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エピローグ
エピローグ
しおりを挟むあれから、私は殺し屋になった。と言ってもまだ見習いで、毎日勉強と訓練の繰り返しだが。
華村カナは死んだ。新しくつけられた名前は本城ユイ。
正直、外界になんの未練もない私にとっては、本当にラッキーだった。なんでも社長が人狼ゲームを見ていて私の勝気な性格を気に入ったらしい。水瀬には根拠のない自信と言われたが、見る人それぞれで私の意味は違うのだ。
水瀬は……分からない。生きているのだろうか。D組はそもそも人として扱われないらしく、男女関係なく同じ独居房に入れられるらしい。噂では水瀬と内通していた鴨志田という男もD組に落ちたとか。
だがD組にも救済措置はある。10回連続で生き残れば恩赦が与えられるらしい。ちなみに前例はいない。シオリさんとカオリさんは7回目だったそうだ。
「よし……筋トレ終わり」
私は今生きている。やっと、本当の意味で生き返れた気がする。だけど、あの人狼ゲームで背負う十字架は、一生私の方に乗るだろう。それでいい。私は許されてはいけない。まがいなりにも水瀬をいじめてしまったのは事実だ。禁止されているパパ活をしたのも事実。そして。自分の意志で、エリカを殺したのも。ハルもマドカもそうだ。
こうやって毎日必死に生きることが贖罪になると信じて、私は今日も汗を流す。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
「な~に黄昏てるんですか?せんぱ~い」
「うわっびっくりした……まひるさんか」
弊社では中庭という休憩スペースがある。基本地下に建造物が多いため、太陽光を浴びるための憩いの場だ。と言っても、ガラスで囲い人口植物を植えただけのパチモンだが。
「休憩長いっスよ……サボりですか?」
「バカ言うなよ……次の企画が思い浮かばないから気分転換に来てただけ」
「ふ~ん、あ、そうだ先輩!改めまして……」
まひるが畏まって礼をする。
「チーフ昇格おめでとうございます!」
「あー……どうも」
「反応薄っ!」
「いや、まあね」
人狼ゲームは後処理も含め無事終了した。予定にないD組の死も、まあそれが彼女らの運命だろうと社長と部長にフォローされた。クライアントは大絶賛で、特に最終的に最大数の死体が発生したからか、S.J様はたいそう喜んでいた。K.T様に関しては「たまにはこういうのもいい」というお言葉を頂いた。
「まーだ水瀬の後処理のこと気にしてんすか~?いいじゃないですか!あんな極悪人!」
「まひるさん、この会社で善悪とか正義とかいう言葉は使うな」
「おっとこりゃ失敬」
「正義も悪も無い……なんてことは分かってるけどさ……やりきれないよなぁ……」
「でも先輩」
「ん?」
「水瀬を身辺調査して後処理を考えてる時の目、なんか楽しそうでしたよ」
―――濁り輝いていたぞ
ふと部長の一言を思い出した。
「ねえまひるさん」
「なんです?」
「僕の目、どう思う?」
「うーーーーん……疲れ目ですね!」
「……そっか」
ベンチから立ち、事務所へ戻る。
次のデスゲームが、遠山を待っている。
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