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第二章
第23話(3) NGワード連呼
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「ふう……着いたかしら?」
「もう少しですね……」
雅の問いに御剣が答える。
「しかし、雅さんがついてくるとはの……」
「それは貴様もだろう……」
御剣が御盾を冷めた視線で見つめる。
「いや、此方がいなければ其方らも困るじゃろう⁉」
「ふん……」
「なにがふん……じゃ! 此方の隊の隊員たちも頭数に入れて作戦を立てているくせに!」
「だから、貴様にはそれぞれの隊員を監督してもらおうと思ったのだが……」
「お守り役は先の東京での任務で懲りたわ!」
御剣は頷きながら呟く。
「貴様の隊の隊員たちは奔放そうだものな……」
「それは其方の隊の隊員たちも一緒じゃ!」
「自分の隊については否定しないのだな……」
「揚げ足を取るでない!」
御剣がため息をつく。
「まあ、ついてきてしまったものは仕方がない……」
「足を引っ張るつもりはないから安心せい、役に立ってみせるぞ」
「私もお役に立つわよ~」
雅が呑気な声を上げる。御盾が尋ねる。
「雅さんの実力は今さら疑いようがありませんが、何故にこちらに?」
「私がいると後々、言い訳がしやすいかなって思って」
「言い訳……例えば?」
「決して揉めたわけではなく、演習の一環でした……とかね」
「無許可の演習など通らんでしょう」
「そこは上手く言いくるめるわよ、光康ちゃん……善川管区長は私には弱いから」
「そう上手くいきますかね……」
御盾は苦笑する。勇次が口を開く。
「それにしても、転移鏡をいくつも伝ってきましたね……」
「本当よ、随分と複雑な場所にあるのね、その研究施設とやらは」
「宿敵よ、よく突き止めたものだな……」
「まあ、優秀な別働隊がいるのでな……」
「別働隊? 隊長、それってもしかして……」
「そこまでです……」
「!」
御剣たちの前に神不知火が姿を現す。
「ここから先は通すわけには参りません」
「ふむ、やはり勘付かれたか……」
「四か所への隊の分散、やはり陽動でしたね。もっとも、その高い霊力三つと……妖力、そうそう隠しきれるものではありません」
「流石だな」
「お褒めにあずかり光栄です」
御剣の言葉に神不知火が頭を下げる。御剣が少し間を空けてから尋ねる。
「……見なかったことにしてはくれないか?」
「何故に?」
「我々はあくまでも鬼ヶ島一美の身柄を取り戻すことが主目的だ。わざわざ争いにやってきたわけではない」
「ふむ……」
神不知火が顎に手を当てて考える。御剣が続ける。
「本格的な衝突となれば、そちらの管区も何らかの処分を受ける可能性が出てくる。それは避けたいだろう?」
「お気遣いはありがたいのですが……まあ、そのあたりはどうとでもなるでしょう」
「何だと?」
「星ノ条管区長が先ほどおっしゃっていた、演習だと言い張る案……悪くないと思います」
「あらいやだ、聞いていたの?」
星ノ条が肩をすくめる。神不知火が続ける。
「加茂上管区長からの命もありますし、それに……」
「それに?」
「上杉山管区長とその宿敵と名高い武枝副管区長、星ノ条管区長、さらに噂の半妖、鬼ヶ島勇次君と戦ってみたい者たちが集まっておりまして……」
「……」
神不知火の背後から四人の男女が姿を現す。御剣が口を開く。
「一つ言っておく……」
「はい?」
神不知火が首を傾げる。御剣が御盾を指し示す。
「こいつは宿敵などではなく、只の腐れ縁だ」
「うおい⁉ 今言うことか、それは⁉」
御剣の発言に御盾が突っ込む。神不知火が再び頭を下げる。
「……それは失礼いたしました」
「ええい、謝らんでいい!」
御盾が声を上げる。
「かみしらさんよお……くだらねえおしゃべりはもういいっつうの……」
所々に紫色のメッシュを入れたショートカットで前髪を斜めに切り揃え、右目に黒い眼帯を付けた主張の強すぎる少女が顎をさすりながら呟く。
「ちゃこさん、そう慌てないで下さい……」
「ちゃこさんって言うなよ!」
「貴女だって人のこと、かみしらさんなんて呼ぶでしょう?」
「長いんだよ、神不知火副管区長って……早口言葉かよ」
「噛まずによく言えましたね」
「からかうな!」
「あの女は確か……」
「伊達仁(だてに)隊隊長伊達仁茶々子(だてにちゃちゃこ)……管区長の座を虎視眈々と狙っているとかいないとか……」
御剣の横で御盾が囁く。
「お待たせしましたか?」
「いえ、お気になさらず……」
神不知火が隊服ではなく、着物姿の男女に声をかける。男女はそれぞれ黒い髪色で、整った短髪とロングヘア―をしており、身長差が多少あるが、顔立ちがそっくりである。
「あの双子は確か……」
「峰重(みねしげ)隊隊長と副隊長の峰重由衣(みねしげゆい)と峰重史人(みねしげふみと)じゃ。由衣が姉で、背の高い史人が弟」
「僕たちよりも、こちらがお怒りのようです」
史人が自分の傍らに立つ、ロングヘアーをセンター分けにした男性を指し示す。
「あら? そうですか、ごめんなさい、高松隊長。おしゃべりが過ぎたようで……」
「別にそれはえんだども……」
「あの男は確か……」
「高松(たかまつ)隊隊長、高松幸楽(たかまつこうらく)じゃ……ってか、なにも調べておらんのだな、其方……」
御盾が呆れる。その横で雅が感心したように呟く。
「宮城県や青森県、秋田県に拠点を持つ、東北管区の有力隊長さんがほぼお揃いね……」
「幸楽……ラーメン屋みたいだな」
「! 宿敵! ラーメン屋はNGワードじゃ!」
「ラーメン屋行きたくなってきました」
「鬼ヶ島もやめんか! ラーメン屋とだけは言ってはならん!」
「……人が気にしてらごどを!」
「高松さん!」
神不知火の制止を振り切り、高松が勇次に襲いかかる。
「もう少しですね……」
雅の問いに御剣が答える。
「しかし、雅さんがついてくるとはの……」
「それは貴様もだろう……」
御剣が御盾を冷めた視線で見つめる。
「いや、此方がいなければ其方らも困るじゃろう⁉」
「ふん……」
「なにがふん……じゃ! 此方の隊の隊員たちも頭数に入れて作戦を立てているくせに!」
「だから、貴様にはそれぞれの隊員を監督してもらおうと思ったのだが……」
「お守り役は先の東京での任務で懲りたわ!」
御剣は頷きながら呟く。
「貴様の隊の隊員たちは奔放そうだものな……」
「それは其方の隊の隊員たちも一緒じゃ!」
「自分の隊については否定しないのだな……」
「揚げ足を取るでない!」
御剣がため息をつく。
「まあ、ついてきてしまったものは仕方がない……」
「足を引っ張るつもりはないから安心せい、役に立ってみせるぞ」
「私もお役に立つわよ~」
雅が呑気な声を上げる。御盾が尋ねる。
「雅さんの実力は今さら疑いようがありませんが、何故にこちらに?」
「私がいると後々、言い訳がしやすいかなって思って」
「言い訳……例えば?」
「決して揉めたわけではなく、演習の一環でした……とかね」
「無許可の演習など通らんでしょう」
「そこは上手く言いくるめるわよ、光康ちゃん……善川管区長は私には弱いから」
「そう上手くいきますかね……」
御盾は苦笑する。勇次が口を開く。
「それにしても、転移鏡をいくつも伝ってきましたね……」
「本当よ、随分と複雑な場所にあるのね、その研究施設とやらは」
「宿敵よ、よく突き止めたものだな……」
「まあ、優秀な別働隊がいるのでな……」
「別働隊? 隊長、それってもしかして……」
「そこまでです……」
「!」
御剣たちの前に神不知火が姿を現す。
「ここから先は通すわけには参りません」
「ふむ、やはり勘付かれたか……」
「四か所への隊の分散、やはり陽動でしたね。もっとも、その高い霊力三つと……妖力、そうそう隠しきれるものではありません」
「流石だな」
「お褒めにあずかり光栄です」
御剣の言葉に神不知火が頭を下げる。御剣が少し間を空けてから尋ねる。
「……見なかったことにしてはくれないか?」
「何故に?」
「我々はあくまでも鬼ヶ島一美の身柄を取り戻すことが主目的だ。わざわざ争いにやってきたわけではない」
「ふむ……」
神不知火が顎に手を当てて考える。御剣が続ける。
「本格的な衝突となれば、そちらの管区も何らかの処分を受ける可能性が出てくる。それは避けたいだろう?」
「お気遣いはありがたいのですが……まあ、そのあたりはどうとでもなるでしょう」
「何だと?」
「星ノ条管区長が先ほどおっしゃっていた、演習だと言い張る案……悪くないと思います」
「あらいやだ、聞いていたの?」
星ノ条が肩をすくめる。神不知火が続ける。
「加茂上管区長からの命もありますし、それに……」
「それに?」
「上杉山管区長とその宿敵と名高い武枝副管区長、星ノ条管区長、さらに噂の半妖、鬼ヶ島勇次君と戦ってみたい者たちが集まっておりまして……」
「……」
神不知火の背後から四人の男女が姿を現す。御剣が口を開く。
「一つ言っておく……」
「はい?」
神不知火が首を傾げる。御剣が御盾を指し示す。
「こいつは宿敵などではなく、只の腐れ縁だ」
「うおい⁉ 今言うことか、それは⁉」
御剣の発言に御盾が突っ込む。神不知火が再び頭を下げる。
「……それは失礼いたしました」
「ええい、謝らんでいい!」
御盾が声を上げる。
「かみしらさんよお……くだらねえおしゃべりはもういいっつうの……」
所々に紫色のメッシュを入れたショートカットで前髪を斜めに切り揃え、右目に黒い眼帯を付けた主張の強すぎる少女が顎をさすりながら呟く。
「ちゃこさん、そう慌てないで下さい……」
「ちゃこさんって言うなよ!」
「貴女だって人のこと、かみしらさんなんて呼ぶでしょう?」
「長いんだよ、神不知火副管区長って……早口言葉かよ」
「噛まずによく言えましたね」
「からかうな!」
「あの女は確か……」
「伊達仁(だてに)隊隊長伊達仁茶々子(だてにちゃちゃこ)……管区長の座を虎視眈々と狙っているとかいないとか……」
御剣の横で御盾が囁く。
「お待たせしましたか?」
「いえ、お気になさらず……」
神不知火が隊服ではなく、着物姿の男女に声をかける。男女はそれぞれ黒い髪色で、整った短髪とロングヘア―をしており、身長差が多少あるが、顔立ちがそっくりである。
「あの双子は確か……」
「峰重(みねしげ)隊隊長と副隊長の峰重由衣(みねしげゆい)と峰重史人(みねしげふみと)じゃ。由衣が姉で、背の高い史人が弟」
「僕たちよりも、こちらがお怒りのようです」
史人が自分の傍らに立つ、ロングヘアーをセンター分けにした男性を指し示す。
「あら? そうですか、ごめんなさい、高松隊長。おしゃべりが過ぎたようで……」
「別にそれはえんだども……」
「あの男は確か……」
「高松(たかまつ)隊隊長、高松幸楽(たかまつこうらく)じゃ……ってか、なにも調べておらんのだな、其方……」
御盾が呆れる。その横で雅が感心したように呟く。
「宮城県や青森県、秋田県に拠点を持つ、東北管区の有力隊長さんがほぼお揃いね……」
「幸楽……ラーメン屋みたいだな」
「! 宿敵! ラーメン屋はNGワードじゃ!」
「ラーメン屋行きたくなってきました」
「鬼ヶ島もやめんか! ラーメン屋とだけは言ってはならん!」
「……人が気にしてらごどを!」
「高松さん!」
神不知火の制止を振り切り、高松が勇次に襲いかかる。
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