深淵に眠る十字架 The second

決意

３３

＊




 「……どうだった？この前よりずっと上手くなってるだろう？」

そう言って、皮肉な笑みを浮かべ、ルークは酒を瓶ごとあおった。



 「……いつまで泣いてるんだ。鬱陶しいな。
 僕達は兄妹でもないし、もう子供でもない。
そんな二人が出会えばこうなるのは当たり前だろ？
おまえも内心それを期待してたんじゃないのか？」

サマンサは何も答えず、枕に顔を埋め、声を押し殺してすすり泣く。



 「泣くのはやめろって言ってるだろ！
いいかげんにしないと、今度は本気で殴るぞ！」

その言葉にサマンサはびくんと肩を動かし、懸命に唇を噛み締め、泣くのを堪えた。



 「おまえに聞きたいことがいくつかある。
まず…おまえは僕を探しにこの町に来たのか？」

サマンサは、少し躊躇い、そして小さく頷いた。



 「他に、誰が探している？
この町の自警団も探してるのか？」

 「い…いえ。
わ、私も…まさか、あなたに会えるとは思ってなかった…」

サマンサはしゃくりあげながら、小さな声で懸命に答える。



 「どういうことだ。
おまえは僕がここにいるとは思わずにここに来たってことなのか？
 詳しく話せ。」

 「……と、父さんが…退院してから急にいなくなったの…
旅に出るって、それだけ書き残して……
それで、もしかしたら、父さんはあなたを探しに行ったんじゃないかって思って、それで、私…あの事件のことを少し調べようと思って…ここに……」

サマンサの話を聞くうちに、ルークの表情は次第に険しいものに変わっていった。



 「ちょっと待て……あの事件のことって、どういうことなんだ？」

 「ご…ごめんなさい。
わ、私…あれはあなたがやったことなんじゃないかって思って…」

そう言うと、サマンサはルークの暴力を予想し、ぎゅっと目を閉じて俯き、身を固くした。



 「……ランディは、言わなかったのか…？
 僕があいつをあんな目に遭わせたことを……」

サマンサは目を開き、少しほっとしたような表情を浮かべ、ゆっくりと首を振る。