はイミテーションを身に付けて、本物は金庫にしまってるっていうし、きっと精巧なイミテーションだよ。
でも、本当に綺麗だね…」

アドニアはダニエルの腕輪をあちらこちらから眺めながら、興奮気味に話す。



 「これで、マウリッツを探すお金とアドニアさんやスピロスさんにお世話になった分が支払えると良いのですが…」

 「何言ってんだい。
あたし達のことなんてどうでも良いのさ。
 謝礼目当てで助けたわけじゃないからね。
そんなことより、早速、知り合いの所に持っていってみるよ。
 宝石はイミテーションだとしても、台はきっと本物のクリューだと思うよ。
だからけっこう良い値にはなるはずだ。
 出来るだけ高く売りさばいてくるから待ってておくれ。」

そう言って、アドニアは自信ありげな笑みを投げ掛けた。


 
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