58 / 62
チャプター2
第15話(4)次元を超えるイタコ
しおりを挟む
「いわゆる巫女さんの恰好とはまたちょっと違うような……」
「青い袴だしね」
舞の言葉にアイスが頷く。りんごが頭を掻く。
「まあ、ちょっとしたオリジナリティっていうか……本当は袴もわざわざ穿かなくてもいいんすけど、雰囲気づくりの一環というが……」
「色々と工夫してるのね……」
「そうだよ~地元ヒーローは一日にしてならず!ってね~」
舞が感心する横でアイスが腕を組んで頷く。ドトウが叫ぶ。
「そんなことより、アイツをどうするのよ!」
ドトウが巨大な竜を指差す。レオイが笑う。
「まあ、レベルも初期の段階で、強ボスと遭遇してしまうのもよくある話だ……」
「そんな、ちょっと前のRPGじゃないんだから!」
アイスが声を上げる。レオイが手を掲げて叫ぶ。
「喰らえ!」
巨大な竜が大きな氷塊を吐き出す。
「ぐおっ⁉」
「お兄ちゃん⁉」
ジンライが氷塊に弾き飛ばされる。
「う、打ち砕こうとしたが、硬いな……それにあのスピード……厄介だ」
「ははっ! どんどん行くぞ!」
レオイの言葉通り、氷塊が次々と吐き出される。
「くっ! 受け止めようとするのは難しい、各自回避行動を取れ!」
「舞! りんごちゃん!」
「ドトウサマ!」
アイスが舞とりんごを両脇に抱え、滑りながら氷塊の雨をかわす。ドトウもドッポに乗り込んで、一旦距離を取る。それでも氷塊は学園のグラウンドに降り注ぎ続ける。
「ちっ、どうするか……」
氷塊を回避しながら、ジンライは舌打ちをする。
「吹けよ、疾風! 迫れ、怒涛! 疾風怒涛、参上! 邪な野望はアタシがぶっ壊す‼」
ドトウが疾風怒涛に変身する。
「どうするつもりだ、ドトウ⁉」
「こうするつもりよ!」
「なっ⁉」
疾風怒涛が降り注ぐ氷塊を足場代わりにして、器用にジャンプしていき、巨大な竜に迫る。
「う、うまい! 竜の懐に入れる!」
「アクションアールピージーノヨウリョウデスネ」
舞とドッポが感心している内に、疾風怒涛が竜に接近する。
「生憎、巨大なモンスターを相手にした経験は少ないけど、生き物ならば喉元搔っ切ればそれで終いでしょう⁉」
「甘いな!」
「⁉」
突然、猛吹雪が吹き、疾風怒涛はそれに押し流され、地面に落下する。ジンライが叫ぶ。
「ドトウ!」
「な、なんとか、大丈夫……」
ドトウは倒れ込みながらも片手を挙げる。いつの間にか空が薄暗くなり、強い吹雪が吹き荒れている。舞が戸惑う。
「て、天気が急変した……」
「天候操作とか、なるほど、いよいよ強ボス感あるね……」
アイスが苦笑する。レオイが不敵な笑みを浮かべる。
「この地の持つ独特な空気もこのキャラを具現化するのに適していたのかもな……」
「くっ、まずこの吹雪による視界の悪さをなんとかせねば……」
ジンライが顔をしかめる。
「ここはわに任せて下さい!」
めんこいイタコが進み出る。アイスが驚く。
「めんコちゃん⁉」
「もう略称で呼んでる⁉ ギャルの距離の詰め方!」
愛の言葉をよそにジンライがめんこいイタコに尋ねる。
「どうするつもりだ?」
「こうします! 『二次元降霊』!」
「⁉」
めんこいイタコがゲームの魔法使いのような恰好に変化し、手に持った杖を掲げる。
「『聖なる光』!」
杖から発せられた眩い光が薄暗い空をあっという間に明るく照らす。光の熱によるものか、吹雪もすっかり止む。レオイが驚く。
「なっ⁉」
「あの恰好は国民的RPGでストーリーの途中で亡くなったヒロインのコスチューム……それに全く同じ魔法を使っていた……」
アイスが信じられないといった表情でめんこいイタコを見る。めんこいイタコは衣服の裾をつまみながら照れ臭そうにする。
「ははっ、この恰好さ、露出が多くてめぐせ……」
「も、もしかして、めんコちゃん……」
「ふ、吹雪を止めたくらいで良い気になるなよ!」
「!」
「まだこれがある!」
レオイが再び手を掲げると、竜がさらに大きな氷塊を吐き出した。グラウンドの半分以上を覆いつくすほどの大きさである。ドトウが驚く。アイスが頭を抱える。
「お、大きい!」
「あのサイズじゃ避け切れない!」
「ちっ……」
ジンライが舌打ちする。そこに再びめんこいイタコが前に進み出る。
「ここもわに任せて!」
「‼」
めんこいイタコがワイルドな服装の男性の姿に変化し、拳を突き出す。
「『火炎の拳』!」
「⁉」
めんこいイタコの拳から巨大な火の玉が発生する。火の玉は氷塊を溶かし、さらに竜をも飲み込んでしまった。愛が呆然と呟く。
「す、すごい……」
「……形勢逆転か?」
「ま、まさか、あの竜を……ここは撤退しよう!」
