35 / 355
運命の出会い
24
しおりを挟む
*
「……つまり、おまえが探しているのは時を司る力だということだな…」
ジェロームは片手に持ったグラスを傾けながら呟いた。
「その通りだ。」
「元の世界に戻りたいというわけか…」
「戻りたいというわけではないのだが…
礼をしてやらねばならん悪魔や人間達がいるのでな…」
「ずいぶんと執念深いことだな。」
ジェロームは、ベルナールを見て小さく笑った。
「執念深い?…私は、ただ几帳面なだけだ。
してもらったことには礼をする…几帳面なせいかそうしないとどうも落ち着かなくてな。」
「几帳面か…ものは言いようだな。
おまえが帰ったら、その者達はさぞかし驚くことだろうな…
実は……一人だけ心当たりがある…」
「本当か!?」
ベルナールは感情を抑えきれず、その身を乗り出した。
ジェロームは、ボーランジェという貴族の屋敷には、昔から「時の奈落」と呼ばれるものがあるということを話した。
しかし、その名から時にまつわる何かだということは推測出来るものの、ジェローム自身も詳しいことは知らないとのことだった。
ボーランジェの家の者達は「時の奈落」については、一様に口を閉ざすのだとジェロームは笑った。
「それで、あなたはその貴族と親交はあるのか?」
「残念ながらほとんどないな。
時の奈落には多少の関心はあったが、ボーランジェは堅物で私のようなタイプの人間は嫌いらしくてな。
話す機会さえなかった。
それに、奴の家には娘しかおらんのだ。
美しい男でもいれば、私ももう少し執着したかもしれんがな…」
ジェロームの緩やかな視線がベルナールの顔に停まり、満足げに微笑む。
「なるほど…
それで、ボーランジェと接触することは出来るだろうか?」
「パーティにでも潜りこめばいくらでも出来るだろう。」
「では、どうか私をパーティに連れて行って、ボーランジェに紹介してもらえないだろうか?」
「馬鹿だな…私と一緒に行けば、おまえも私同様に疎まれてしまうぞ。
それに、私とおまえの関係もバレてしまうしな。」
「では、何か別の手はないか?」
「……つまり、おまえが探しているのは時を司る力だということだな…」
ジェロームは片手に持ったグラスを傾けながら呟いた。
「その通りだ。」
「元の世界に戻りたいというわけか…」
「戻りたいというわけではないのだが…
礼をしてやらねばならん悪魔や人間達がいるのでな…」
「ずいぶんと執念深いことだな。」
ジェロームは、ベルナールを見て小さく笑った。
「執念深い?…私は、ただ几帳面なだけだ。
してもらったことには礼をする…几帳面なせいかそうしないとどうも落ち着かなくてな。」
「几帳面か…ものは言いようだな。
おまえが帰ったら、その者達はさぞかし驚くことだろうな…
実は……一人だけ心当たりがある…」
「本当か!?」
ベルナールは感情を抑えきれず、その身を乗り出した。
ジェロームは、ボーランジェという貴族の屋敷には、昔から「時の奈落」と呼ばれるものがあるということを話した。
しかし、その名から時にまつわる何かだということは推測出来るものの、ジェローム自身も詳しいことは知らないとのことだった。
ボーランジェの家の者達は「時の奈落」については、一様に口を閉ざすのだとジェロームは笑った。
「それで、あなたはその貴族と親交はあるのか?」
「残念ながらほとんどないな。
時の奈落には多少の関心はあったが、ボーランジェは堅物で私のようなタイプの人間は嫌いらしくてな。
話す機会さえなかった。
それに、奴の家には娘しかおらんのだ。
美しい男でもいれば、私ももう少し執着したかもしれんがな…」
ジェロームの緩やかな視線がベルナールの顔に停まり、満足げに微笑む。
「なるほど…
それで、ボーランジェと接触することは出来るだろうか?」
「パーティにでも潜りこめばいくらでも出来るだろう。」
「では、どうか私をパーティに連れて行って、ボーランジェに紹介してもらえないだろうか?」
「馬鹿だな…私と一緒に行けば、おまえも私同様に疎まれてしまうぞ。
それに、私とおまえの関係もバレてしまうしな。」
「では、何か別の手はないか?」
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説

蔑ろにされた王妃と見限られた国王
奏千歌
恋愛
※最初に公開したプロット版はカクヨムで公開しています
国王陛下には愛する女性がいた。
彼女は陛下の初恋の相手で、陛下はずっと彼女を想い続けて、そして大切にしていた。
私は、そんな陛下と結婚した。
国と王家のために、私達は結婚しなければならなかったから、結婚すれば陛下も少しは変わるのではと期待していた。
でも結果は……私の理想を打ち砕くものだった。
そしてもう一つ。
私も陛下も知らないことがあった。
彼女のことを。彼女の正体を。

5人の小さな色彩人との物語
中村音音(なかむらねおん)
ファンタジー
かつて5人の小さな人の物語に着手したことがある。
5人ともそろいもそろってあまりに奔放なものだから物語が散り散りに飛んでいき、空中分解するみたいにして頓挫した作品だった。
パソコンの中に棲む小人という設定に華やかさはなく、だから彼らに与えた姿はモノトーン。地味だけど着々と描いてきたのに。
彼らは、おとなしい活躍など最初から望んではいなかった。
それがある時、自らに色をつけ、向こうから再登場してきたではないか。
作者であるぼくをさしおき、彼らは自由意思で活動し始めようとしている。
なんのために?
ぼくのものだったはずの物語は、ある瞬間を境に彼らの物語にすり替わった。
彼らの目的はなにか?
ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる