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魔導士

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(今時、こんな恰好をしてる者はいないだろうけど、きっとこれは「魔導師」を強調したものなんだろうな。
 今、身近にいる魔導師といえばはスピロスさんだけだけど、じゃあ、スピロスさんに何かがあるってことか?
……いや、そうじゃない。
 新しい魔導師との出会いの暗示とでも考える方が自然だろうな…
あぁ、もどかしい。
もう何枚かカードを引いて詳しく知りたいのに、このカードは一枚ずつしか引かせてくれないからな。)

ダニエルは、魔導師のカードをみつめながら小さな溜め息を吐き、そのまま寝台に身を沈めた。



 (……もう一度今の状況を考えてみよう。
 搭のカードが消えたってことは、僕の災難はもう終わった。
 僕はなんとか危機を脱したんだ。
それで…今、すべきことは…そうだ、マウリッツ達をみつけ出す事だ。
でも、僕はまだこんな調子だから思うようには動けない。
……だったら、今、僕に出来ることは……)

そっと目を閉じ、ダニエルは心を静め今一度身の回りの状況を考えた。



 「……そうだ!」

しばらくして、あるアイディアを思いついたダニエルは、思わず声をあげていた。



 *



 「そうだね…
確かにそうすれば早くにみつけられるかもしれないね。
だけどねぇ……」

 次の日の朝、ダニエルから相談を持ちかけられたアドニアは、困ったような顔をスピロスの方に向ける。



 「……ダニエル。
 言いにくいことなんですが……魔導師に仕事を頼むには普通よりも割高の料金がかかるのですよ。
 彼らは普通の人間が持たない特別な力を持っているのですから、それも当然といえば当然のことなんですが…」

 「すまないね。
ちょっとくらいの金ならなんとかなるんだけど、魔導師には金がかかるからね…」

 「そ、そうだったんですか……」



 朝食の席で、ダニエルは昨夜思い付いた策をアドニアに話した。
それは、魔導師に頼んでマウリッツ達を探してもらうということだった。
マウリッツは、ラーフィンに向かってることはわかっているため、魔導師に先回りしてみつけてもらおうと考えたのだ。
だが、思わぬ所で考えもしていなかった障害が浮上した。
ディオニシスとしてリンガーにいる時のダニエルは、金を持つ必要等なかった。
 必要なものも欲しいものも、すべて誰かが用意してくれた。
そのため、普段からダニエルは金を持ち歩く事はなく、もちろん今現在も一銭も持ってはいなかったのだ。 
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