11 / 355
運命の出会い
1
しおりを挟む
その後、フリードマンは風の噂でマックスがあの宝石を手放したということを聞いた。
それからも、リュタンの黒い宝石「暗闇に眠る星」は人の手を転々と渡り歩き、いつの間にか数年の時が流れた。
*
「これは、ジェローム様、お目にかかれて光栄です。」
「今日は何用だ?」
愛想を振り撒く商人に、ジェロームは面倒臭そうに素っ気無い言葉を投げかけた。
「実は、本日はジェローム様にお買い上げいただきたい宝石がございまして…」
「宝石はもう飽きた…
それとも、何か特別のものなのか?」
「ええ、そりゃあもう!
なんといっても、リュタンの宝石なのですから。」
「……あぁ、それなら聞いたことがある。
持ち主が次から次に変わっているというものだろう?
気味の悪い宝石だとは聞いているが、特に死人が出たというわけでもない。
私は今まで何人もの持ち主の血をすすってきた呪いの宝石をいくつも所有している。
ただ、薄気味の悪い妖精の宝石というだけではそれほど興味をそそられんな。」
「そんな…冷たい事を…ジェローム様…
見るだけでけっこうですから、どうかお願いします。
そりゃあもう美しい闇のような黒でして…」
ジェロームが返事をする前に、商人は小さな箱を取り出し、その蓋を開けてジェロームの前に差し出した。
その瞬間、宝石を見つめるジェロームの表情が変わった。
「いくらだ?」
「え…?」
「この宝石の値段を聞いているのだ。」
「は、はい!それでしたら…」
商人は、宝石の値段を小声で囁いた。
ジェロームは使用人を呼びつけ、商人に金を支払うように命じた。
「あ…ありがとうございます!ジェローム様!」
金を受け取った商人は、満足した顔で部屋を出て行った。
(馬鹿共めが…
こんな面白いものに、誰も気付かぬとはな…)
ジェロームは、手の平に乗せた宝石を愛しそうに頬ずりをする。
(……愉しいことが起こりそうだ…)
それからも、リュタンの黒い宝石「暗闇に眠る星」は人の手を転々と渡り歩き、いつの間にか数年の時が流れた。
*
「これは、ジェローム様、お目にかかれて光栄です。」
「今日は何用だ?」
愛想を振り撒く商人に、ジェロームは面倒臭そうに素っ気無い言葉を投げかけた。
「実は、本日はジェローム様にお買い上げいただきたい宝石がございまして…」
「宝石はもう飽きた…
それとも、何か特別のものなのか?」
「ええ、そりゃあもう!
なんといっても、リュタンの宝石なのですから。」
「……あぁ、それなら聞いたことがある。
持ち主が次から次に変わっているというものだろう?
気味の悪い宝石だとは聞いているが、特に死人が出たというわけでもない。
私は今まで何人もの持ち主の血をすすってきた呪いの宝石をいくつも所有している。
ただ、薄気味の悪い妖精の宝石というだけではそれほど興味をそそられんな。」
「そんな…冷たい事を…ジェローム様…
見るだけでけっこうですから、どうかお願いします。
そりゃあもう美しい闇のような黒でして…」
ジェロームが返事をする前に、商人は小さな箱を取り出し、その蓋を開けてジェロームの前に差し出した。
その瞬間、宝石を見つめるジェロームの表情が変わった。
「いくらだ?」
「え…?」
「この宝石の値段を聞いているのだ。」
「は、はい!それでしたら…」
商人は、宝石の値段を小声で囁いた。
ジェロームは使用人を呼びつけ、商人に金を支払うように命じた。
「あ…ありがとうございます!ジェローム様!」
金を受け取った商人は、満足した顔で部屋を出て行った。
(馬鹿共めが…
こんな面白いものに、誰も気付かぬとはな…)
ジェロームは、手の平に乗せた宝石を愛しそうに頬ずりをする。
(……愉しいことが起こりそうだ…)
0
お気に入りに追加
0
あなたにおすすめの小説
外れスキル《コピー》を授かったけど「無能」と言われて家を追放された~ だけど発動条件を満たせば"魔族のスキル"を発動することができるようだ~
そらら
ファンタジー
「鑑定ミスではありません。この子のスキルは《コピー》です。正直、稀に見る外れスキルですね、何せ発動条件が今だ未解明なのですから」
「何てことなの……」
「全く期待はずれだ」
私の名前はラゼル、十五歳になったんだけども、人生最悪のピンチに立たされている。
このファンタジックな世界では、15歳になった際、スキル鑑定を医者に受けさせられるんだが、困ったことに私は外れスキル《コピー》を当ててしまったらしい。
そして数年が経ち……案の定、私は家族から疎ましく感じられてーーついに追放されてしまう。
だけど私のスキルは発動条件を満たすことで、魔族のスキルをコピーできるようだ。
そして、私の能力が《外れスキル》ではなく、恐ろしい能力だということに気づく。
そんでこの能力を使いこなしていると、知らないうちに英雄と呼ばれていたんだけど?
