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Angel's Ring
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私達は、町からずいぶん離れた場所まで走り、やっと一息吐きました。
この前、宿屋のお母様をお連れした診療所よりもずっと先です。
「ここまで来たらもう大丈夫だろう…」
息を切らしたファビアンさんが、搾り出すような声でそうおっしゃいました。
私はすぐには喋れず、息が整うのを待ってからファビアンさんに尋ねました。
「ファビアンさん、先ほどはなぜあんなに必死で逃げられたんですか?」
「なぜって…
そうか、あんたはまだよくわかってないんだな。
さっきの奴はきっと俺にいちゃもんを付けに来たに違いないんだ。」
「いちゃもん…ですか?」
「そうなんだ。
たとえば、事故があったとか火事があったとか…何か良くない事があると、なんでも俺のせいにされちまう。
おまえが昼間に俺の店に来たからこんなことになったとかなんとか言われ、物を奪われたり痛めつけられたりするんだ。
さっきの奴も、どうせそんなことを言いに来たに違いない。」
「そんな…!
酷いじゃないですか!
それに、ファビアンさんは腕っ節もお強いのになぜ?」
「俺は、素人相手に剣や魔法を使いたくないんだ。
いや、それは俺の師匠でもあるおやじの教えなんだ。
だから、反撃はしない。
そう決めてるんだ。」
「ファビアンさん…」
なんてカッコイイんでしょう…!
私は、そのお話を聞いて感動してしまいました。
こんな素敵な人が疫病神呼ばわりされていじめられてるなんてひどい話です!
私が、そんなおかしな噂は取り払ってあげなければ…!!
「な、な、なんだ、どうした?
なんか目がおかしいぞ!」
「なんでもありません!
ファビアンさん、私、頑張りますからね!!」
「あ…あぁ…よろしく頼むよ…」
ファビアンさんは少しひきつった顔つきでしたが微笑んで下さいました。
私の決意が伝わったのでしょうか?
「ファビアンさん、次はどこへ行くんですか?
マーヤさんの所ですか?」
「マーヤの住む山はまだ少し先だ。
それにまだこのあたりは俺のことを知ってるやつらが多い。
またさっきみたいなことがあるかもしれないが、我慢してくれよ!」
「はいっ!わかりました!」
私達は、次の町を目指して歩き出しました。
この前、宿屋のお母様をお連れした診療所よりもずっと先です。
「ここまで来たらもう大丈夫だろう…」
息を切らしたファビアンさんが、搾り出すような声でそうおっしゃいました。
私はすぐには喋れず、息が整うのを待ってからファビアンさんに尋ねました。
「ファビアンさん、先ほどはなぜあんなに必死で逃げられたんですか?」
「なぜって…
そうか、あんたはまだよくわかってないんだな。
さっきの奴はきっと俺にいちゃもんを付けに来たに違いないんだ。」
「いちゃもん…ですか?」
「そうなんだ。
たとえば、事故があったとか火事があったとか…何か良くない事があると、なんでも俺のせいにされちまう。
おまえが昼間に俺の店に来たからこんなことになったとかなんとか言われ、物を奪われたり痛めつけられたりするんだ。
さっきの奴も、どうせそんなことを言いに来たに違いない。」
「そんな…!
酷いじゃないですか!
それに、ファビアンさんは腕っ節もお強いのになぜ?」
「俺は、素人相手に剣や魔法を使いたくないんだ。
いや、それは俺の師匠でもあるおやじの教えなんだ。
だから、反撃はしない。
そう決めてるんだ。」
「ファビアンさん…」
なんてカッコイイんでしょう…!
私は、そのお話を聞いて感動してしまいました。
こんな素敵な人が疫病神呼ばわりされていじめられてるなんてひどい話です!
私が、そんなおかしな噂は取り払ってあげなければ…!!
「な、な、なんだ、どうした?
なんか目がおかしいぞ!」
「なんでもありません!
ファビアンさん、私、頑張りますからね!!」
「あ…あぁ…よろしく頼むよ…」
ファビアンさんは少しひきつった顔つきでしたが微笑んで下さいました。
私の決意が伝わったのでしょうか?
「ファビアンさん、次はどこへ行くんですか?
マーヤさんの所ですか?」
「マーヤの住む山はまだ少し先だ。
それにまだこのあたりは俺のことを知ってるやつらが多い。
またさっきみたいなことがあるかもしれないが、我慢してくれよ!」
「はいっ!わかりました!」
私達は、次の町を目指して歩き出しました。
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