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チャプター1
第1話(4)第4世代の光
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「え?」
「いや、え? じゃなくて、何がどうなってフンドシ一丁って状態になんねん⁉」
「馬鹿! そんなこと気にしている場合か!」
「阿呆に馬鹿って言われた!」
「来るぞ!」
「いや疑問に答えろや……ってうおおおっ⁉」
怪獣が尻尾による攻撃を繰り出してきた。大洋は機体の左腕をを操作してガードの体勢を取るが、衝撃を受け止めきれず、真横に吹っ飛ばされる。金色の機体は二、三回転がって立膝を突く。
「くっ、厄介な尻尾だな……」
「嫌あああっ!」
隼子が悲鳴を上げる。
「どうした⁉」
「どうしたもこうしたもあるかい! なんでアンタの股間を至近距離で見なアカンのや⁉」
「それはお前が逆さまの体勢になっているからだろう」
「冷静なことで!」
「悪いがちょっと邪魔だ。シートの後ろにでも捕まっていてくれ」
大洋が右手の親指で自らの後方を指し示す。隼子はどうにか体勢を立て直して、言われた通りにシートの後ろへと移動した。呼吸を落ち着かせてから大洋に尋ねる。
「大洋、アンタ操縦できたんか⁉」
「どうやらそうみたいだな!」
「パイロットだったんか?」
「覚えてないが、体の方が覚えているようだ!」
「この機体はあの幌を被っていたやつか?」
「そうだ!」
「一体、何なんや、コイツは?」
「それは分からん!」
「分からんのかい⁉」
そこに、大松から通信が入る。
「隼子! 無事だったとね!」
「大松さん! ナイスタイミング! 聞きたいことが……」
「いや、オイにもよく分からんが、突然何ごとか叫んだかと思ったら、おもむろに服を脱ぎ始めたばい……」
「半裸になった経緯はどうでもいいんですよ! いや、気にはなるけども! それよりもこの機体! 何なんですかコイツは?」
「そいつは我が社が約17年前に開発した戦闘ロボット、『光(こう)』ばい!」
「17年前って……第4世代の機体やないですか⁉ 今はもう第7世代ですよ!」
「なんの! カタログスペックは十分ばい!」
「ああ、コイツならやれる!」
大洋が操縦桿を操りながら叫ぶ。
「そうなんか⁉」
「……そんな気がする!」
「いや、確証ないんかい!」
そこに怪獣が再び尻尾で薙ぎ払ってきた。大洋は光の背面バーニアを噴出させ、飛び上がってその攻撃を躱した。隼子が感心する。
「よく躱したな!」
「確かにジャンプ力、推進力ともに十分だ! これで一気に間合いを詰める!」
大洋が再びバーニアを噴出させ、光を怪獣に接近させる。
「懐に入った!」
「よし! これで……」
大洋は光の右肘部分からブレードを突き出して、怪獣の胸部を攻撃する。
「やったか⁉」
「いや……浅い!」
大洋の言葉通り、光のブレードは怪獣の厚い皮膚に深く突き刺さった訳では無かった。
怪獣がその左手を光に叩き付ける。光は再び吹っ飛ばされた。
「ぐっ!」
大洋はすぐさま機体を起こす。今度も咄嗟に右腕でガードを取ったため、胴体への直撃は何とか避けられた。シートにしがみつき、再び逆さまの状態になるのを堪えた隼子が大洋に声を掛ける。
「なんぼ巨大怪獣でも生き物ならば、心臓、またはそれみたいなもんが必ずあるはずや。胸部や腹部を狙った攻撃は悪くない判断やと思うで!」
「だが、このブレードではあの分厚い皮膚を破れん!」
「困った時の事情通や!」
隼子がシートの後ろから右腕を伸ばし、コントロールパネルを操作して通信回線を開く。
「大松さん! 戦況は確認してますやろ⁉」
「ああ! 勿論ばい!」
「なんかないんですか! この光に他の武装は⁉」
「頭部の額の辺りにバルカン砲が……いや、今は弾を込めておらんばい……」
