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王子
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「……例のものって…?」
「ま、まさか、ディオニシス様、あのこともお忘れに……?」
ディオニシスには本当にラビスのいうことに思い当たることがなく、そのことが素直に現れた表情を見て、ラビスはたいそう困惑した。
「どうしよう…」
「ラビス…良かったら、話してくれる?
もちろん誰にも言わないから。」
ラビスの様子から、それが公には出来ないことだと悟ったディオニシスは、他言しない事を約束しラビスの話を待った。
「あの時…ディオニシス様が城にいらっしゃらないことがわかり、騒ぎになりました。
使用人の一人が、あなたが嵐の中、おでかけになったことを目撃しており、それからすぐに捜索が始まったのですが、なかなかみつからず…
夜明け近くになって、私が海岸であなたを発見したのですが、その時のあなたはまるでぼろきれのようになってぐったりとしておられました。
すでに、お亡くなりになっているのではないかと思った程でしたが、私が声をかけると、あなたはほんのうっすらと目を開けられ、そして、私にあの箱を渡されたのです。
あんな最中にもお離しになられなかったものですから、きっとよほど大切なものに違いない…
そう思い、私は誰にも話さずにずっと隠しておりました。」
「箱って…どんな箱だい?」
「このくらいの大きさの金属の箱で…周りに布切れが巻きつけてありました。」
ラビスは両手を使い箱の大きさを指し示す。
その時、ディオニシスの脳裏に思い出される光景があった。
路地裏で出会った奇妙な老人が、ダニエルにカードを手渡したあの光景だ。
「ま…まさか……」
「ディオニシス様、なにか思い出されたのですか!?」
ディオニシスのただならぬ様子を見て、ラビスはディオニシスの顔をまじまじとのぞきこむ。
「その箱は…今、どこにある!?
君は、箱の中身を見たかい?」
「中身を見る等、滅相もございません!
あの箱はあのままここに隠してあります。
お待ち下さい。」
そう言うと、ラビスはディオニシスには読めない文字で書かれた小さな立て札の立てられた植木鉢を掘り起こす。
茶色い土の中から現れたのは、まさにあの時のあの缶だった。
(どういうことなんだ…!?
あれは、僕の妄想の筈なのに…)
ディオニシスが震える手でぼろぼろになった周りの布をはがし蓋を開けると、その中に入っていたのはまさしくあの時のあのカードだった…
「ま、まさか、ディオニシス様、あのこともお忘れに……?」
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「どうしよう…」
「ラビス…良かったら、話してくれる?
もちろん誰にも言わないから。」
ラビスの様子から、それが公には出来ないことだと悟ったディオニシスは、他言しない事を約束しラビスの話を待った。
「あの時…ディオニシス様が城にいらっしゃらないことがわかり、騒ぎになりました。
使用人の一人が、あなたが嵐の中、おでかけになったことを目撃しており、それからすぐに捜索が始まったのですが、なかなかみつからず…
夜明け近くになって、私が海岸であなたを発見したのですが、その時のあなたはまるでぼろきれのようになってぐったりとしておられました。
すでに、お亡くなりになっているのではないかと思った程でしたが、私が声をかけると、あなたはほんのうっすらと目を開けられ、そして、私にあの箱を渡されたのです。
あんな最中にもお離しになられなかったものですから、きっとよほど大切なものに違いない…
そう思い、私は誰にも話さずにずっと隠しておりました。」
「箱って…どんな箱だい?」
「このくらいの大きさの金属の箱で…周りに布切れが巻きつけてありました。」
ラビスは両手を使い箱の大きさを指し示す。
その時、ディオニシスの脳裏に思い出される光景があった。
路地裏で出会った奇妙な老人が、ダニエルにカードを手渡したあの光景だ。
「ま…まさか……」
「ディオニシス様、なにか思い出されたのですか!?」
ディオニシスのただならぬ様子を見て、ラビスはディオニシスの顔をまじまじとのぞきこむ。
「その箱は…今、どこにある!?
君は、箱の中身を見たかい?」
「中身を見る等、滅相もございません!
あの箱はあのままここに隠してあります。
お待ち下さい。」
そう言うと、ラビスはディオニシスには読めない文字で書かれた小さな立て札の立てられた植木鉢を掘り起こす。
茶色い土の中から現れたのは、まさにあの時のあの缶だった。
(どういうことなんだ…!?
あれは、僕の妄想の筈なのに…)
ディオニシスが震える手でぼろぼろになった周りの布をはがし蓋を開けると、その中に入っていたのはまさしくあの時のあのカードだった…
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