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チャプター1
第10話(4)決戦の時来たる
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「……もうすぐ函館ね」
「ちっ……」
車での移動中にジンライが頭を抑えて軽く舌打ちする。舞が尋ねる。
「どうしたのよ?」
「せっかく身体を休めに行ったというのに、そこで新たに負傷してしまっては意味が無いではないか……」
「人の裸を見るからよ」
「それはお互い様だろう」
「いやいや、そこはイコールにはならないでしょう!」
「俺様が不覚にも気を失っている隙に、俺様の全てを見たのだろう?」
ジンライが身をよじる。舞が声を上げる。
「その気味の悪い動きやめなさいよ!」
「油断も隙もないな……」
「だから見ていないわよ! 部屋にはドッポに運んでもらったんだから!」
「そうなのか?」
「ハイ、センエツナガラ……」
ジンライの問いにドッポが答える。
「見ていないのか……」
「なんでちょっとがっかりしてんのよ!」
「『銀河一のヴィラン』の裸体だぞ?」
「だぞ?って言われても!」
「興味無いのか?」
「まったく無いわよ!」
「……まったくということはないだろう?」
「しつこいわね! 見て欲しかったの⁉」
「まあ……どちらかと言えば、な」
「な、じゃないのよ⁉ 性癖をカミングアウトしないでよ!」
「別に大して減るものでもないしな」
「私の心境的にはかなりのマイナスだわ!」
「いつか何かのきっかけでプラスに転じることも……」
「無いわよ!」
そんな言い合いをしている間に、車は既に函館市内に入っていた。
「函館か、約一週間ぶりだが、妙に懐かしいな」
「まず家に戻りましょう」
「そうだな、ドッポ、疾風宅に向かってくれ」
「カシコマリマシタ」
「おかえり!」
家に戻った舞とジンライを大二郎が玄関で迎え入れた。
「ただいま、おじいちゃん……」
「お腹が空いているだろう。食事を用意したよ。と言っても出前だけどね」
「悪いけど、私、ちょっと部屋で休んでくるわ。流石に疲れたし……」
舞が自分の部屋に足早に向かう。
「そ、そうかい? ジンライ君はどうだい?」
「……いただくとしよう」
「おお、では手洗いを済ませたら居間においで」
大二郎の言葉通り、ジンライは手洗いを済ませ、居間に入った。
「さあ、大盛りカツ丼だよ!」
「カツ丼?」
「そう、敵に勝つという意味でね!」
大二郎はそう言ってウィンクする。
「……ゲン担ぎというやつか」
「す、少し、古臭いかな」
「ジンクスを気にするのは銀河のどこでも一緒だな」
ジンライは笑みを浮かべながら食卓に座る。
「はははっ、やっぱりそうなんだ」
大二郎も笑いながら食卓に座る。
「この場合、敵が誰かという話になるのだが……」
「え?」
ジンライの呟きに大二郎が反応する。
「なんとかと天才は紙一重というが、貴様はどちらだろうな?」
「な、なんの話だい?」
「舞も学園防衛に当たると言っているぞ」
「!」
大二郎がやや動揺した様子を見せる。
「大事な孫娘だろう?」
「……とっても大事な孫娘だよ」
「危険に晒すことになるぞ」
「止められないのかい?」
「どういう性格をしているかは貴様の方が承知しているだろう」
「そうか……」
「良識を信頼しても良いのだろうな?」
「ヴィランから良識という言葉が聞かれるとはね……」
「ふっ……確かにらしくもないか」
「言葉を返すようだけど、君のことも全面的に信頼して良いのかい?」
「……逆の立場なら信頼しないな。そもそもスーツを与えない」
「偶然の産物だけどね。緊急時にスーツへの適応値が高い君が来た。それだけだよ……」
「偶然か、まあそれでいいだろう」
「いいのかい?」
「訊問は得意ではない……ただ一つ、五稜郭学園にNSPを集めさせた意図は?」
「詳細はまだ話せない……NSPの力を引き出す上で必要な処置だと思ってくれ」
「ふむ、まあそれもいい……ムラクモの迎撃に集中するとしよう」
「こう言ってはなんだけど……勝てるのかい?」
「ストレートな疑問だな」
ジンライが苦笑を浮かべる。
「ご、ごめん。でも、大事なことだから……」
「勝つ……俺様は同じ相手に二度も苦杯は舐めん」
「た、頼もしいね……」
「誰だと思っている? 『銀河一のヴィラン』、ジンライ様だぞ?」
「おおっ……」
「カツ丼を食べて、明日に備えるか……」
ジンライは食事を始める。翌日五稜郭学園に設置された緊急指令室でドッポが報告する。
「ジンライサマ、ウヨマテチョコウコクノブタイヲカクニンシマシタ」
「襲撃は今日だったか……」
「ヘイスウハソレホドオオクハアリマセンガ……」
「とはいえ、ムラクモの部隊だ。練度は高いだろうな……」
「⁉ チョットオマチクダサイ!」
「どうした⁉」
「ナナカショデハンノウアリ! オソラクNSPヲネラッテイルカクセイリョクデス!」
「7ケ所同時だと⁉ ちっ、こんな時に面倒な……」
「ど、どうするの⁉」
舞が心配そうな声を上げる。
「各個撃破しかあるまい!」
「む、無茶よ!」
「無茶でもやるしかあるまい!」
ジンライは走り出す。
「ジンライサマ! キンキュウツウシンガ!」
「緊急だと⁉ お、お前らは……⁉」
ドッポのモニターを見てジンライは驚く。
「ちっ……」
車での移動中にジンライが頭を抑えて軽く舌打ちする。舞が尋ねる。
「どうしたのよ?」
「せっかく身体を休めに行ったというのに、そこで新たに負傷してしまっては意味が無いではないか……」
「人の裸を見るからよ」
「それはお互い様だろう」
「いやいや、そこはイコールにはならないでしょう!」
「俺様が不覚にも気を失っている隙に、俺様の全てを見たのだろう?」
ジンライが身をよじる。舞が声を上げる。
「その気味の悪い動きやめなさいよ!」
「油断も隙もないな……」
「だから見ていないわよ! 部屋にはドッポに運んでもらったんだから!」
「そうなのか?」
「ハイ、センエツナガラ……」
ジンライの問いにドッポが答える。
「見ていないのか……」
「なんでちょっとがっかりしてんのよ!」
「『銀河一のヴィラン』の裸体だぞ?」
「だぞ?って言われても!」
「興味無いのか?」
「まったく無いわよ!」
「……まったくということはないだろう?」
「しつこいわね! 見て欲しかったの⁉」
「まあ……どちらかと言えば、な」
「な、じゃないのよ⁉ 性癖をカミングアウトしないでよ!」
「別に大して減るものでもないしな」
「私の心境的にはかなりのマイナスだわ!」
「いつか何かのきっかけでプラスに転じることも……」
「無いわよ!」
そんな言い合いをしている間に、車は既に函館市内に入っていた。
「函館か、約一週間ぶりだが、妙に懐かしいな」
「まず家に戻りましょう」
「そうだな、ドッポ、疾風宅に向かってくれ」
「カシコマリマシタ」
「おかえり!」
家に戻った舞とジンライを大二郎が玄関で迎え入れた。
「ただいま、おじいちゃん……」
「お腹が空いているだろう。食事を用意したよ。と言っても出前だけどね」
「悪いけど、私、ちょっと部屋で休んでくるわ。流石に疲れたし……」
舞が自分の部屋に足早に向かう。
「そ、そうかい? ジンライ君はどうだい?」
「……いただくとしよう」
「おお、では手洗いを済ませたら居間においで」
大二郎の言葉通り、ジンライは手洗いを済ませ、居間に入った。
「さあ、大盛りカツ丼だよ!」
「カツ丼?」
「そう、敵に勝つという意味でね!」
大二郎はそう言ってウィンクする。
「……ゲン担ぎというやつか」
「す、少し、古臭いかな」
「ジンクスを気にするのは銀河のどこでも一緒だな」
ジンライは笑みを浮かべながら食卓に座る。
「はははっ、やっぱりそうなんだ」
大二郎も笑いながら食卓に座る。
「この場合、敵が誰かという話になるのだが……」
「え?」
ジンライの呟きに大二郎が反応する。
「なんとかと天才は紙一重というが、貴様はどちらだろうな?」
「な、なんの話だい?」
「舞も学園防衛に当たると言っているぞ」
「!」
大二郎がやや動揺した様子を見せる。
「大事な孫娘だろう?」
「……とっても大事な孫娘だよ」
「危険に晒すことになるぞ」
「止められないのかい?」
「どういう性格をしているかは貴様の方が承知しているだろう」
「そうか……」
「良識を信頼しても良いのだろうな?」
「ヴィランから良識という言葉が聞かれるとはね……」
「ふっ……確かにらしくもないか」
「言葉を返すようだけど、君のことも全面的に信頼して良いのかい?」
「……逆の立場なら信頼しないな。そもそもスーツを与えない」
「偶然の産物だけどね。緊急時にスーツへの適応値が高い君が来た。それだけだよ……」
「偶然か、まあそれでいいだろう」
「いいのかい?」
「訊問は得意ではない……ただ一つ、五稜郭学園にNSPを集めさせた意図は?」
「詳細はまだ話せない……NSPの力を引き出す上で必要な処置だと思ってくれ」
「ふむ、まあそれもいい……ムラクモの迎撃に集中するとしよう」
「こう言ってはなんだけど……勝てるのかい?」
「ストレートな疑問だな」
ジンライが苦笑を浮かべる。
「ご、ごめん。でも、大事なことだから……」
「勝つ……俺様は同じ相手に二度も苦杯は舐めん」
「た、頼もしいね……」
「誰だと思っている? 『銀河一のヴィラン』、ジンライ様だぞ?」
「おおっ……」
「カツ丼を食べて、明日に備えるか……」
ジンライは食事を始める。翌日五稜郭学園に設置された緊急指令室でドッポが報告する。
「ジンライサマ、ウヨマテチョコウコクノブタイヲカクニンシマシタ」
「襲撃は今日だったか……」
「ヘイスウハソレホドオオクハアリマセンガ……」
「とはいえ、ムラクモの部隊だ。練度は高いだろうな……」
「⁉ チョットオマチクダサイ!」
「どうした⁉」
「ナナカショデハンノウアリ! オソラクNSPヲネラッテイルカクセイリョクデス!」
「7ケ所同時だと⁉ ちっ、こんな時に面倒な……」
「ど、どうするの⁉」
舞が心配そうな声を上げる。
「各個撃破しかあるまい!」
「む、無茶よ!」
「無茶でもやるしかあるまい!」
ジンライは走り出す。
「ジンライサマ! キンキュウツウシンガ!」
「緊急だと⁉ お、お前らは……⁉」
ドッポのモニターを見てジンライは驚く。
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