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第二章
第15話(4) トンネル内の高速バトル
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「な、なんだ、うおっ! レーダーが反応した!」
勇次が腕に巻いた妖レーダーが激しく振動したことに驚く。
「考え通りだ! 高速で走るものにちょっかいをかける妖だな!」
「す、少し、スピード緩めないか⁉」
「ダメだ! 今言っただろう! 高速を維持しないと尻尾を掴めねえんだ! また仕掛けてきやがったら、その方向に向けて金棒を思いっ切り振れ!」
「わ、分かった!」
やや間が空いて、千景が叫ぶ。
「来るぞ!」
再び何かがキラっと光り、勇次に襲いかかる。
「ちっ! おらあっ!」
勇次は攻撃を弾くとほぼ同時に金棒を振る。
「!」
千景たちの目の前に紫色の空間が引き裂かれたように広がる。
「こ、これは……狭世⁉」
「特殊な奴だな! 突っ込むぞ!」
「うおおっ⁉」
千景はバイクの前輪を上げる。いわゆるウィリー体勢となって、突如目の前に発生した狭世に突っ込んでいく。
「恐らくはこの長いトンネルがまんま狭世になっているんだろうな……恐らく、トンネルの出口にさしかかるまで、またちょっかいをかけてくるはず……そこを反撃する!」
「こんな高速で走るバイクについてこれるのか……ってうおっ!」
三度、勇次に襲いかかるものがあった。勇次は金棒でそれを受け止め、襲ってくるものの正体を確かめて、驚いた。
「ば、婆さん⁉」
なんと、手押し車を押しながら高速で走る老婆が金槌を振り回してきたのである。
「へっ、最大速度140キロってのもどうやら本当みてえだな」
「ち、千景! なんだこの婆さんは⁉」
「『ターボばあちゃん』だ!」
「タ、ターボばあちゃん⁉ す、凄えスピードだぞ⁉」
「そりゃあそうだよ、なんてったってターボばあちゃんだからな」
「だからなんなんだよ! 人間じゃねえのか⁉」
「こんな高速で走るばあちゃんがいるかよ!」
「妖なのか⁉」
「現代にその存在が確認された妖だ! 例えば車と並走してドライバーを驚かせるくらいで危害を加えるということなどは無く、全くの無害な妖だって話だけどな!」
ターボばあちゃんが金槌を乱暴に振り回す。勇次は金棒でなんとか受け止める。
「め、めちゃくちゃ危害を加えようとしてきているぞ⁉」
「一説には山姥の派生だとする説もある!」
「こ、この際、学説はどうでもいい!」
「凶暴化してきているのかもな、いよいよもって根絶対象だな! やっちまえ!」
「見た目は普通の婆さんを倒すのは気が進まないが、仕方がねえ!」
防戦一方だった勇次が金棒を振る。
「‼」
「ちっ! 後ろに下がった!」
ターボばあちゃんはスピードを下げ、後退した後、すぐさま加速して千景たちの右側に回って、今度は千景に殴りかかろうとする。
「!」
「どおっ!」
「千景! 大丈夫か!」
「ああ! だが、運転で手が離せねえところを!」
「くそっ! そっちに回り込まれたら手が出せねえ!」
勇次が悔しそうに叫ぶと、ターボばあちゃんが再び金槌を振りかぶる。
「ちっ! 今度はしっかり狙いを定めてやがる!」
「千景!」
「……これだ!」
「⁉」
「うおっ⁉」
ターボばあちゃんの金槌は空を切った。千景たちのサイドカーがトンネルの側壁を走り始めたからである。
「へへっ! 一度やってみたかったんだよ!」
「む、無茶するな!」
「さ~て、ターボばあちゃん! 上を取らせてもらったぜ!」
「……!」
「喰らいやがれ!」
「‼」
千景の繰り出した右足のキックを喰らい、ターボばあちゃんの首は吹っ飛び、その姿は霧消した。千景はサイドカーを道路に復帰させる。
「へっ! 一丁上がり!」
「やったな! ……ん⁉」
「どうした! ぐおっ⁉」
千景が運転しながらも俯く。右肩を殴られたからである。そこには金槌を持ち、手押し車を押しながら高速で走る老爺の姿があったのだ。勇次が戸惑う。
「こ、こいつは……?」
「『ターボじいちゃん』だ!」
「こ、今度はじいちゃんかよ!」
ターボじいちゃんは金槌を振りかぶる。
「くっ、右腕を潰しにくる気か⁉ 片腕を失ったら運転が……!」
「!」
「ちぃ!」
「させるかよ!」
「ゆ、勇次⁉」
千景は驚く。なんと勇次がサイドカーから飛び降りて、高速でターボじいちゃんと並走し始めたからである。
「うおおおおっ!」
「勇次、お前何やってんだ! また体がほんのり赤くなってんぞ⁉」
「分からん! 気が付いたら体が動いていた!」
「こ、これも鬼の半妖の血がなせる業なのか……?」
並走しながらターボじいちゃんと勇次は激しく武器を打ち合う。
「ちっ、走るのに精一杯で決め手に欠ける! ぐっ⁉」
勇次がバランスを崩し、転びそうになる。
「勇次! やっぱりその速度を維持するのは無理があるんだ!」
「……」
ターボじいちゃんが金槌を振りかぶる。勇次が舌打ちする。
「くっ、避けきれねえ! ⁉」
「⁉」
次の瞬間、後方から猛烈な勢いで突っ込んできた車がターボじいちゃんを吹き飛ばす。
「火場ちゃんか⁉」
「すまん、遅れた! 仕掛けるタイミングがなかなか難しくてな!」
「だからって、無茶するなあ……」
「どわあああっ!」
バランスを崩した勇次が前方に転がる。火場が半身を乗り出して叫ぶ。
「掴まれ!」
「うおおっ! ……た、助かった……」
「勇次! てめえ、なにやってやがる!」
「な、何って……うわあ!」
「掴まれとは言ったが、まさかそこを掴むとは……なかなか情熱的だな」
勇次の両手は火場のたわわな胸をがっしりと掴んでいた。火場は顔を赤らめる。
勇次が腕に巻いた妖レーダーが激しく振動したことに驚く。
「考え通りだ! 高速で走るものにちょっかいをかける妖だな!」
「す、少し、スピード緩めないか⁉」
「ダメだ! 今言っただろう! 高速を維持しないと尻尾を掴めねえんだ! また仕掛けてきやがったら、その方向に向けて金棒を思いっ切り振れ!」
「わ、分かった!」
やや間が空いて、千景が叫ぶ。
「来るぞ!」
再び何かがキラっと光り、勇次に襲いかかる。
「ちっ! おらあっ!」
勇次は攻撃を弾くとほぼ同時に金棒を振る。
「!」
千景たちの目の前に紫色の空間が引き裂かれたように広がる。
「こ、これは……狭世⁉」
「特殊な奴だな! 突っ込むぞ!」
「うおおっ⁉」
千景はバイクの前輪を上げる。いわゆるウィリー体勢となって、突如目の前に発生した狭世に突っ込んでいく。
「恐らくはこの長いトンネルがまんま狭世になっているんだろうな……恐らく、トンネルの出口にさしかかるまで、またちょっかいをかけてくるはず……そこを反撃する!」
「こんな高速で走るバイクについてこれるのか……ってうおっ!」
三度、勇次に襲いかかるものがあった。勇次は金棒でそれを受け止め、襲ってくるものの正体を確かめて、驚いた。
「ば、婆さん⁉」
なんと、手押し車を押しながら高速で走る老婆が金槌を振り回してきたのである。
「へっ、最大速度140キロってのもどうやら本当みてえだな」
「ち、千景! なんだこの婆さんは⁉」
「『ターボばあちゃん』だ!」
「タ、ターボばあちゃん⁉ す、凄えスピードだぞ⁉」
「そりゃあそうだよ、なんてったってターボばあちゃんだからな」
「だからなんなんだよ! 人間じゃねえのか⁉」
「こんな高速で走るばあちゃんがいるかよ!」
「妖なのか⁉」
「現代にその存在が確認された妖だ! 例えば車と並走してドライバーを驚かせるくらいで危害を加えるということなどは無く、全くの無害な妖だって話だけどな!」
ターボばあちゃんが金槌を乱暴に振り回す。勇次は金棒でなんとか受け止める。
「め、めちゃくちゃ危害を加えようとしてきているぞ⁉」
「一説には山姥の派生だとする説もある!」
「こ、この際、学説はどうでもいい!」
「凶暴化してきているのかもな、いよいよもって根絶対象だな! やっちまえ!」
「見た目は普通の婆さんを倒すのは気が進まないが、仕方がねえ!」
防戦一方だった勇次が金棒を振る。
「‼」
「ちっ! 後ろに下がった!」
ターボばあちゃんはスピードを下げ、後退した後、すぐさま加速して千景たちの右側に回って、今度は千景に殴りかかろうとする。
「!」
「どおっ!」
「千景! 大丈夫か!」
「ああ! だが、運転で手が離せねえところを!」
「くそっ! そっちに回り込まれたら手が出せねえ!」
勇次が悔しそうに叫ぶと、ターボばあちゃんが再び金槌を振りかぶる。
「ちっ! 今度はしっかり狙いを定めてやがる!」
「千景!」
「……これだ!」
「⁉」
「うおっ⁉」
ターボばあちゃんの金槌は空を切った。千景たちのサイドカーがトンネルの側壁を走り始めたからである。
「へへっ! 一度やってみたかったんだよ!」
「む、無茶するな!」
「さ~て、ターボばあちゃん! 上を取らせてもらったぜ!」
「……!」
「喰らいやがれ!」
「‼」
千景の繰り出した右足のキックを喰らい、ターボばあちゃんの首は吹っ飛び、その姿は霧消した。千景はサイドカーを道路に復帰させる。
「へっ! 一丁上がり!」
「やったな! ……ん⁉」
「どうした! ぐおっ⁉」
千景が運転しながらも俯く。右肩を殴られたからである。そこには金槌を持ち、手押し車を押しながら高速で走る老爺の姿があったのだ。勇次が戸惑う。
「こ、こいつは……?」
「『ターボじいちゃん』だ!」
「こ、今度はじいちゃんかよ!」
ターボじいちゃんは金槌を振りかぶる。
「くっ、右腕を潰しにくる気か⁉ 片腕を失ったら運転が……!」
「!」
「ちぃ!」
「させるかよ!」
「ゆ、勇次⁉」
千景は驚く。なんと勇次がサイドカーから飛び降りて、高速でターボじいちゃんと並走し始めたからである。
「うおおおおっ!」
「勇次、お前何やってんだ! また体がほんのり赤くなってんぞ⁉」
「分からん! 気が付いたら体が動いていた!」
「こ、これも鬼の半妖の血がなせる業なのか……?」
並走しながらターボじいちゃんと勇次は激しく武器を打ち合う。
「ちっ、走るのに精一杯で決め手に欠ける! ぐっ⁉」
勇次がバランスを崩し、転びそうになる。
「勇次! やっぱりその速度を維持するのは無理があるんだ!」
「……」
ターボじいちゃんが金槌を振りかぶる。勇次が舌打ちする。
「くっ、避けきれねえ! ⁉」
「⁉」
次の瞬間、後方から猛烈な勢いで突っ込んできた車がターボじいちゃんを吹き飛ばす。
「火場ちゃんか⁉」
「すまん、遅れた! 仕掛けるタイミングがなかなか難しくてな!」
「だからって、無茶するなあ……」
「どわあああっ!」
バランスを崩した勇次が前方に転がる。火場が半身を乗り出して叫ぶ。
「掴まれ!」
「うおおっ! ……た、助かった……」
「勇次! てめえ、なにやってやがる!」
「な、何って……うわあ!」
「掴まれとは言ったが、まさかそこを掴むとは……なかなか情熱的だな」
勇次の両手は火場のたわわな胸をがっしりと掴んでいた。火場は顔を赤らめる。
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