同好怪!?

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第3話(1)申請通る

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「よっ」

「こんにちは……」

「やっほ~♪」

「お前らな……」

 怪異同士の激しい戦いを目撃した翌日の昼休み、俺の下に紅蓮、疾風、雷電の三人がまたも揃って訪ねてきた。

「おいおいいつにも増して暗い表情だな」

「紅蓮、いつも暗いみたいに言うな」

「コンビニ弁当では栄養が偏りますからやむを得ないでしょう……」

「疾風、マジなトーンで言うのはやめてくれないか」

「この学園きっての美人三人が尋ねてきたっていうのに浮かない顔じゃ~ん?」

「雷電、そういうことを自分で言うな」

 俺は三人にそれぞれ受け答えする。しかし、確かに学園でもなにかと注目を集める三人である。この三人が揃って俺のところに来るというのは――しかも連日――結構な事件というと大げさだが、それなりのトピックスである。そろそろ何かしらの対策を講じないとマズいだろう。他の先生方の目もあるし、生徒たちの噂になってもおかしくはない。さて、どうしたものかと腕を組む。

「何を考え込んでんだ?」

「いや、世間体というものについてだな……」

「世間体だあ?」

「ああ」

 紅蓮の言葉に俺は頷く。

「意味がよく分かんねえな……」

「そこでひとつ相談があるんだが……」

「なんだよ?」

「顧問の件はやっぱり白紙にしてもらえないだろうか?」

「! おいおい、何を言ってんだよ……」

 紅蓮が呆れたように両手を広げる。

「だってな……」

「だってなんだよ」

「よく考えてみると……いや、よく考えなくても……」

「どっちなんだよ」

「あまりにも……」

「あまりにも?」

 紅蓮が首を傾げる。

「不明な点が多すぎる」

「そんなことかよ」

「いやいや、大事なことだろう」

「ちょっとくらいミステリアスな方が面白えだろうが」

「同好会活動ではちょっとでもミステリアスなのは困るんだよ」

「あ~大体だな……」

 紅蓮が髪をかきむしる。

「大体?」

「オレらにもよく分かっていねえんだからしょうがねえだろうが」

「だからそれではな……」

 俺は困り顔を浮かべる。

「……それでは」

「うん?」

 俺は口を開いた疾風に視線を向ける。

「申請もまだということでしょうか?」

「い、いや、一応はしてみたが、すんなり通るとは考えづらいぞ?」

「そうでしょうか……」

「え?」

「……お呼びのようですよ」

「ええ? あ、教頭先生……はい、ただいま!」

 俺は教頭先生のデスクへと向かう。書類を受け取って戻ってくる。

「……どうでした?」

「通ったよ、『同好怪』……」

「おっしゃ!」

「イエ~イ♪」

「おいおい、職員室で騒ぐなよ……!」

 俺は紅蓮と雷電を注意する。

「当然の結果ですね……」

 疾風が冷静に呟く。

「……お前はイケると思っていたのか?」

「ええ」

「根拠は?」

「私の存在です」

「は?」

「成績優秀な私がいれば、まずおかしなことはしないだろうという判断でしょう。日頃積み重ねた信頼の賜物ですね」

 疾風は眼鏡をクイっと上げながら、うんうんと頷く。

「大した自信だな……」

「実際そうなのではありませんか?」

「まあ、そうなんだろうけどな……」

「もちろん、先生への信頼もプラスの方向に働いたとは思いますよ」

「そうか?」

「ええ、多少は」

「多少かよ」

 俺は唇を少し尖らせる。

「それじゃあこれで『同好怪』、晴れて活動開始だね~♪」

 雷電が両手を合わせて楽しげに呟く。

「活動開始って言われてもな……」

 俺は後頭部をポリポリと搔く。

「なにか問題でもあるの?」

「……活動場所だ」

「場所?」

 雷電が首を傾げる。

「ああ、とりあえずではあるが、お前らのそれぞれのクラスのいずれかということにしておいたんだが……」

「クラスメイトに見られるのはちょっと恥ずいかな……」

「そんなことを言うだろうと思ったよ……」

 雷電の言葉に俺はため息交じりで反応する。

「図書室などで構わないと思っていましたが……」

「基本は文芸部の活動場所だ」

 疾風の発言に俺は首を左右に振る。

「ここで良いんじゃねえか?」

「馬鹿を言うな」

 紅蓮の発言を俺は切って捨てる。

「じゃあさ、理科の先生が集まっている部屋とかあんじゃん」

「……科目ごとの教室は、基本的に授業の準備などで用いるものだ」

「駄目か」

「駄目だ」

「最悪廊下でもいいんだけどな」

「もっと駄目だ」

「ああ、それなら、ひとつ目星をつけていたのがあるよ~♪」

 雷電が思い出したように呟く。
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