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崩れる塔

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 「……おまえ…魔導の者だな…」

リガスは食堂の方へは行かず、廊下の隅で立ち止まり、不意に口を開いた。



 「リガス様、なぜそれを…!?」

 「薄々は感じていたが、先程、おまえの身体に術をかける時にはっきりとわかった。」

 「……さすがはリガス様ですね。」

 苦笑いを浮かべるウォルトの前で、リガスは指輪をはずし、それをウォルトに手渡した。



 「リガス様…これは?」

 「なにかの役に立つだろう。
 持って行け。」

 「あ、ありがとうございます。」

もらったばかりのリガスの指輪を、ウォルトは自分の人差し指にはめこんだ。



 「ぴったりのようだな。良かった。
……おまえはマウリッツ様の密偵なのか?」

ウォルトは俯いたままで小さく頷く。



 「……あなたに隠し事は出来ないようだ。
リガス様……実は、ディオニシス様は、以前よりネストル様に疑惑を抱いておいででした。
マウリッツ様はそのことでご相談を受け、それで私がトレジャーハンターとしてトラニキアに入ることになっていたのですが、なかなか入山の審査が下りず……
陛下はネストル様のことを信用しきっていらっしゃいます。
よほどの証拠がみつからない限り、ネストル様を疑われることはないでしょう。
まだこれといった証拠固めも出来ていないうちにこんなことになってしまおうとは…」

 「わかっている。
 私も今回のことはどうにも腑に落ちないのだ。
 魔導師がなぜ術ではなくナイフでネストル様に襲いかかって来たのか…
魔導師ならば、武器ではなく術を使うはずだ。
それに、なにもそんなことをしなくとも魔女による探知が始まる前に姿を消せば良いだけのこと。
なぜわざわざネストル様を襲う必要があったのか…
 ……だが、ネストル様は陛下と血の繋がったお身内だ。
 心配だが、確たる証拠が見つかるまで滅多なことは言えぬ。
……私もネストル様には出来るだけ注意を払い、警戒するつもりだ。
 陛下のことは私がお守りするから心配はいらぬ。
おまえは精一杯マウリッツ様にお仕えするのだぞ。」

 「……私の命に替えましても…!」

ウォルトは、リガスの瞳をみつめ、はっきりとした口調でそう約束した。
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