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チャプター2
第15話(1)マグロ、乞うご期待
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15
「ふむ……風が心地いいな」
「まさか、津軽海峡をこういう形で渡るとはね……」
舞が呟く。ジンライが笑う。
「漁船でも拝借するかと思ったが、手間が省けたな」
「拝借って、アンタの場合、限りなく強奪でしょう……」
「よく分かったな」
「そんなのダメよ、絶対」
「緊急事態だぞ?」
「それでもダメよ」
「ダメと言われると、やりたくなるのが銀河一のヴィランだ」
「銀河一の子供か」
「冗談だ。こうして平和的手段をとっただろう?」
「まさか、ドッポが船にも変形出来るとはね……」
舞が自分の乗る船を見る。ドッポの電子音声が響く。
「ハカセガカイリョウヲクワエテクレマシタ」
「おじいちゃん凄いわね……ってか、根本的な大きさが変わっているような気が……」
「コマカイコトハイイッコナシデス」
「そうだ、あまり気にするな」
「まあ、いいけど……」
「しかし、思った以上に早く到着出来そうだな」
ジンライが端末の時計を確認する。舞が問う。
「MSPの信号をキャッチしたんだっけ?」
「ああ、大二郎の研究仲間がMSPの鉱石に取り付けた装置が危険を察知すると、信号を発する仕組みだ。東北地方と新潟県の各エリアに散らばっている」
「一か所に固めておけば良いのに、散らばっているのはまた考えがあるのかしら?」
「ああ、恐らく良からぬな」
ジンライが笑みを浮かべる。舞がため息をつく。
「研究仲間さんも似たもの同士ってことね……」
「だからお仲間なんだろうな」
「危険を察知したっていうのはどういうことかしら?」
「あくまで予測だが、MSPの持つ力を狙う勢力でも動いているんだろう」
「それは誰?」
「さあな、もう少し事態が動いてみないとどうにも分からん」
ジンライが両手をわざとらしく広げ、首を左右に振る。
「それもそうね……」
「対岸に到着するまで、船室に戻っていよう」
「ええ」
「いや~ドッポ様様だね~コタツまで完備しているとは~」
ジンライと舞が船室に戻ると、コタツに入ったアイスが笑顔で二人を出迎える。
「季節が真逆でしょう。どんだけ寒がりなのよ……理解に苦しむわ」
「それはこっちの台詞だ」
ジンライがアイスの近くに座っているドトウの頭に軽くチョップを入れる。ドトウが唇を尖らせる。
「痛いな~お兄ちゃん、何してんのよ?」
「だからそれもこっちの台詞だ……何故貴様までここにいる」
「今日、学校を休んだでしょう? それはなんて説明しているんだっけ?」
「素直にMSPの防衛に向かうというのも情報機密的に問題がありそうだしな……フィールドワークと伝えてある。レポートを提出すれば単位の問題はない」
「そのレポート作成のお手伝いよ」
「ドトウ、貴様、どういうつもりだ? 学校に編入するなどと言い出して……」
「しかも兄妹なのに、ちゃっかり同じクラスになっちゃったしね……」
舞が首を傾げる。ドトウが笑う。
「その辺の個人データ改ざんなんてお手の物よ」
「俺様が聞きたいのはどういうつもりだということだ」
ジンライが座って、ドトウに顔を近づける。
「なんていうか……地球を対象にした、フィールドワークよ」
「あのスーツはなんだ?」
「え?」
「俺様のスーツに似ている。俺様のスーツと同様に我が母星、ドイタール帝国の技術は用いられていない。あれを誰に用意してもらった?」
「う~ん、それは秘密かな~」
問い詰めるジンライをドトウははぐらかす。ジンライはムッとする。
「秘密だと、ふざけるなよ……」
「女の子には秘密が一杯あるものだって、少女漫画読者なら分かるでしょう……フン!」
アイスが鼻をかむ。ジンライが応える。
