Angel's Ring

ルカ(聖夜月ルカ)

文字の大きさ
14 / 78
06 はじめて経験したこと

しおりを挟む
「お、おいしい!!」

おなかの虫をやっつけるためのものですから、きっと酷い味だろうと思いながら私は手を付けたのですが、なんと、意外なことにそれはとてもおいしかったのです。



「おまえさん、相当腹が減ってたんじゃなぁ…
こんなものがうまいと感じるとは…」

「え……?!
腹が減ってた…?」

「そうなんじゃろ?
いつから食べてなかったんじゃ?」

そう言われても、人間の食べるものを食べるのは初めてだなんてことは言えません。



「あ……あぁ…えっと、1ヶ月くらいです…」

「何?1ヶ月?
……おまえさんは、本当に冗談が好きなんじゃな。」

どう答えて良いのかよくわからなかったので適当に答えたのですが、私の答えはどうやら冗談にとられるほど的外れなものだったようです。
そういえば、人間が長い間食べなければ死んでしまうということは知ってたのですが、その期間がどのくらいなのかということは詳しく知らなかったのです。
ご老人が「相当」とおっしゃったので、1ヶ月と答えたのですが、きっともっと少ない期間が「相当」なのでしょう。
それから、腹の虫のことについても教えてもらいました。
おなかが減った時にするおかしな音のことをそう呼ぶのだそうです。
本当に、おなかの中に虫がいるわけではなかったのです。



「しかし、おまえさん…
おかしな人じゃなぁ…どこか遠くから来なさったのかね?」

「じ、実は…そうなんです。
それで、このあたりの風習に疎くて…」

「腹の虫は、このあたりじゃなくとも言うと思うが…
もしかしたら、異国から来なさったのか?」

「そ、そうなんです!その通りです!」

「その割には、言葉はえらく流暢じゃな。」

「そうですか?!」

「おまえさん…もしかしたら、どこかで頭を強く打ったとか…
ものすごく恐ろしい想いをしたんじゃないのかね?!」

ご老人が何を意図してそんなことをおっしゃるのかわかりませんでしたが、私は適当に話をあわせておくことにしました。



「そうです!
ものすごく恐ろしい想いをしました。
そして、頭を強く打ちました。」

「そうじゃったんか…
可哀想に…
おまえさんはその時のショックで、頭のねじが少々緩んでしもうたようじゃな。
じゃが、心配することはない。
おまえさんは元々はきっとちゃんとした人なんじゃ。
話し方も物腰も上品じゃから、お金持ちなのかもしれんな。
そのうち、きっと頭がしゃんとする時が来るじゃろう…
なぁ~に、あせることはないさ。
ゆっくり治していけば良いんじゃ。」

そう言って、ご老人は私の肩を力強く叩かれました。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

甲斐ノ副将、八幡原ニテ散……ラズ

朽縄咲良
歴史・時代
【第8回歴史時代小説大賞奨励賞受賞作品】  戦国の雄武田信玄の次弟にして、“稀代の副将”として、同時代の戦国武将たちはもちろん、後代の歴史家の間でも評価の高い武将、武田典厩信繁。  永禄四年、武田信玄と強敵上杉輝虎とが雌雄を決する“第四次川中島合戦”に於いて討ち死にするはずだった彼は、家臣の必死の奮闘により、その命を拾う。  信繁の生存によって、甲斐武田家と日本が辿るべき歴史の流れは徐々にずれてゆく――。  この作品は、武田信繁というひとりの武将の生存によって、史実とは異なっていく戦国時代を書いた、大河if戦記である。 *ノベルアッププラス・小説家になろうにも、同内容の作品を掲載しております(一部差異あり)。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

〈完結〉遅効性の毒

ごろごろみかん。
ファンタジー
「結婚されても、私は傍にいます。彼が、望むなら」 悲恋に酔う彼女に私は笑った。 そんなに私の立場が欲しいなら譲ってあげる。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...