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第二章
第23話(4) 賢さと素早さと粘り強さと
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「うおおっ!」
「どわっ⁉」
高松が大声を上げながら振り回すのは包丁である。勇次は金棒でなんとか受け止める。
「高松さん、分かっているかとは思いますが……」
「分がってら! 命ばかりは取らねえ!」
神不知火の言葉に高松は頷く。勇次が叫ぶ、
「本当かよ⁉」
「ああ!」
高松は包丁を素早く振り下ろす。勇次はこれもかろうじて受け止める。
「わりと明確な殺気を感じるんだが⁉」
「そんたごど気にするな!」
「気にするって!」
「痛めづげるだげだ!」
「だからそれが嫌だっての!」
高松の攻撃を勇次は後ろに飛んでかわす。神不知火が呟く。
「思っているよりも動きの質がいい……もっと直情的な戦い方をするかと思いましたけど」
「はあ……はあ……」
「勇次! 『賢さと素早さと粘り強さ』だぞ!」
「! は、はい!」
御剣の言葉に勇次は頷く。高松が声を上げて飛び込む。
「いつかのヒット曲かよ!」
(まず……『素早さ』! どんなに動きが早い相手でも“始動”というものがある! 異形の相手ならまた別だが、この場合は相手の足に注目していれば……)
「おおっ!」
(右!)
勇次は左に飛んで高松の攻撃をかわす。
「くっ!」
(来る方向が分かれば、ある程度は反応出来る! 俺自身の素早さも上がっている!)
「調子さ乗るなよ!」
高松は連続攻撃を仕掛けてくるようになる。勇次は素早く考えを巡らせる。
(次は……『賢さ』! 相手のことを分析……なんて高等なことは今の俺には出来ねえ! だが、観察することは出来る! このロン毛のセンター分けの得物は包丁……長ささえ見極めれば、連続で振り回されても……!)
「むっ!」
勇次は包丁の先がちょうど届かない位置に立ってみせる。
(こういうことも出来る!)
「舐めるな!」
高松はさらに攻撃を続ける。勇次は舌打ちしながら考える。
(加速がさらに上がった⁉ しかもさっきよりも連続攻撃を繰り返せるようになっている! ただ、焦るな! 最後は『粘り強さ』だ! どの攻撃をかわすか、受け止めるかを見極める! 無限に続く攻撃なんてあるわけがねえ……)
勇次は高松の攻撃をかわしたり、受け止めたりしながら、なんとか凌いでいぐ。
「ちっ……」
今度は高松が舌打ちして、たまらず動きを止める。勇次が目を見開く。
(ここだ!)
「ぐっ⁉」
勇次が金棒を振り下ろす。高松はかわしきれず、右肩にそれを喰らう。
「うむ……相手の息切れのタイミングを狙った良い攻撃だ……」
後方で見ていた御剣が腕を組んで頷く。御盾が叫ぶ。
「いや、呑気に解説しておって良いのか⁉」
「ん?」
「ん?じゃない! 東北管区との戦いが始まってしまったぞ!」
「始まってしまったものは仕方なかろう」
「し、仕方がないって……」
「良い演習だと思えばいい」
「し、しかし……」
「それに思い出したぞ、あの高松とやら……」
御剣が高松を指し示す。御盾が察して頷く。
「あ、ああ……」
「色々と興味深いではないか?」
「其方は良い趣味をしておるわ……」
笑みを浮かべる御剣に対し、御盾が呆れる。
「うぐっ……」
肩を抑えてうずくまる高松に、勇次が声をかける。
「本当は頭を狙ったんですけど、肩にしました。それでも手ごたえはかなりあった。包丁を振り回すことは出来ないはずです。もう終わりにしましょう」
「! ほ、本当は?」
「え?」
