深淵に眠る十字架 The second

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
上 下
158 / 355
さらなる復讐

24

しおりを挟む




 「ラング、皆が僕のことを見てるみたいだけど…」

 「仕方ありませんよ。
ここにはめったに人間はやってきませんから。
 実は、ボクもオルジェさんがここに来られた時は、ほら…あの木の陰に隠れて見てたんですよ。
あの時は、まだリルケとは結婚してませんでしたからね。」

ラングは、ルークを案内することを愉しんでいるように見えた。



 「ルークさん、あそこがうちです。
 義父さん、驚きますよ!」

ラングが指差したのは、そのあたりでは一際大きな家だった。
ちょうどその時、家の中から数人の小人達が慌てて飛び出して来るのが見えた。



 「相変わらず、早耳だなぁ…
一体、誰が知らせたんだろう…」

ラングは、残念そうに一人ごちる。



 「ルークさん、よくいらっしゃいました!
お顔を拝見してすぐにわかりましたよ!」

 玄関先で、親しげに片手を差し出した小人にルークが応える。



 「ルークです。初めまして。」

 「ボクは、この村の村長、ティンガです。
こちらは妻のミシカ、そしてこちらが…」

 「ボクの妻のリルケです。」

ティンガの言葉を遮り、ラングが言葉を続けた。



ルークを家の中に招き入れると、彼をもてなすために小人達は慌しく動き回る。

 「いやぁ、それにしてもお懐かしい。
いや、懐かしいというのはおかしいですね。
あなたとは初対面なのですから。
でも、あなたはオルジェさんにもケイトさんにもよく似てらっしゃる。
あなたがもうこんなに大きくなられていたとは…時の流れとは本当に早いものですね。
あぁ、今夜は、楽しい宴になりそうだ。」

 「あの…ティンガさん、そんなに気を遣わないで下さいね。
……そんなことよりリンクさんとアルグさんは?」

 「あぁ、兄とアルグなら、またアズラエルさんにくっついて里に降りてしまったのですよ。
 出て行ったが最後、あの二人はなかなか帰って来ないのですから、全く困ったものですよ。」

ティンガが諦め顔で呟いた。 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

5人の小さな色彩人との物語

中村音音(なかむらねおん)
ファンタジー
 かつて5人の小さな人の物語に着手したことがある。  5人ともそろいもそろってあまりに奔放なものだから物語が散り散りに飛んでいき、空中分解するみたいにして頓挫した作品だった。  パソコンの中に棲む小人という設定に華やかさはなく、だから彼らに与えた姿はモノトーン。地味だけど着々と描いてきたのに。  彼らは、おとなしい活躍など最初から望んではいなかった。  それがある時、自らに色をつけ、向こうから再登場してきたではないか。  作者であるぼくをさしおき、彼らは自由意思で活動し始めようとしている。  なんのために?    ぼくのものだったはずの物語は、ある瞬間を境に彼らの物語にすり替わった。  彼らの目的はなにか?

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

もう死んでしまった私へ

ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。 幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか? 今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!! ゆるゆる設定です。

蔑ろにされた王妃と見限られた国王

奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています 国王陛下には愛する女性がいた。 彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。 私は、そんな陛下と結婚した。 国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。 でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。 そしてもう一つ。 私も陛下も知らないことがあった。 彼女のことを。彼女の正体を。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪意のパーティー《完結》

アーエル
ファンタジー
私が目を覚ましたのは王城で行われたパーティーで毒を盛られてから1年になろうかという時期でした。 ある意味でダークな内容です ‪☆他社でも公開

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

処理中です...