深淵に眠る十字架 The second

復讐の連鎖

８３

「君って奴はこんなことになっても、まだあんな女のことを心配するのかい？まったく信じられないお人良しだね…
僕、ベルナールのあんな感情的な表情は初めて見たよ。
よほど、頭に血が上ってるみたいだね。
……それも当然のことだ。
 自分の人形だと思ってた女が、よりにもよって、父親の女になってたなんてさ…
普通だったら、頭に来て当然だよ。
 君もいいかげん目を覚ましたらどうなんだ？
……それにしても、トレルのこの姿…お笑いだね。」

ルークは、まるで物かなにかのようにトレルを足で転がし、おかしそうに笑った。




 「オルジェス、縄をもって来て！」

オルジェスは不快な表情をしながらも、ルークの指示に従った。



 ＊



 「ベルナール…やっと来てくれたんだね…」

 「待たせてすまなかったな、ルキティア…」

 二人は強く抱きあい、熱い唇を重ねた。



 「ルキティア、時間がない。
これから言うことをよく聞いて、その通りにやってくれ。
それさえすめば、すべては終わりだ。
 私はオルジェス達とも離れ、今後はおまえと暮らす。
 命が尽きるまで、おまえだけを愛していく…」

 「ベルナール……」

ルキティアは目にいっぱいの涙を浮かべ、ベルナールの胸に顔を埋めた。
ベルナールは、ルキティアを抱き締めながら、低い声で丁寧に指示を与える。



 「わかったな…あと、少し辛抱してくれ。
それと…今から少し手荒な真似をするが…どうか耐えてほしい。
これも計画のためなのだ。」

 「わかってるよ。
あたし、どんなことでも我慢するから…
さぁ、遠慮せずにやってくれ。」

 「ルキティア、すまない…」

ベルナールは、ルキティアの顔を拳で殴りつけた。
 思わぬ痛みに、ルキティアの口から悲鳴が漏れた。



 「ご…ごめんよ、ベルナール…」

 「いや、良いんだ。
 我慢せずに声を出せ。
オルジェス達によく聞こえるようにな…」

そう言って口端を上げたベルナールに、ルキティアは言い知れぬ恐怖を感じた。

ベルナールの暴行は徐々に勢いを増し、ルキティアは泣き叫びながら、ベルナールに許しを乞う。