「あえて肩を狙ったでいうごどが⁉ 随分とまた舐めぐさりやがって!」
高松がバッと立ち上がる。
「!」
「こごまでコケにされで、もう我慢出来ね!」
「うおっ⁉」
高松が叫ぶと、その体全体を包むように桃色の気が充満し、頭部に角が生える。
「……」
「なっ⁉」
「泣く子はいねーがー⁉ 悪い子はいねーがー⁉」
高松は右手に包丁、左手に背中に背負っていた桶を持ち、勇次に斬りかかる。
「ぬおっ⁉」
「ふん!」
「ちぃっ!」
高松の攻撃をなんとか受け止めた勇次は後方に飛び、御剣と御盾に視線を送る。
「高松幸楽……奴は『なまはげ』の半妖だ!」
「腕を組んで偉そうに叫ぶな! さっきまで忘れておったろう!」
「な、なまはげ……」
「しかし、体がなんというかこう……ふんわりと桃色だな。あれはラーメン屋というか……」
「違うなにかを思い浮かべますよね」
「うおい! 宿敵も鬼ヶ島も呑気なことを言っておる場合か!」
「鬼ヶ島勇次!」
「っと⁉」
高松の攻撃を勇次はまたも受け止める。高松が口角泡を飛ばす。
「おめだけは許せん!」
「お、俺、貴方になにかしましたっけ?」
「鬼の半妖のおめが現れたことによって、こっちは多大なる精神的苦痛を受げだんだ!」
「え、ええっ⁉ どういうことですか?」
勇次は再び高松と距離を取る。高松が話し出す。
「おめの出現によって、やれ『キャラ被っているっすよねw』だどが、やれ『もしかしてジェネリック半妖さんすか?w』だどが言われるようになったんだ! ただでさえ、なまはげと鬼は混同されやすいというのに!」
「……なんだと思ったら……」
「ん⁉」
「単なる逆恨みじゃねえか! 真面目に聞いて損したわ!」
「どおっ⁉」
勇次の体がほんのりと赤くなり、角が生える。神不知火が目を見張る。
「! 調査報告以上の妖力の高まり……これは……」
「うおおっ!」
「ぐはっ⁉」
勇次が金棒を一振りすると、高松は吹き飛ばされる。
「どわっ⁉」
高松が大声を上げながら振り回すのは包丁である。勇次は金棒でなんとか受け止める。
「高松さん、分かっているかとは思いますが……」
「分がってら! 命ばかりは取らねえ!」
神不知火の言葉に高松は頷く。勇次が叫ぶ、
「本当かよ⁉」
「ああ!」
高松は包丁を素早く振り下ろす。勇次はこれもかろうじて受け止める。
「わりと明確な殺気を感じるんだが⁉」
「そんたごど気にするな!」
「気にするって!」
「痛めづげるだげだ!」
「だからそれが嫌だっての!」
高松の攻撃を勇次は後ろに飛んでかわす。神不知火が呟く。
「思っているよりも動きの質がいい……もっと直情的な戦い方をするかと思いましたけど」
「はあ……はあ……」
「勇次! 『賢さと素早さと粘り強さ』だぞ!」
「! は、はい!」
御剣の言葉に勇次は頷く。高松が声を上げて飛び込む。
「いつかのヒット曲かよ!」
(まず……『素早さ』! どんなに動きが早い相手でも“始動”というものがある! 異形の相手ならまた別だが、この場合は相手の足に注目していれば……)
「おおっ!」
(右!)
勇次は左に飛んで高松の攻撃をかわす。
「くっ!」
(来る方向が分かれば、ある程度は反応出来る! 俺自身の素早さも上がっている!)
「調子さ乗るなよ!」
高松は連続攻撃を仕掛けてくるようになる。勇次は素早く考えを巡らせる。
(次は……『賢さ』! 相手のことを分析……なんて高等なことは今の俺には出来ねえ! だが、観察することは出来る! このロン毛のセンター分けの得物は包丁……長ささえ見極めれば、連続で振り回されても……!)
「むっ!」
勇次は包丁の先がちょうど届かない位置に立ってみせる。
(こういうことも出来る!)
