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決意
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「飛べたっ!」
目の前から姿を消したトレルに、アズラエルは興奮した声を上げた。
*
*
*
アズラエルから、まずは瞬間移動についての方法を教わったトレルは、毎日、その練習に取り組んだ。
普段から息をするのと同じように移動をしていたアズラエルにとって、その方法を他人に教えるのは容易な事ではなかった。
とにかく、行きたい場所の状況をはっきりとイメージすることだと言うアズラエルに、トレルは戸惑いながらも言われた通りにそれを実行する。
しかし、何度やっても同じことだった。
トレルの姿は、少しも動かない。
それでも、トレルは諦めなかった。
朝早くから精神を集中し、何度も何度もアズラエルに言われた通りに行きたい場所をイメージしてみたが、何日経っても兆しさえ見えなかった。
「トレル。
今日は、私と一緒に飛んでみようか。
瞬間移動がどういうものか、身体の感覚で覚えるんだ。」
「そうだな。じゃあ、頼むよ。」
頷いたアズラエルが、トレルの腕を掴むと、次の瞬間、トレルは見慣れた風景を目にしていた。
「ここは……」
トレルは、久し振りの故郷にどこか戸惑ったような表情を見せた。
「……違う場所の方が良かったか?」
「いや…そんなことはない。
ここはいつ来ても懐かしいよ。」
トレルが住んでいた頃と変わらないのどかな風景…その中でただ一つ違っていたのは、そこに建つまだ新しい教会だった。
「もう建て直したんだな。」
「今度のはやけに小さいな。」
新しい教会は、以前のものと比べると半分もないような大きさのものだった。
作りもずっと粗末な安普請だ。
「ここは昔よりさらに人が少なくなってる。
……きっと、このくらいで良いんだろうな。
前のが大きすぎたんだ。」
そう言いながら、トレルは馴染みのない教会をじっとみつめる。
「……少しあたりを散策してみるか?」
「いや、良い。
悪いが、家に戻してくれ。
いや……ラグラの森に連れて行ってくれないか?」
「わかった。」
アズラエルが再びトレルの腕を掴み、瞬き一つもしないうちに、あたりの風景は一変した。
「飛べたっ!」
目の前から姿を消したトレルに、アズラエルは興奮した声を上げた。
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アズラエルから、まずは瞬間移動についての方法を教わったトレルは、毎日、その練習に取り組んだ。
普段から息をするのと同じように移動をしていたアズラエルにとって、その方法を他人に教えるのは容易な事ではなかった。
とにかく、行きたい場所の状況をはっきりとイメージすることだと言うアズラエルに、トレルは戸惑いながらも言われた通りにそれを実行する。
しかし、何度やっても同じことだった。
トレルの姿は、少しも動かない。
それでも、トレルは諦めなかった。
朝早くから精神を集中し、何度も何度もアズラエルに言われた通りに行きたい場所をイメージしてみたが、何日経っても兆しさえ見えなかった。
「トレル。
今日は、私と一緒に飛んでみようか。
瞬間移動がどういうものか、身体の感覚で覚えるんだ。」
「そうだな。じゃあ、頼むよ。」
頷いたアズラエルが、トレルの腕を掴むと、次の瞬間、トレルは見慣れた風景を目にしていた。
「ここは……」
トレルは、久し振りの故郷にどこか戸惑ったような表情を見せた。
「……違う場所の方が良かったか?」
「いや…そんなことはない。
ここはいつ来ても懐かしいよ。」
トレルが住んでいた頃と変わらないのどかな風景…その中でただ一つ違っていたのは、そこに建つまだ新しい教会だった。
「もう建て直したんだな。」
「今度のはやけに小さいな。」
新しい教会は、以前のものと比べると半分もないような大きさのものだった。
作りもずっと粗末な安普請だ。
「ここは昔よりさらに人が少なくなってる。
……きっと、このくらいで良いんだろうな。
前のが大きすぎたんだ。」
そう言いながら、トレルは馴染みのない教会をじっとみつめる。
「……少しあたりを散策してみるか?」
「いや、良い。
悪いが、家に戻してくれ。
いや……ラグラの森に連れて行ってくれないか?」
「わかった。」
アズラエルが再びトレルの腕を掴み、瞬き一つもしないうちに、あたりの風景は一変した。
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