上 下
25 / 50
第1章

第6話(4)勇者の実力

しおりを挟む
「なっ⁉ ま、まさか……」

「そのまさかさ。あの娘、ラドは人竜族の末裔……」

 驚くレイブンにローが告げる。

「あんな大きさのドラゴン、ドラゴンレーシングでも見たことないわ……」

 ななみが呆然と呟く。レイブンが唇を噛む。

「くっ……」

「さあ、ラド! 一気にゴールを狙え!」

「シャアアア!」

 ラドと呼ばれた女の子、もといドラゴンはボールを蹴ろうとする。フォーが指示をする。

「ク、クーオ! とにかくブロックよ!」

「お、おう!」

「ガアアア!」

「ぬお⁉」

 ラドの放った強烈なシュートはクーオのブロックをいとも簡単に弾き飛ばす。レイブンが声を上げる。

「レム! 止めろ!」

「しょ、承知! むう⁉」

 シュート速度が凄まじく早かったため、レムは体をわずかに動かすのが精一杯だった。ボールはゴールネットに突き刺さる。

「アアア! ……やったあ!」

 ドラゴンから普通の女の子の姿に戻ったラドが無邪気に喜ぶ。

「よくやったぞ、ラド!」

 ローが笑顔で声をかける。

「へへ……」

 ラドが嬉しそうに鼻の頭をこする。

「ちっ……まだ1点取られただけじゃ!」

「~♪」

 ななみが笛を鳴らす。ボールがレイブンの下に収まる。

「こうなったらワシがやってやる!」

「独りよがりなプレーはよくないよ」

 ローが笑みを浮かべる。

「うるさい!」

「レイブン! さっきみたいにパスを使って!」

 フォーが指示を出す。

「そんなものは必要ない!」

「ひ、必要ないって……」

「こちらが数で上回っているのだ、余計な小細工はいらん!」

 レイブンがドリブルで相手陣内に突っ込む。

「くっ!」

「リン、下がっていろ!」

「なに⁉」

「ここは僕がやる!」

「ロー!」

「ラド、大丈夫だ!」

「ロー……」

「レイナ、心配ない!」

「……呼んでみただけだ……」

「あ、そ、そうかい……」

 仲間たちにローは余裕をもって答える。

「うおおっ!」

 レイブンが突っ込む。

「これ以上は行かせないよ!」

「む⁉」

 レイブンの前にローが立ちはだかる。

「ははっ、まさか君の前に僕が立ちはだかるとはね……」

「捻り潰してくれるわ!」

「そんなことをしたらファールだよ?」

「言葉の綾じゃ!」

 レイブンが突き進む。

「それっ!」

「なっ⁉」

 ローがレイブンからボールをあっさりと奪ってみせたのである。ローが笑う。

「ふふふ……」

「そ、そんな馬鹿な……」

「これで終わりかい?」

「くっ……返せ!」

 レイブンがローに迫る。

「おっと!」

「!」

 レイブンの鋭いタックルをローはいとも簡単にかわしてみせる。

「ふふっ!」

「笑うな!」

「いやあ、楽しくてね! 君はどうだい?」

「不愉快じゃ!」

 レイブンがさらに激しく迫る。ローが煽る。

「奪えるものなら奪ってみなよ!」

「ぐっ……」

 レイブンが体を寄せるが、ローからボールを奪えない。フォーが声を上げる。

「ルト! ゴブ! レイブンのフォローに行きなさい!」

「……お遊びはこの辺にしておこう」

「‼」

 ローが自分の周りに集まってきた者たちをあざ笑うかのように、リンにパスを出す。

「リン! 前方へ蹴り出してくれ!」

「ああ!」

 リンが大きくボールを蹴り出す。ボールはラドの頭上へ飛んでいく。

「ラド! 落とせ!」

「うん!」

 再びドラゴンの姿になったラドがボールを頭で叩きつける。そこにローが走り込む。

「ク、クーオ! 止めなさい!」

「遅いよ!」

「⁉」

 ボールをキープしたローはクーオのタックルを難なくかわし、ゴール前に侵入する。

「もらった!」

「ぐっ⁉」

 ローの放った鋭いシュートに対し、レムは一歩も動くことが出来ず、ボールはゴールネットを揺らす。ローが得意気に振り返る。

「……ざっとこんなものだよ」

「くっ……」

「この程度の実力ならば、大会に出たところで無駄だと思うけどね……辞退した方が恥をかかなくて済むよ?」

「むう……」

「さて、挨拶というか、忠告は済んだ。3人とも、帰るとしようか」

 ローたちが悠然と引き上げる。ななみが立ち尽くすレイブンに声をかける。

「レ、レイブン……」

「……おれ」

「え?」

「今にみておれ……次は貴様が這いつくばることになるぞ、勇者ロー……」

 レイブンは静かに呟く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

アタシをボランチしてくれ!~仙台和泉高校女子サッカー部奮戦記~

阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
「アタシをボランチしてくれ!」  突如として現れた謎のヤンキー系美少女、龍波竜乃から意味不明なお願いをされた、お団子頭がトレードマークのごくごく普通の少女、丸井桃。彼女の高校ライフは波乱の幕開け!  揃ってサッカー部に入部した桃と竜乃。しかし、彼女たちが通う仙台和泉高校は、学食のメニューが異様に充実していることを除けば、これまたごくごく普通の私立高校。チームの強さも至って平凡。しかし、ある人物の粗相が原因で、チームは近年稀にみる好成績を残さなければならなくなってしまった!  桃たちは難敵相手に『絶対に負けられない戦い』に挑む!  一風変わった女の子たちによる「燃え」と「百合」の融合。ハイテンションかつエキセントリックなJKサッカーライトノベル、ここにキックオフ!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

★駅伝むすめバンビ

鉄紺忍者
大衆娯楽
人間の意思に反応する『フットギア』という特殊なシューズで走る新世代・駅伝SFストーリー!レース前、主人公・栗原楓は憧れの神宮寺エリカから突然声をかけられた。慌てふためく楓だったが、実は2人にはとある共通点があって……? みなとみらいと八景島を結ぶ絶景のコースを、7人の女子大生ランナーが駆け抜ける!

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

しゅうきゅうみっか!-女子サッカー部の高校生監督 片桐修人の苦難-

橋暮 梵人
青春
幼少の頃から日本サッカー界の至宝と言われ、各年代別日本代表のエースとして活躍し続けてきた片桐修人(かたぎり しゅうと)。 順風満帆だった彼の人生は高校一年の時、とある試合で大きく変わってしまう。 悪質なファウルでの大怪我によりピッチ上で輝くことが出来なくなった天才は、サッカー漬けだった日々と決別し人並みの青春を送ることに全力を注ぐようになる。 高校サッカーの強豪校から普通の私立高校に転入した片桐は、サッカーとは無縁の新しい高校生活に思いを馳せる。 しかしそんな片桐の前に、弱小女子サッカー部のキャプテン、鞍月光華(くらつき みつか)が現れる。 「どう、うちのサッカー部の監督、やってみない?」 これは高校生監督、片桐修人と弱小女子サッカー部の奮闘の記録である。

女子高生は卒業間近の先輩に告白する。全裸で。

矢木羽研
恋愛
図書委員の女子高生(小柄ちっぱい眼鏡)が、卒業間近の先輩男子に告白します。全裸で。 女の子が裸になるだけの話。それ以上の行為はありません。 取って付けたようなバレンタインネタあり。 カクヨムでも同内容で公開しています。

処理中です...