「そういうかわいらしい問題ではない……大体だな、本当になんで貴様がここにいる? 函館の防衛を頼んでいたはずだが……」
「ジッチョクに任せたよ」
「不安が残るな……」
「ウチもこっち方面に用事があるんだよ」
「用事? なんだ?」
「それは秘密」
「だからふざけるな……⁉」
船が大きく揺れる。ドッポの音声が船室に響く。
「ナニモノカニヨルコウゲキヲウケテイマス!」
「なんだと⁉」
ジンライたちが船室に出ると、大量のマグロが船に向かって体当たりしてきている。
「こ、これは……⁉」
「知っているのか、舞!」
「大間のマグロ! でもまだ時期じゃないはず……」
「いや、あれはマグロであって……ズズ……マグロじゃない……」
アイスが鼻をすすりながら呟く。舞が尋ねる。
「アイス! どういうこと⁉」
「あれは人気ゲームに登場するマグロだよ」
「ゲ、ゲーム⁉」
「うん、『Maguro Grand Order (マグログランドオーダー)』、通称『MGO』の人気キャラクターだよ」
「は、初耳のゲーム! しかもそれならグランドオーダーの意味がない略称!」
「『マグロ、乞うご期待』ってCM知らない?」
「あ、あれってゲームの宣伝だったの⁉」
アイスの説明に舞が困惑する。ジンライが呟く。
「ゲームのキャラクターを実体化させるということは、あいつらの仕業か……」
「そうみたいね」
アイスが頷く。ドトウが尋ねる。
「お兄ちゃん、どうするの?」
「片っ端から釣って食べても良いんだが……」
「美味らしいわね、大間のマグロって」
「ただ、ゲームのキャラクターなら、食べられないだろうな……」
「なんだ、残念」
「まあ、それは対岸に着いてからだ。今は……」
「今は?」
「このうっとうしい連中を片付けるぞ!」
「分かった!」
ジンライとドトウが並んでポーズを構える。
「吹けよ、疾風! 轟け、迅雷! 疾風迅雷、参上! 邪な野望は俺様が打ち砕く‼」
「吹けよ、疾風! 迫れ、怒涛! 疾風怒涛、参上! 邪な野望はアタシがぶっ壊す‼」
ジンライとドトウが変身し、船を包囲するマグロの大群と相対する。
「ふむ……風が心地いいな」
「まさか、津軽海峡をこういう形で渡るとはね……」
舞が呟く。ジンライが笑う。
「漁船でも拝借するかと思ったが、手間が省けたな」
「拝借って、アンタの場合、限りなく強奪でしょう……」
「よく分かったな」
「そんなのダメよ、絶対」
「緊急事態だぞ?」
「それでもダメよ」
「ダメと言われると、やりたくなるのが銀河一のヴィランだ」
「銀河一の子供か」
「冗談だ。こうして平和的手段をとっただろう?」
「まさか、ドッポが船にも変形出来るとはね……」
舞が自分の乗る船を見る。ドッポの電子音声が響く。
「ハカセガカイリョウヲクワエテクレマシタ」
「おじいちゃん凄いわね……ってか、根本的な大きさが変わっているような気が……」
「コマカイコトハイイッコナシデス」
「そうだ、あまり気にするな」
「まあ、いいけど……」
「しかし、思った以上に早く到着出来そうだな」
ジンライが端末の時計を確認する。舞が問う。
「MSPの信号をキャッチしたんだっけ?」
「ああ、大二郎の研究仲間がMSPの鉱石に取り付けた装置が危険を察知すると、信号を発する仕組みだ。東北地方と新潟県の各エリアに散らばっている」
「一か所に固めておけば良いのに、散らばっているのはまた考えがあるのかしら?」
「ああ、恐らく良からぬな」
ジンライが笑みを浮かべる。舞がため息をつく。
「研究仲間さんも似たもの同士ってことね……」
「だからお仲間なんだろうな」
「危険を察知したっていうのはどういうことかしら?」
「あくまで予測だが、MSPの持つ力を狙う勢力でも動いているんだろう」
「それは誰?」
「さあな、もう少し事態が動いてみないとどうにも分からん」
ジンライが両手をわざとらしく広げ、首を左右に振る。
「それもそうね……」
「対岸に到着するまで、船室に戻っていよう」
「ええ」
「いや~ドッポ様様だね~コタツまで完備しているとは~」
ジンライと舞が船室に戻ると、コタツに入ったアイスが笑顔で二人を出迎える。
「季節が真逆でしょう。どんだけ寒がりなのよ……理解に苦しむわ」
「それはこっちの台詞だ」
ジンライがアイスの近くに座っているドトウの頭に軽くチョップを入れる。ドトウが唇を尖らせる。
「痛いな~お兄ちゃん、何してんのよ?」
「だからそれもこっちの台詞だ……何故貴様までここにいる」
「今日、学校を休んだでしょう? それはなんて説明しているんだっけ?」
「素直にMSPの防衛に向かうというのも情報機密的に問題がありそうだしな……フィールドワークと伝えてある。レポートを提出すれば単位の問題はない」
「そのレポート作成のお手伝いよ」
「ドトウ、貴様、どういうつもりだ? 学校に編入するなどと言い出して……」
「しかも兄妹なのに、ちゃっかり同じクラスになっちゃったしね……」
舞が首を傾げる。ドトウが笑う。
「その辺の個人データ改ざんなんてお手の物よ」
「俺様が聞きたいのはどういうつもりだということだ」
ジンライが座って、ドトウに顔を近づける。
「なんていうか……地球を対象にした、フィールドワークよ」
「あのスーツはなんだ?」
「え?」
「俺様のスーツに似ている。俺様のスーツと同様に我が母星、ドイタール帝国の技術は用いられていない。あれを誰に用意してもらった?」
「う~ん、それは秘密かな~」
問い詰めるジンライをドトウははぐらかす。ジンライはムッとする。
「秘密だと、ふざけるなよ……」
「女の子には秘密が一杯あるものだって、少女漫画読者なら分かるでしょう……フン!」
アイスが鼻をかむ。ジンライが応える。
「そういうかわいらしい問題ではない……大体だな、本当になんで貴様がここにいる? 函館の防衛を頼んでいたはずだが……」
「ジッチョクに任せたよ」
「不安が残るな……」
「ウチもこっち方面に用事があるんだよ」
「用事? なんだ?」
「それは秘密」
「だからふざけるな……⁉」
船が大きく揺れる。ドッポの音声が船室に響く。
「ナニモノカニヨルコウゲキヲウケテイマス!」
「なんだと⁉」
ジンライたちが船室に出ると、大量のマグロが船に向かって体当たりしてきている。
「こ、これは……⁉」
「知っているのか、舞!」
「大間のマグロ! でもまだ時期じゃないはず……」
「いや、あれはマグロであって……ズズ……マグロじゃない……」
アイスが鼻をすすりながら呟く。舞が尋ねる。
「アイス! どういうこと⁉」
「あれは人気ゲームに登場するマグロだよ」
「ゲ、ゲーム⁉」
「うん、『Maguro Grand Order (マグログランドオーダー)』、通称『MGO』の人気キャラクターだよ」
「は、初耳のゲーム! しかもそれならグランドオーダーの意味がない略称!」
「『マグロ、乞うご期待』ってCM知らない?」
「あ、あれってゲームの宣伝だったの⁉」
アイスの説明に舞が困惑する。ジンライが呟く。
「ゲームのキャラクターを実体化させるということは、あいつらの仕業か……」
「そうみたいね」
アイスが頷く。ドトウが尋ねる。
「お兄ちゃん、どうするの?」
「片っ端から釣って食べても良いんだが……」
「美味らしいわね、大間のマグロって」
「ただ、ゲームのキャラクターなら、食べられないだろうな……」
「なんだ、残念」
「まあ、それは対岸に着いてからだ。今は……」
「今は?」
「このうっとうしい連中を片付けるぞ!」
「分かった!」
ジンライとドトウが並んでポーズを構える。
「吹けよ、疾風! 轟け、迅雷! 疾風迅雷、参上! 邪な野望は俺様が打ち砕く‼」
「吹けよ、疾風! 迫れ、怒涛! 疾風怒涛、参上! 邪な野望はアタシがぶっ壊す‼」
ジンライとドトウが変身し、船を包囲するマグロの大群と相対する。
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