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崩れる塔

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「あぁ…二人共体格の良い逞しい男でね。
 金髪の方の男は、年はあんたと同じくらい、もう一人の銀色の髪の男はもう少し上だと思うよ。」

 「銀色の髪…!」

ダニエルの脳裏に、ネストルの端正な顔が浮かび上がり、ダニエルの唇は恐怖に震え出す。



 「ダニエル…銀色の髪の男に心当たりがあるんですね?」

ダニエルは泣き出しそうな顔で、小刻みに首を振る。
しかし、その仕草が否定の意味ではないことは、スピロスにもアドニアにもはっきりとわかった。



 「アドニア、なぜ彼らがダニエルを探してるとわかったんです?」

 「奴らは、トラニキアで魔導師に痛めつけられている若い男を見たと言った。
 物陰に隠れて見ていたというわりには、妙に詳しくはっきりとダニエルのことを覚えてるんだ。
それに金髪の方の男はおかしなことを言った。
 年は自分と同じくらいだけど、自分より若く幼く見えるってね。
まるで、その相手の年齢を知ってるみたいな言い様だろう?」

 「……確かに、なにかおかしな言い方ですね…」



 (僕の年を知っていて、僕よりも体格が良く大人に見える金髪の男…
まさか、マウリッツ?
でも、マウリッツがネストルと一緒にいるはずがない…!
それとも、マウリッツもネストルの仲間だったというのか?)

ダニエルの心は様々な推測にゆらゆらと揺れ動く。



 「あの…銀髪の男は、額が狭く理知的で端正な顔立ちの…
 ……そうだ!
 口許にほくろがあったのではありませんか?」

 「ほくろ…?
どうだったかねぇ…二人共ひげが生えてたからよくわからなかったけど…
前髪が長いから額が狭いかどうかはわからなかったけど、けっこう女にもてそうな愛嬌のある顔ではあったね。」



 (……確かに前髪は長いようだけど、ネストルはいつも綺麗に後ろになでつけていた。
それに、彼は端正な顔立ち過ぎて、どこか近寄りがたい雰囲気がある。
 几帳面な彼がひげを生やすことも無いはずだけど、何か理由があるんだろうか…)
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