レオイが姿を消す。
「ふう……」
「! だ、大丈夫⁉」
元の姿に戻ったりんごが倒れそうになったため、アイスが慌てて抱き留める。
「こ、この降霊は特に体力を消耗するので……」
「やっぱり……」
「アイス、どういうこと?」
ドトウがアイスに問う。
「彼女は漫画やアニメやゲームの……いわゆる『二次元世界』の亡くなったキャラクターを降霊させることが出来るんだよ。そしてその力で戦えるんだ」
「さきほどの男は国民的漫画で死ぬキャラクターだったな」
「そ、そんなことが出来るの? イタコの方って……」
ジンライが腕を組んで頷く横で、愛が戸惑う。りんごが呟く。
「近年、高まってきたニーズに応えるべく、一生懸命修行しました……」
「た、大変なのね……」
「時代の変化に適応せねばいけませんから……いごともあります。コスプレし放題です」
「ふっ、趣味と実益を兼ねた能力というわけか……」
笑顔を浮かべるめんこいイタコに対し、ジンライが笑みを浮かべる。
「青い袴だしね」
舞の言葉にアイスが頷く。りんごが頭を掻く。
「まあ、ちょっとしたオリジナリティっていうか……本当は袴もわざわざ穿かなくてもいいんすけど、雰囲気づくりの一環というが……」
「色々と工夫してるのね……」
「そうだよ~地元ヒーローは一日にしてならず!ってね~」
舞が感心する横でアイスが腕を組んで頷く。ドトウが叫ぶ。
「そんなことより、アイツをどうするのよ!」
ドトウが巨大な竜を指差す。レオイが笑う。
「まあ、レベルも初期の段階で、強ボスと遭遇してしまうのもよくある話だ……」
「そんな、ちょっと前のRPGじゃないんだから!」
アイスが声を上げる。レオイが手を掲げて叫ぶ。
「喰らえ!」
巨大な竜が大きな氷塊を吐き出す。
「ぐおっ⁉」
「お兄ちゃん⁉」
ジンライが氷塊に弾き飛ばされる。
「う、打ち砕こうとしたが、硬いな……それにあのスピード……厄介だ」
「ははっ! どんどん行くぞ!」
レオイの言葉通り、氷塊が次々と吐き出される。
「くっ! 受け止めようとするのは難しい、各自回避行動を取れ!」
「舞! りんごちゃん!」
「ドトウサマ!」
アイスが舞とりんごを両脇に抱え、滑りながら氷塊の雨をかわす。ドトウもドッポに乗り込んで、一旦距離を取る。それでも氷塊は学園のグラウンドに降り注ぎ続ける。
「ちっ、どうするか……」
氷塊を回避しながら、ジンライは舌打ちをする。
「吹けよ、疾風! 迫れ、怒涛! 疾風怒涛、参上! 邪な野望はアタシがぶっ壊す‼」
ドトウが疾風怒涛に変身する。
「どうするつもりだ、ドトウ⁉」
「こうするつもりよ!」
「なっ⁉」
疾風怒涛が降り注ぐ氷塊を足場代わりにして、器用にジャンプしていき、巨大な竜に迫る。
「う、うまい! 竜の懐に入れる!」
「アクションアールピージーノヨウリョウデスネ」
舞とドッポが感心している内に、疾風怒涛が竜に接近する。
「生憎、巨大なモンスターを相手にした経験は少ないけど、生き物ならば喉元搔っ切ればそれで終いでしょう⁉」
「甘いな!」
「⁉」
突然、猛吹雪が吹き、疾風怒涛はそれに押し流され、地面に落下する。ジンライが叫ぶ。
「ドトウ!」
「な、なんとか、大丈夫……」
ドトウは倒れ込みながらも片手を挙げる。いつの間にか空が薄暗くなり、強い吹雪が吹き荒れている。舞が戸惑う。
「て、天気が急変した……」
「天候操作とか、なるほど、いよいよ強ボス感あるね……」
アイスが苦笑する。レオイが不敵な笑みを浮かべる。
「この地の持つ独特な空気もこのキャラを具現化するのに適していたのかもな……」
「くっ、まずこの吹雪による視界の悪さをなんとかせねば……」
ジンライが顔をしかめる。
「ここはわに任せて下さい!」
めんこいイタコが進み出る。アイスが驚く。
「めんコちゃん⁉」
「もう略称で呼んでる⁉ ギャルの距離の詰め方!」
愛の言葉をよそにジンライがめんこいイタコに尋ねる。
「どうするつもりだ?」
「こうします! 『二次元降霊』!」
「⁉」
めんこいイタコがゲームの魔法使いのような恰好に変化し、手に持った杖を掲げる。
「『聖なる光』!」
杖から発せられた眩い光が薄暗い空をあっという間に明るく照らす。光の熱によるものか、吹雪もすっかり止む。レオイが驚く。
「なっ⁉」
「あの恰好は国民的RPGでストーリーの途中で亡くなったヒロインのコスチューム……それに全く同じ魔法を使っていた……」
アイスが信じられないといった表情でめんこいイタコを見る。めんこいイタコは衣服の裾をつまみながら照れ臭そうにする。
「ははっ、この恰好さ、露出が多くてめぐせ……」
「も、もしかして、めんコちゃん……」
「ふ、吹雪を止めたくらいで良い気になるなよ!」
「!」
「まだこれがある!」
レオイが再び手を掲げると、竜がさらに大きな氷塊を吐き出した。グラウンドの半分以上を覆いつくすほどの大きさである。ドトウが驚く。アイスが頭を抱える。
「お、大きい!」
「あのサイズじゃ避け切れない!」
「ちっ……」
ジンライが舌打ちする。そこに再びめんこいイタコが前に進み出る。
「ここもわに任せて!」
「‼」
めんこいイタコがワイルドな服装の男性の姿に変化し、拳を突き出す。
「『火炎の拳』!」
「⁉」
めんこいイタコの拳から巨大な火の玉が発生する。火の玉は氷塊を溶かし、さらに竜をも飲み込んでしまった。愛が呆然と呟く。
「す、すごい……」
「……形勢逆転か?」
「ま、まさか、あの竜を……ここは撤退しよう!」
レオイが姿を消す。
「ふう……」
「! だ、大丈夫⁉」
元の姿に戻ったりんごが倒れそうになったため、アイスが慌てて抱き留める。
「こ、この降霊は特に体力を消耗するので……」
「やっぱり……」
「アイス、どういうこと?」
ドトウがアイスに問う。
「彼女は漫画やアニメやゲームの……いわゆる『二次元世界』の亡くなったキャラクターを降霊させることが出来るんだよ。そしてその力で戦えるんだ」
「さきほどの男は国民的漫画で死ぬキャラクターだったな」
「そ、そんなことが出来るの? イタコの方って……」
ジンライが腕を組んで頷く横で、愛が戸惑う。りんごが呟く。
「近年、高まってきたニーズに応えるべく、一生懸命修行しました……」
「た、大変なのね……」
「時代の変化に適応せねばいけませんから……いごともあります。コスプレし放題です」
「ふっ、趣味と実益を兼ねた能力というわけか……」
笑顔を浮かべるめんこいイタコに対し、ジンライが笑みを浮かべる。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
フィーバーロボット大戦~アンタとはもう戦闘ってられんわ!~
阿弥陀乃トンマージ
SF
時は21世紀末……地球圏は未曾有の危機に瀕していた。人類は官民を問わず、ロボットの開発・研究に勤しみ、なんとかこの窮地を脱しようとしていた。
そんな中、九州の中小企業である二辺工業の敷地内に謎の脱出ポッドが不時着した……。
爆笑必至の新感覚ロボットバトルアクション、ここに開戦!
―異質― 邂逅の編/日本国の〝隊〟、その異世界を巡る叙事詩――《第一部完結》
EPIC
SF
日本国の混成1個中隊、そして超常的存在。異世界へ――
とある別の歴史を歩んだ世界。
その世界の日本には、日本軍とも自衛隊とも似て非なる、〝日本国隊〟という名の有事組織が存在した。
第二次世界大戦以降も幾度もの戦いを潜り抜けて来た〝日本国隊〟は、異質な未知の世界を新たな戦いの場とする事になる――
日本国陸隊の有事官、――〝制刻 自由(ぜいこく じゆう)〟。
歪で醜く禍々しい容姿と、常識外れの身体能力、そしてスタンスを持つ、隊員として非常に異質な存在である彼。
そんな隊員である制刻は、陸隊の行う大規模な演習に参加中であったが、その最中に取った一時的な休眠の途中で、不可解な空間へと導かれる。そして、そこで会った作業服と白衣姿の謎の人物からこう告げられた。
「異なる世界から我々の世界に、殴り込みを掛けようとしている奴らがいる。先手を打ちその世界に踏み込み、この企みを潰せ」――と。
そして再び目を覚ました時、制刻は――そして制刻の所属する普通科小隊を始めとする、各職種混成の約一個中隊は。剣と魔法が力の象徴とされ、モンスターが跋扈する未知の世界へと降り立っていた――。
制刻を始めとする異質な隊員等。
そして問題部隊、〝第54普通科連隊〟を始めとする各部隊。
元居た世界の常識が通用しないその異世界を、それを越える常識外れな存在が、掻き乱し始める。
〇案内と注意
1) このお話には、オリジナル及び架空設定を多数含みます。
2) 部隊規模(始めは中隊規模)での転移物となります。
3) チャプター3くらいまでは単一事件をいくつか描き、チャプター4くらいから単一事件を混ぜつつ、一つの大筋にだんだん乗っていく流れになっています。
4) 主人公を始めとする一部隊員キャラクターが、超常的な行動を取ります。ぶっ飛んでます。かなりなんでも有りです。
5) 小説家になろう、カクヨムにてすでに投稿済のものになりますが、そちらより一話当たり分量を多くして話数を減らす整理のし直しを行っています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる