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第三章
第28話(3) 金色の夜叉
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「はっ!」
「そら!」
「ふん!」
突如現れた中折れ帽子を目深に被って大きめのマスクを付けた白いスーツ姿の男が二又の槍で、山伏姿の長い黒髪を後ろで一つ縛りにした男が二本の小太刀で、それぞれ御剣に襲いかかるが、御剣は刀を取り出してそれを難なく防ぐ。
「へえ、隙を突いたつもりだったのだけど……」
「ちっ、相変わらずムカつく女だぜ……」
「なるほど……剛力などの出現は貴様の差し金か、狂骨(きょうこつ)!」
御剣は刀を強く押し返すと、二人の男は後ろに飛んで、御剣と距離を取る。スーツ姿の男がクスクス笑いをしながら答える。
「……その通り」
「そうか、あいつは根絶した妖を復活させることの出来る半妖か」
勇次が金棒を構えながら呟く。その呟きに一美が反応する。
「え? そうだったの?」
「姉ちゃん、あいつらと行動を共にしていた時があっただろう?」
「その時期はなんというか、頭がぼうっとしてよく覚えていないのよ……」
「そ、そうか……まあ、覚えてなくても別に良いか」
「そうよ」
「おいおい、かつての同志に対してあまりに寂しい物言いだね?」
一美の言葉に狂骨は苦笑する。一美が話す。
「洗脳されていたようなものよ、志もなにもあったものじゃないでしょ」
「確かにそれはそうかもしれないね」
狂骨はうんうんと頷く。一美が首を捻る。
「物分かり良いわね……」
「あらためて……鬼ヶ島一美さん」
「はあ……なんでしょう?」
「半妖の同志として、我々と共に……」
「ごめんなさい」
一美が素早く頭を下げる。狂骨が頭を軽く抑える。
「秒で断るとは……話くらい聞いてくれても良いんじゃないのかい?」
「聞くだけ無駄です」
「ははっ、これは手厳しい」
狂骨はやれやれと言った風に両手を広げる。
「ナンパは失敗だな」
「ああ、そうだね」
山伏姿の男の言葉に狂骨は頷く。
「やっぱり強引にでも連れていくしかないか」
「女性相手に気が進まないけどね」
「今更紳士ぶってんじゃねえよ」
「そういう君は無理に悪ぶらなくても良いんじゃないか、烏丸君?」
「その名を呼ぶなって言ってんだろうが……」
「あ、彼は覚えているわ、烏天狗の半妖、烏丸黛(からすままゆずみ)君」
「うおおおい⁉ フルネームで呼ぶな⁉」
一美の発言に烏丸と呼ばれた男は慌てる。勇次が顎に手を当てる。
「天狗は天狗でも、烏天狗の半妖だったのか。烏丸って……そのまんまだな……」
「お前にだけは言われたくねえよ! 鬼ヶ島勇次!」
勇次に対し、烏丸が声を荒げる。御剣が呟く。
「烏丸、からすま、カラスマ……マスカラ……」
「おい! その連想ゲームはやめろ……」
「まつ毛なのか、まゆ毛なのか、ややこしい名前だな……」
「って、おおい‼」
「た、隊長、真顔でボケないで下さい……」
一美が肩を震わせる。御剣が首を傾げる。
「? ボケたつもりはないが?」
「ま、真面目に疑問に感じたんですか、それはそれで……」
一美が笑いをこらえきれなくなる。烏丸が叫ぶ。
「き、気にしていることを……!」
「気にしていたのか?」
「ああ、そうだよ!」
烏丸が半ばやけくそになって、狂骨に答える。
「それなら僕みたいに半妖らしい名前を名乗れば良いじゃないか」
「そんな痛々しいこと出来るかよ!」
「い、痛々しい……?」
烏丸の言葉に狂骨はショックを受ける。
「いや、痛々しいってのは言い過ぎたかもしれねえ……」
「そんな風に思っていたんだね……」
「ええい! そんなことはどうでも良い! さっさと黙らせるぞ!」
「!」
烏丸が背中の羽を広げ、一美の懐に入る。
「おらあっ!」
「くっ⁉」
一美が鎌で烏丸の攻撃を防ぐ。烏丸が笑う。
「へっ、やるじゃねえか! ただ、この連撃はどうかな⁉」
「ぐっ⁉」
烏丸の素早い連続攻撃に対し、一美の対応が遅れる。
「姉ちゃん!」
「一美!」
「おっと、そうはさせないよ!」
「ちっ!」
一美の援護をしようとした勇次と御剣の前に狂骨が立ちはだかる。
「足止めしている間にケリをつけてくれ」
「ああ! 動けない程度に痛めつける!」
「むう……!」
「ははっ、そんな鎌さばきで俺の連撃を防げるわけねえだろう!」
「ね、姉ちゃん!」
「大丈夫よ、勇次……お姉ちゃんは負けない!」
一美が叫ぶと、その体全体を包むように金色の気が充満し、頭部に細い角が生える。烏丸が戸惑うと、狂骨が踵を返し、一美に相対する。
「援護するよ、烏丸君!」
「うおおおっ!」
一美が金棒を横向きに薙ぐと、金色の光が閃き、烏丸と狂骨は思い切り吹き飛ばされる。
「す、凄い、一撃で……」
感嘆する勇次に一美が尋ねる。
「どうかしら?」
「え? き、金色だな……」
「見たまんまじゃない……」
「くっ……」
「⁉」
狂骨の左眼の骸骨化した部分が露になり、一美は一瞬体をビクッとさせる。狂骨は帽子を拾って烏丸に話しかける。
「覚醒のきっかけを掴んだようだね……厄介だ、ここは一旦退こう」
「仕方ねえ! 注意を引けただけ良しとするか!」
「む!」
烏丸が強風を起こし、それを利用して、狂骨と烏丸はその場から姿を消す。一美が呟く。
「覚醒って……力を入れる度、金色になるの? あんまり派手なのは嫌なんだけど……」
「そら!」
「ふん!」
突如現れた中折れ帽子を目深に被って大きめのマスクを付けた白いスーツ姿の男が二又の槍で、山伏姿の長い黒髪を後ろで一つ縛りにした男が二本の小太刀で、それぞれ御剣に襲いかかるが、御剣は刀を取り出してそれを難なく防ぐ。
「へえ、隙を突いたつもりだったのだけど……」
「ちっ、相変わらずムカつく女だぜ……」
「なるほど……剛力などの出現は貴様の差し金か、狂骨(きょうこつ)!」
御剣は刀を強く押し返すと、二人の男は後ろに飛んで、御剣と距離を取る。スーツ姿の男がクスクス笑いをしながら答える。
「……その通り」
「そうか、あいつは根絶した妖を復活させることの出来る半妖か」
勇次が金棒を構えながら呟く。その呟きに一美が反応する。
「え? そうだったの?」
「姉ちゃん、あいつらと行動を共にしていた時があっただろう?」
「その時期はなんというか、頭がぼうっとしてよく覚えていないのよ……」
「そ、そうか……まあ、覚えてなくても別に良いか」
「そうよ」
「おいおい、かつての同志に対してあまりに寂しい物言いだね?」
一美の言葉に狂骨は苦笑する。一美が話す。
「洗脳されていたようなものよ、志もなにもあったものじゃないでしょ」
「確かにそれはそうかもしれないね」
狂骨はうんうんと頷く。一美が首を捻る。
「物分かり良いわね……」
「あらためて……鬼ヶ島一美さん」
「はあ……なんでしょう?」
「半妖の同志として、我々と共に……」
「ごめんなさい」
一美が素早く頭を下げる。狂骨が頭を軽く抑える。
「秒で断るとは……話くらい聞いてくれても良いんじゃないのかい?」
「聞くだけ無駄です」
「ははっ、これは手厳しい」
