深淵に眠る十字架 The second

ゲームの始まり

７

＊




「サマンサ～！！
サマンサ、どこなんだ？！」

「サマンサ～！！どこにいるの～？」

昼過ぎになり、昼食のために家に戻ったキャシーとランディは、サマンサがいないことを父親から告げられた。
庭には、洗濯物が放置してあることから、キャシー達が出掛けた後に何事かが起こったということがわかった。
しかし、サーリックは人口もごく少ない平和な村。
犯罪などはめったに起こらない。
庭にも争ったような形跡は見られず、家の中にいたローリーやランディの父親も不審な物音は聞いてはいないということだった。



「やっぱりルークとどこかに行ってるんじゃないだろうか？」

「そうかもしれないわね。
ルークはサマンサとは特に仲が良かったし、あのことを相談でもしてるのかもしれないわ。
でも、一体どこへ…」

二人は、サマンサの名を呼びながら森の奥の方までやって来たが、どこからも返事は返って来なかった。



「いくらなんでもこんな所までは来ないわよね。
戻りましょう。
もしかしたら入れ違いになってるかも…」

「しっ！キャシー、黙って！」

ランディに止められ、キャシーが口をつぐむと、どこからかか細いすすり泣きのようなものが二人の耳をかすめた。
ランディとキャシーは耳を澄ませ声の方へ向かって行く…



「サ、サマンサ！！」

ランディは、その場で何があったのかを一目で悟った。
ランディの姿を見た途端、サマンサはまるで火が付いたように声をあげて泣き叫んだ。



「サマンサ！誰にやられたんだ！」

「ランディ！ちょっと向こうへ行ってて！！」

半狂乱になって泣き叫ぶサマンサをキャシーが抱き締め、ランディは娘の身に起こったことを考え身体中の血が逆流する想いを感じていた。