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人々

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 「ディオニシス様、おめでとうございます!」

 「お元気になられて本当に良かった!」

 城内の大広間は、思い思いに着飾った女性達を中心に溢れんばかりの人々で埋め尽くされていた。
 皆、一様に、ディオニシスの回復を祝い、その気持ちを表すかのように軽やかなダンスを踊る。
 心配されていたディオニシスも、特別うまいとは言えないまでも予想を上回る程の踊りを見せ、そのことに、皆、ほっと胸を撫で下ろした。
ディオニシスの体調は回復したが、記憶がまだ戻らないということも公表され、そのため、主だった人々のことはルーカスが一人一人丁寧に紹介し、その度に、ディオニシスも相手の顔と名前を懸命に頭に叩き込んだ。
しばらくの間とはいえ、この世界に留まるのであれば、そういった人物のことは覚えておいた方が得策だと考えたのだ。
 舞踏会の後には、主要人物を招いての夕食会が催された。
リンガーについての事情は、ある程度、ラビスから聞いてはいたが、それだけではついていけない話題ばかりが続き、ディオニシスは疲労を理由にその場を早めに引き上げた。



 「ディオニシス様、本当にオレスト医師を呼ばなくてもよろしいのですか?」

 「大丈夫だよ。
 疲れただけだから。
ゆっくりと休めば、明日には回復するよ。
……とにかく、誰の足も踏まずに済んだだけで、僕は肩の荷が降りた感じだよ。」

ディオニシスはそう言って、ラビスに微笑んで見せた。



 「ディオニシス様はとてもお上手に踊りになられてましたよ。
たった数日であれほど踊られるとは、すごいと思います。」

 「いいよ、お世辞は。」

 「お世辞等ではございません。
 正直言って、レッスンの初日は本当に心配したのですが、今日は見違えるようでした。
さすがはディオニシス様だと感心してしまいました。」

ラビスの表情はとても嘘を吐いているようには見えず、そのことにディオニシスはすっかり気を良くした。
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