狂骨はやれやれと言った風に両手を広げる。
「ナンパは失敗だな」
「ああ、そうだね」
山伏姿の男の言葉に狂骨は頷く。
「やっぱり強引にでも連れていくしかないか」
「女性相手に気が進まないけどね」
「今更紳士ぶってんじゃねえよ」
「そういう君は無理に悪ぶらなくても良いんじゃないか、烏丸君?」
「その名を呼ぶなって言ってんだろうが……」
「あ、彼は覚えているわ、烏天狗の半妖、烏丸黛(からすままゆずみ)君」
「うおおおい⁉ フルネームで呼ぶな⁉」
一美の発言に烏丸と呼ばれた男は慌てる。勇次が顎に手を当てる。
「天狗は天狗でも、烏天狗の半妖だったのか。烏丸って……そのまんまだな……」
「お前にだけは言われたくねえよ! 鬼ヶ島勇次!」
勇次に対し、烏丸が声を荒げる。御剣が呟く。
「烏丸、からすま、カラスマ……マスカラ……」
「おい! その連想ゲームはやめろ……」
「まつ毛なのか、まゆ毛なのか、ややこしい名前だな……」
「って、おおい‼」
「た、隊長、真顔でボケないで下さい……」
一美が肩を震わせる。御剣が首を傾げる。
「? ボケたつもりはないが?」
「ま、真面目に疑問に感じたんですか、それはそれで……」
一美が笑いをこらえきれなくなる。烏丸が叫ぶ。
「き、気にしていることを……!」
「気にしていたのか?」
「ああ、そうだよ!」
烏丸が半ばやけくそになって、狂骨に答える。
「それなら僕みたいに半妖らしい名前を名乗れば良いじゃないか」
「そんな痛々しいこと出来るかよ!」
「い、痛々しい……?」
烏丸の言葉に狂骨はショックを受ける。
「いや、痛々しいってのは言い過ぎたかもしれねえ……」
「そんな風に思っていたんだね……」
「ええい! そんなことはどうでも良い! さっさと黙らせるぞ!」
「!」
烏丸が背中の羽を広げ、一美の懐に入る。
「おらあっ!」
「くっ⁉」
一美が鎌で烏丸の攻撃を防ぐ。烏丸が笑う。
「へっ、やるじゃねえか! ただ、この連撃はどうかな⁉」
「ぐっ⁉」
烏丸の素早い連続攻撃に対し、一美の対応が遅れる。
「姉ちゃん!」
「一美!」
「おっと、そうはさせないよ!」
「ちっ!」
一美の援護をしようとした勇次と御剣の前に狂骨が立ちはだかる。
「足止めしている間にケリをつけてくれ」
「ああ! 動けない程度に痛めつける!」
「むう……!」
「ははっ、そんな鎌さばきで俺の連撃を防げるわけねえだろう!」
「ね、姉ちゃん!」
「大丈夫よ、勇次……お姉ちゃんは負けない!」
一美が叫ぶと、その体全体を包むように金色の気が充満し、頭部に細い角が生える。烏丸が戸惑うと、狂骨が踵を返し、一美に相対する。
「援護するよ、烏丸君!」
「うおおおっ!」
一美が金棒を横向きに薙ぐと、金色の光が閃き、烏丸と狂骨は思い切り吹き飛ばされる。
「す、凄い、一撃で……」
感嘆する勇次に一美が尋ねる。
「どうかしら?」
「え? き、金色だな……」
「見たまんまじゃない……」
「くっ……」
「⁉」
狂骨の左眼の骸骨化した部分が露になり、一美は一瞬体をビクッとさせる。狂骨は帽子を拾って烏丸に話しかける。
「覚醒のきっかけを掴んだようだね……厄介だ、ここは一旦退こう」
「仕方ねえ! 注意を引けただけ良しとするか!」
「む!」
烏丸が強風を起こし、それを利用して、狂骨と烏丸はその場から姿を消す。一美が呟く。
「覚醒って……力を入れる度、金色になるの? あんまり派手なのは嫌なんだけど……」
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