怪獣がまたも尻尾を振り上げた。隼子がもはや悲鳴に近い声を上げる。
「うわあ、また尻尾ビンタが来るで!」
「ちっ……マズいな!」
「ど、どないしたん⁉」
「バーニアに異常発生だ! これではあの素早い攻撃を躱せん!」
「スマン……近々定期点検を行うつもりだったんやが……」
スピーカーから大松の申し訳なさそうな声が聴こえてくる。それに対して隼子が悲痛な叫び声を上げる。
「いや、そこで謝られても!」
「諦めるな!」
「⁉ 大洋……」
「諦めなければ絶対に活路は開ける!」
「そ、そない言うてもやな~ああっ、来るで!」
隼子が前方を指差す。怪獣が尻尾を勢いよく振り下ろしてきた。光を上から叩き潰そうという狙いである。
「……そうや! 大洋! 左脚部ばい!」
「!」
大松の声に反応した大洋が瞬時にコントロールパネルを操作する。しかし、怪獣の尻尾がすぐ眼前まで迫ってきた。隼子はまたしても目を瞑った。
「……ん? あ、あれ? ペシャンコになってへん……って、ええっ⁉」
隼子は目を疑った。前方のメインモニター画面一面に怪獣の尻尾の断面が広がっていたからである。
「ど、どういうこっちゃ? 尻尾は?」
「斬った」
「斬ったって……あ、あれは⁉」
隼子は周りを見渡すと、光の右手に鋼鉄製の巨大な刀が握られており、さらにその先には、斬りおとされた怪獣の尻尾が転がっていた。
「こ、これは……?」
戸惑う隼子に、大洋が振り返って説明する。
「オレ、キッタ、シッポ、カタナデ」
「そりゃ分かっとるわ! なんで急にカタコトになんねん! 聞きたいのは……」
「それが光の主武装、名刀・光宗(みつむね)ばい!」
スピーカーから大松の誇らしげな声が聴こえてくる。
「名刀・光宗……」
「左脚部の太腿辺りに収納されていた。抜刀術の要領で刀を抜き取ると同時に、あの尻尾を斬りおとした」
「さ、さよか……」
「咄嗟のことだったが、上手くいって良かった。大した切れ味だな」
大洋は刀身をまじまじと見つめる。すると怪獣が低く唸り声を上げる。
「尻尾斬られて逆上しとる!」
怪獣が右腕を振りかぶった。
「爪で引っ掻いてくるで! 受け止めるか⁉」
「……いや、ここは!」
怪獣が思い切り右腕を振り下ろしてきた。だが、光は宙に飛んで、その一撃を躱した。
「攻撃あるのみだ!」
「やっぱりバーニアが壊れとる! 頭を狙うなら高さが足りん!」
「十分だ!」
光は両手で刀を掴み、大きく振りかぶった。
「喰らえ! 大袈裟切り‼」
光は刀を怪獣の左肩から右太腿辺りにかけて斜めに一気に振り下ろした。次の瞬間、怪獣の体は二つに別れ、地上にボトリと落ちた。怪獣が動かなくなったことを確認し、光は刀を脚部に収納した。
「か、勝ったんか……?」
「ああ」
「……」
「隼子?」
「うわあああ! 良かった~! ホンマに死ぬかと思った~!」
隼子はほとんど泣き叫びながら、前方に座る大洋に抱き付いた。
「ありがとう、大洋! アンタは命の恩人や~ホンマおおきに~」
「わ、分かったから離してくれ、く、首が締まって……」
数時間後、防衛軍が到着し、怪獣の死骸の回収を開始した。大洋たちはその様子を格納庫から眺めていた。
「何でこそこそ隠れる必要があるんです?」
隼子が光を見上げながら、大松に尋ねる。
「いや、諸々の事情があるばい。今はまだこの機体のことは秘密にしておきたいと」
「ふ~ん、あ、そうや大洋」
隼子は傍らに立つ大洋に話しかける。
「何だ?」
「アンタ、落下してきた時もフンドシ一丁やったな、コックピットに座るときはフンドシ姿になる……この一見奇矯な行動にアンタの記憶を取り戻す鍵があるんとちゃうか?」
「いや……残念だが恐らく違う気がする」
「え?」
「これは多分、単なる俺の性癖だと思う。何故ならその方が妙に落ち着くからな」
「ホンマにただの変態やないか!」
ギャーギャーと騒ぐ隼子たちを物陰から一人の少女が見つめていた。
「イレギュラーな事態だったけど、良いデータが取れたわ……疾風大洋、サンキューね」
「いや、え? じゃなくて、何がどうなってフンドシ一丁って状態になんねん⁉」
「馬鹿! そんなこと気にしている場合か!」
「阿呆に馬鹿って言われた!」
「来るぞ!」
「いや疑問に答えろや……ってうおおおっ⁉」
怪獣が尻尾による攻撃を繰り出してきた。大洋は機体の左腕をを操作してガードの体勢を取るが、衝撃を受け止めきれず、真横に吹っ飛ばされる。金色の機体は二、三回転がって立膝を突く。
「くっ、厄介な尻尾だな……」
「嫌あああっ!」
隼子が悲鳴を上げる。
「どうした⁉」
「どうしたもこうしたもあるかい! なんでアンタの股間を至近距離で見なアカンのや⁉」
「それはお前が逆さまの体勢になっているからだろう」
「冷静なことで!」
「悪いがちょっと邪魔だ。シートの後ろにでも捕まっていてくれ」
大洋が右手の親指で自らの後方を指し示す。隼子はどうにか体勢を立て直して、言われた通りにシートの後ろへと移動した。呼吸を落ち着かせてから大洋に尋ねる。
「大洋、アンタ操縦できたんか⁉」
「どうやらそうみたいだな!」
「パイロットだったんか?」
「覚えてないが、体の方が覚えているようだ!」
「この機体はあの幌を被っていたやつか?」
「そうだ!」
「一体、何なんや、コイツは?」
「それは分からん!」
「分からんのかい⁉」
そこに、大松から通信が入る。
「隼子! 無事だったとね!」
「大松さん! ナイスタイミング! 聞きたいことが……」
「いや、オイにもよく分からんが、突然何ごとか叫んだかと思ったら、おもむろに服を脱ぎ始めたばい……」
「半裸になった経緯はどうでもいいんですよ! いや、気にはなるけども! それよりもこの機体! 何なんですかコイツは?」
「そいつは我が社が約17年前に開発した戦闘ロボット、『光(こう)』ばい!」
「17年前って……第4世代の機体やないですか⁉ 今はもう第7世代ですよ!」
「なんの! カタログスペックは十分ばい!」
「ああ、コイツならやれる!」
大洋が操縦桿を操りながら叫ぶ。
「そうなんか⁉」
「……そんな気がする!」
「いや、確証ないんかい!」
そこに怪獣が再び尻尾で薙ぎ払ってきた。大洋は光の背面バーニアを噴出させ、飛び上がってその攻撃を躱した。隼子が感心する。
「よく躱したな!」
「確かにジャンプ力、推進力ともに十分だ! これで一気に間合いを詰める!」
大洋が再びバーニアを噴出させ、光を怪獣に接近させる。
「懐に入った!」
「よし! これで……」
大洋は光の右肘部分からブレードを突き出して、怪獣の胸部を攻撃する。
「やったか⁉」
「いや……浅い!」
大洋の言葉通り、光のブレードは怪獣の厚い皮膚に深く突き刺さった訳では無かった。
怪獣がその左手を光に叩き付ける。光は再び吹っ飛ばされた。
「ぐっ!」
大洋はすぐさま機体を起こす。今度も咄嗟に右腕でガードを取ったため、胴体への直撃は何とか避けられた。シートにしがみつき、再び逆さまの状態になるのを堪えた隼子が大洋に声を掛ける。
「なんぼ巨大怪獣でも生き物ならば、心臓、またはそれみたいなもんが必ずあるはずや。胸部や腹部を狙った攻撃は悪くない判断やと思うで!」
「だが、このブレードではあの分厚い皮膚を破れん!」
「困った時の事情通や!」
隼子がシートの後ろから右腕を伸ばし、コントロールパネルを操作して通信回線を開く。
「大松さん! 戦況は確認してますやろ⁉」
「ああ! 勿論ばい!」
「なんかないんですか! この光に他の武装は⁉」
「頭部の額の辺りにバルカン砲が……いや、今は弾を込めておらんばい……」
怪獣がまたも尻尾を振り上げた。隼子がもはや悲鳴に近い声を上げる。
「うわあ、また尻尾ビンタが来るで!」
「ちっ……マズいな!」
「ど、どないしたん⁉」
「バーニアに異常発生だ! これではあの素早い攻撃を躱せん!」
「スマン……近々定期点検を行うつもりだったんやが……」
スピーカーから大松の申し訳なさそうな声が聴こえてくる。それに対して隼子が悲痛な叫び声を上げる。
「いや、そこで謝られても!」
「諦めるな!」
「⁉ 大洋……」
「諦めなければ絶対に活路は開ける!」
「そ、そない言うてもやな~ああっ、来るで!」
隼子が前方を指差す。怪獣が尻尾を勢いよく振り下ろしてきた。光を上から叩き潰そうという狙いである。
「……そうや! 大洋! 左脚部ばい!」
「!」
大松の声に反応した大洋が瞬時にコントロールパネルを操作する。しかし、怪獣の尻尾がすぐ眼前まで迫ってきた。隼子はまたしても目を瞑った。
「……ん? あ、あれ? ペシャンコになってへん……って、ええっ⁉」
隼子は目を疑った。前方のメインモニター画面一面に怪獣の尻尾の断面が広がっていたからである。
「ど、どういうこっちゃ? 尻尾は?」
「斬った」
「斬ったって……あ、あれは⁉」
隼子は周りを見渡すと、光の右手に鋼鉄製の巨大な刀が握られており、さらにその先には、斬りおとされた怪獣の尻尾が転がっていた。
「こ、これは……?」
戸惑う隼子に、大洋が振り返って説明する。
「オレ、キッタ、シッポ、カタナデ」
「そりゃ分かっとるわ! なんで急にカタコトになんねん! 聞きたいのは……」
「それが光の主武装、名刀・光宗(みつむね)ばい!」
スピーカーから大松の誇らしげな声が聴こえてくる。
「名刀・光宗……」
「左脚部の太腿辺りに収納されていた。抜刀術の要領で刀を抜き取ると同時に、あの尻尾を斬りおとした」
「さ、さよか……」
「咄嗟のことだったが、上手くいって良かった。大した切れ味だな」
大洋は刀身をまじまじと見つめる。すると怪獣が低く唸り声を上げる。
「尻尾斬られて逆上しとる!」
怪獣が右腕を振りかぶった。
「爪で引っ掻いてくるで! 受け止めるか⁉」
「……いや、ここは!」
怪獣が思い切り右腕を振り下ろしてきた。だが、光は宙に飛んで、その一撃を躱した。
「攻撃あるのみだ!」
「やっぱりバーニアが壊れとる! 頭を狙うなら高さが足りん!」
「十分だ!」
光は両手で刀を掴み、大きく振りかぶった。
「喰らえ! 大袈裟切り‼」
光は刀を怪獣の左肩から右太腿辺りにかけて斜めに一気に振り下ろした。次の瞬間、怪獣の体は二つに別れ、地上にボトリと落ちた。怪獣が動かなくなったことを確認し、光は刀を脚部に収納した。
「か、勝ったんか……?」
「ああ」
「……」
「隼子?」
「うわあああ! 良かった~! ホンマに死ぬかと思った~!」
隼子はほとんど泣き叫びながら、前方に座る大洋に抱き付いた。
「ありがとう、大洋! アンタは命の恩人や~ホンマおおきに~」
「わ、分かったから離してくれ、く、首が締まって……」
数時間後、防衛軍が到着し、怪獣の死骸の回収を開始した。大洋たちはその様子を格納庫から眺めていた。
「何でこそこそ隠れる必要があるんです?」
隼子が光を見上げながら、大松に尋ねる。
「いや、諸々の事情があるばい。今はまだこの機体のことは秘密にしておきたいと」
「ふ~ん、あ、そうや大洋」
隼子は傍らに立つ大洋に話しかける。
「何だ?」
「アンタ、落下してきた時もフンドシ一丁やったな、コックピットに座るときはフンドシ姿になる……この一見奇矯な行動にアンタの記憶を取り戻す鍵があるんとちゃうか?」
「いや……残念だが恐らく違う気がする」
「え?」
「これは多分、単なる俺の性癖だと思う。何故ならその方が妙に落ち着くからな」
「ホンマにただの変態やないか!」
ギャーギャーと騒ぐ隼子たちを物陰から一人の少女が見つめていた。
「イレギュラーな事態だったけど、良いデータが取れたわ……疾風大洋、サンキューね」
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