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崩れる塔

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(そうか……もしも、ネストルの共犯者が僕のことを探さなければ……僕はこのままこっちにいた方が楽かもしれない。
そうすれば、ややこしいことにもならず、平和に暮らせる筈だ。
 王子なんて大変な役目を背負い込むことなく、ごく普通の人として暮らしていけるならその方がずっと良い。
もちろん、今までみたいな贅沢は出来ないけど、そんなことどうだって良い。
 王子なんかやめてしまった方が危険はずっと少ないはずだもの。
いくらカードがなくなるまでの辛抱だって言ったって、もう二度とあんな恐ろしい思いはしたくない。
 仮に僕が戻ってネストルが捕まったとしても、やっぱりいつどんな者から狙われるかわからないものな。
ただ…マウリッツはそういうわけにはいかない。
 彼とウォルトには、なんとしても無事に国に戻ってもらわないと…)



 「ダニエル…どうかしたのですか?」

 「すみません。
 少し考え事をしていました。
スピロスさん、そしてアドニアさん……正直に答えてほしいのですが、僕がリンガーから来たということを聞いてどう思われましたか?」

ダニエルの唐突な質問に、二人は戸惑った表情を浮かべた。



 「どうって……そりゃあもちろんびっくりしたさ。
あの結界を破れる者がいるなんて思ってもみなかったからね。」

 「そうではなくて……あの、リンガーとロージックは昔から敵対関係にありますよね。
ですから、リンガーの僕を……やはり憎まれてらっしゃいますか?」

おずおずと話すダニエルに、アドニアの頬が緩む。



 「なんだ…そんなことを気にしてたのかい。
 確かにリンガーとロージックはずっと昔から敵対関係だけどさ。
そうは言っても戦争をしてるわけでもないし、あんたも知っての通り、両国はトラニキアで隔たれていて…なんていうかな、もう関係ない国みたいな感じなんだよ。
リンガーが隣にあることさえ忘れてしまうような…
スピロス、あんたもそうだろ?」

スピロスは少し微笑みながら、頷いた。



 「アドニアの言う通りですね。
 西側の国に住む者達は、皆、このロージックを世界の果てのように考えています。
つまりここから先のことは気にもしていないのです。
だって、どれほど望もうとトラニキアの結界は越えられないのですから。」

 「……そうなんですか!?
でも、トラニキアのお宝のことは気にならないんですか?
そういえば、こちらには国立の探険隊のようなものはないのですか?」

ダニエルは気になっていることを次々とスピロスに問い掛ける。
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