「舐めるな!」
高松はさらに攻撃を続ける。勇次は舌打ちしながら考える。
(加速がさらに上がった⁉ しかもさっきよりも連続攻撃を繰り返せるようになっている! ただ、焦るな! 最後は『粘り強さ』だ! どの攻撃をかわすか、受け止めるかを見極める! 無限に続く攻撃なんてあるわけがねえ……)
勇次は高松の攻撃をかわしたり、受け止めたりしながら、なんとか凌いでいぐ。
「ちっ……」
今度は高松が舌打ちして、たまらず動きを止める。勇次が目を見開く。
(ここだ!)
「ぐっ⁉」
勇次が金棒を振り下ろす。高松はかわしきれず、右肩にそれを喰らう。
「うむ……相手の息切れのタイミングを狙った良い攻撃だ……」
後方で見ていた御剣が腕を組んで頷く。御盾が叫ぶ。
「いや、呑気に解説しておって良いのか⁉」
「ん?」
「ん?じゃない! 東北管区との戦いが始まってしまったぞ!」
「始まってしまったものは仕方なかろう」
「し、仕方がないって……」
「良い演習だと思えばいい」
「し、しかし……」
「それに思い出したぞ、あの高松とやら……」
御剣が高松を指し示す。御盾が察して頷く。
「あ、ああ……」
「色々と興味深いではないか?」
「其方は良い趣味をしておるわ……」
笑みを浮かべる御剣に対し、御盾が呆れる。
「うぐっ……」
肩を抑えてうずくまる高松に、勇次が声をかける。
「本当は頭を狙ったんですけど、肩にしました。それでも手ごたえはかなりあった。包丁を振り回すことは出来ないはずです。もう終わりにしましょう」
「! ほ、本当は?」
「え?」
「あえて肩を狙ったでいうごどが⁉ 随分とまた舐めぐさりやがって!」
高松がバッと立ち上がる。
「!」
「こごまでコケにされで、もう我慢出来ね!」
「うおっ⁉」
高松が叫ぶと、その体全体を包むように桃色の気が充満し、頭部に角が生える。
「……」
「なっ⁉」
「泣く子はいねーがー⁉ 悪い子はいねーがー⁉」
高松は右手に包丁、左手に背中に背負っていた桶を持ち、勇次に斬りかかる。
「ぬおっ⁉」
「ふん!」
「ちぃっ!」
高松の攻撃をなんとか受け止めた勇次は後方に飛び、御剣と御盾に視線を送る。
「高松幸楽……奴は『なまはげ』の半妖だ!」
「腕を組んで偉そうに叫ぶな! さっきまで忘れておったろう!」
「な、なまはげ……」
「しかし、体がなんというかこう……ふんわりと桃色だな。あれはラーメン屋というか……」
「違うなにかを思い浮かべますよね」
「うおい! 宿敵も鬼ヶ島も呑気なことを言っておる場合か!」
「鬼ヶ島勇次!」
「っと⁉」
高松の攻撃を勇次はまたも受け止める。高松が口角泡を飛ばす。
「おめだけは許せん!」
「お、俺、貴方になにかしましたっけ?」
「鬼の半妖のおめが現れたことによって、こっちは多大なる精神的苦痛を受げだんだ!」
「え、ええっ⁉ どういうことですか?」
勇次は再び高松と距離を取る。高松が話し出す。
「おめの出現によって、やれ『キャラ被っているっすよねw』だどが、やれ『もしかしてジェネリック半妖さんすか?w』だどが言われるようになったんだ! ただでさえ、なまはげと鬼は混同されやすいというのに!」
「……なんだと思ったら……」
「ん⁉」
「単なる逆恨みじゃねえか! 真面目に聞いて損したわ!」
「どおっ⁉」
勇次の体がほんのりと赤くなり、角が生える。神不知火が目を見張る。
「! 調査報告以上の妖力の高まり……これは……」
「うおおっ!」
「ぐはっ⁉」
勇次が金棒を一振りすると、高松は吹き飛ばされる。
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