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崩れる塔

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「ネストルもここはあんまり使わないの?」

 「あぁ、私達はだいたい一気に五合目まで上りきってしまって、そこの宿舎に泊まる事が多い。
そこまでの主な場所はもう探し尽くしてるからな。」

 「五合目かぁ…そういえばここはどのあたりになるの?」

 「そうだな…せいぜい二合目といった所か…」

 「こ、ここでまだ二合目なの!?」

 普段よりも早い時間に起きて出発し、夕方近くまで歩き続けたこの場所がまだ二合目だと聞き、ディオニシスはあらためてこの山の高さを痛感した。



 「一般の者は……ほら途中にあっただろう?
たいてい、あの展望台あたりまでしか登っては来ない。
 門を見に来る者もいるにはいるのだが、それはごく一部の人間だ。
 彼らは結界の中には入れないのだから、帰りは暗い夜道を歩くか門の前で野宿をする羽目になるのだからな。
 二合目とはいえ、ここはけっこう高いんだ。
もう少し先に行くと、空気も薄くなって来るくらいだからな。」

 「空気も……!」

 驚いて目を丸くするディオニシスにネストルはゆっくりと頷いた。



 「だから、この山に入る者は心身ともに相当にタフなものではなくてはならんのだ。
 知力・体力共に特別優れた者でなくてはな…」

その言葉に、今度はディオニシスが頷いた。



 「そういえば、ネストル。
さっきから気になってたんだが、あんたらは護符は持ってるのか?
 首には下げてないみたいだが、別の場所に着けているのか?」

ネストルは、マウリッツに向かって微笑んだ。



 「隊員になった者や、入山を許可されたトレジャーハンターは、魔導師により身体に護符を刻み付けてもらうのだ。
もちろん、目は見えないものだがな。
その護符は、なんらかの事情で一時的に入山する者のためのものだ。」

 「なるほど、そういうことだったのか…」



その夜は慣れない山歩きで相当疲れていたため、ディオニシスは食事もそこそこに横になった。
 泊まる部屋は二人部屋で、ネストルがすぐ傍にいてくれると考えると、ディオニシスは何の心配もなく眠ることが出来た。
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