深淵に眠る十字架 The second

帰還

１９

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「ベルナール、あんた、一体何を考えてるんだ？
俺達のターゲットは父さん…いや、トレルとイアンだ。
ランディさんやルーク達には何の関係もないだろう？」

オルジェスの言葉に、ベルナールの瞳が冷たく光った。



「……おまえは、何もわかっていないのだな…
トレルやイアンと、ランディが仲が良いことはわかっているだろう？
それはな、奴も同じ穴のむじなだということだ。
そりゃあ、トレルやイアンよりは多少はマシかもしれんがな…」

「どういうことなんだ？！
ランディさんも、何か関係があるっていうのか？」

「……やめておけ…
聞いたら、おまえの心の負担が増えるだけだ…」

ベルナールは、オルジェスに背を向けた。



「何があるって言うんだ？！
教えてくれ！
俺はもう何を聞いても平気だ！
いや、むしろここまで来て何も聞かない方が辛い。
あんたがランディさん達のことを知りたがっている理由を教えてくれ…！」

「……そんなに知りたいのか…？」

「あぁ！知りたいさ！」

「……そうか……では、話してやろう…
オルジェス…おまえには、私の他にもまだ兄弟がいるかもしれない…
しかも、ごく身近にな…」

「俺の兄弟？身近？
それは一体…？」

ベルナールは、正面からオルジェスの両肩に手を置いた。
そして、深い湖のような瞳でオルジェスの黒い瞳をのぞき込む…



「おまえには、辛い話ばかりを聞かせて済まない…
だが、きっとおまえならその辛さを乗り越えられる。
私が、おまえを守るから…
命を賭けて守るからな…」

ベルナールは、オルジェスの身体を強く抱き締めた。
ベルナールの絹糸のような金の髪が、オルジェスの頬に触れる…



「実はな…ルークは、キャシーの産んだ子ではない。
サマンサの双子の弟だというのは真っ赤な嘘だ…」

オルジェスの耳もとで、ベルナールの声が囁く…




「ま、まさか…！
じゃあ、ルークは…」

ベルナールが動揺するオルジェスの身体を離し、微かに微笑んだ。