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崩れる塔

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「おまえの術で麓まで行けないのか?」

 「無理を言わないで下さいよ。
 転移の術は一度行った場所じゃないと飛べません。
それに、こんな状態で人を連れて飛ぶなんてとても…」

 「あ~あ…リガスなら一度に三人運べるのになぁ…」

 「すみませんね、私はあんな格の高い魔導師ではありませんから。」

 拗ねたような口調で答えるウォルトにマウリッツは笑い、そしてまた低い声でうめいた。



 「……ウォルト……
あのリガスのシールドをかけてもらってもこれほどのダメージを受けるんだ。
 何の防御もしていない人間がここを通されたらどうなると思う?
……無事に通過出来ると思うか?」

マウリッツの声が急に沈んだものに変わった。



 「……マウリッツ様。
あなたは、セルギオス王に約束されたではありませんか。
 必ず、ディオニシス様を連れて帰ると…
決して、希望を捨てるなと…
 ……今からそんな弱気なことをおっしゃってどうするんです。」

ウォルトの言葉に、マウリッツはしばし沈黙し、二人の間にはただ吹きすさぶ風の音だけが流れた。



 「……そうだな。
すまなかった。
まだやっとロージックに入ったばかりだというのに、俺、何を弱気になってるんだろうな…
ウォルト、とにかく早くここから離れよう。
 寒くて暗い場所にいると、どうも気分が落ちこみそうだ。
 明るくなればロージックの者達がここへ来るかもしれないし、いつまでもここで寝てるわけにはいかないしな。」

マウリッツは起きあがろうと膝を立て、痛みに何度か短いうめき声を発し、また横になった。



 「あぁ、だめだ。
 身体が強張って力が入らん。」

 「マウリッツ様、まずはランプを探して下さい。
このあたりに転がっているはずです。
 割れてなければ良いのですが…」

 「ランプ…?」

マウリッツとウォルトは四つんばいになったまま、手探りであたりを動き回る。
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