私を追放した家族が戻ってきてほしいって泣きついてきたんだけど、もう戻らん。
私は最高の仲間と最強を目指すから。
王太子様に婚約破棄されましたので、辺境の地でモフモフな動物達と幸せなスローライフをいたします。
なつめ猫
ファンタジー
公爵令嬢のエリーゼは、婚約者であるレオン王太子に婚約破棄を言い渡されてしまう。
二人は、一年後に、国を挙げての結婚を控えていたが、それが全て無駄に終わってしまう。
失意の内にエリーゼは、公爵家が管理している辺境の地へ引き篭もるようにして王都を去ってしまうのであった。
――そう、引き篭もるようにして……。
表向きは失意の内に辺境の地へ篭ったエリーゼは、多くの貴族から同情されていたが……。
じつは公爵令嬢のエリーゼは、本当は、貴族には向かない性格だった。
ギスギスしている貴族の社交の場が苦手だったエリーゼは、辺境の地で、モフモフな動物とスローライフを楽しむことにしたのだった。
ただ一つ、エリーゼには稀有な才能があり、それは王国で随一の回復魔法の使い手であり、唯一精霊に愛される存在であった。
人質から始まった凡庸で優しい王子の英雄譚
咲良喜玖
ファンタジー
アーリア戦記から抜粋。
帝国歴515年。サナリア歴3年。
新国家サナリア王国は、超大国ガルナズン帝国の使者からの宣告により、国家存亡の危機に陥る。
アーリア大陸を二分している超大国との戦いは、全滅覚悟の死の戦争である。
だからこそ、サナリア王アハトは、帝国に従属することを決めるのだが。
当然それだけで交渉が終わるわけがなく、従属した証を示せとの命令が下された。
命令の中身。
それは、二人の王子の内のどちらかを選べとの事だった。
出来たばかりの国を守るために、サナリア王が判断した人物。
それが第一王子である【フュン・メイダルフィア】だった。
フュンは弟に比べて能力が低く、武芸や勉学が出来ない。
彼の良さをあげるとしたら、ただ人に優しいだけ。
そんな人物では、国を背負うことが出来ないだろうと、彼は帝国の人質となってしまったのだ。
しかし、この人質がきっかけとなり、長らく続いているアーリア大陸の戦乱の歴史が変わっていく。
西のイーナミア王国。東のガルナズン帝国。
アーリア大陸の歴史を支える二つの巨大国家を揺るがす英雄が誕生することになるのだ。
偉大なる人質。フュンの物語が今始まる。
他サイトにも書いています。
こちらでは、出来るだけシンプルにしていますので、章分けも簡易にして、解説をしているあとがきもありません。
小説だけを読める形にしています。
神様のミスで女に転生したようです
結城はる
ファンタジー
34歳独身の秋本修弥はごく普通の中小企業に勤めるサラリーマンであった。
いつも通り起床し朝食を食べ、会社へ通勤中だったがマンションの上から人が落下してきて下敷きとなってしまった……。
目が覚めると、目の前には絶世の美女が立っていた。
美女の話を聞くと、どうやら目の前にいる美女は神様であり私は死んでしまったということらしい
死んだことにより私の魂は地球とは別の世界に迷い込んだみたいなので、こっちの世界に転生させてくれるそうだ。
気がついたら、洞窟の中にいて転生されたことを確認する。
ん……、なんか違和感がある。股を触ってみるとあるべきものがない。
え……。
神様、私女になってるんですけどーーーー!!!
小説家になろうでも掲載しています。
URLはこちら→「https://ncode.syosetu.com/n7001ht/」
私がいつの間にか精霊王の母親に!?
桜 あぴ子(旧名:あぴ子)
ファンタジー
サラは幼い頃から学ばなくても魔法が使えた。最近では思っただけで、魔法が使えるまでに。。。
精霊に好かれる者は、強力な魔法が使える世界。その中でも精霊の加護持ちは特別だ。当然サラも精霊の加護持ちだろうと周りから期待される中、能力鑑定を受けたことで、とんでもない称号がついていることが分かって⁉️
私が精霊王様の母親っ?まだ、ピチピチの10歳で初恋もまだですけど⁉️
異世界国盗り物語 ~戦国日本のサムライ達が剣と魔法の世界で無双する~
和田真尚
ファンタジー
戦国大名の若君・斎藤新九郎は大地震にあって崖から転落――――気付いた時には、剣と魔法が物を言い、魔物がはびこる異世界に飛ばされていた。
「これは神隠しか?」
戸惑いつつも日本へ帰る方法を探そうとする新九郎
ところが、今度は自分を追うように領地までが異世界転移してしまう。
家臣や領民を守るため、新九郎は異世界での生き残りを目指すが周囲は問題だらけ。
領地は魔物溢れる荒れ地のど真ん中に転移。
唯一頼れた貴族はお家騒動で没落寸前。
敵対勢力は圧倒的な戦力。
果たして苦境を脱する術はあるのか?
かつて、日本から様々なものが異世界転移した。
侍 = 刀一本で無双した。
自衛隊 = 現代兵器で無双した。
日本国 = 国力をあげて無双した。
では、戦国大名が家臣を引き連れ、領地丸ごと、剣と魔法の異世界へ転移したら――――?
【新九郎の解答】
国を盗って生き残るしかない!(必死)
【ちなみに異世界の人々の感想】
何なのこの狂戦士!? もう帰れよ!
戦国日本の侍達が生き残りを掛けて本気で戦った時、剣と魔法の異世界は勝てるのか?
これは、その疑問に答える物語。
異世界よ、戦国武士の本気を思い知れ――――。
※「小説家になろう」様、「カクヨム」様にも投稿しています。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる