【第1章完】セブンでイレブン‼~現代に転移した魔王、サッカーで世界制覇を目指す~

阿弥陀乃トンマージ

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第1章

第6話(3)勇者と仲間たち

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「証明じゃと?」

「ああ、ちょうど良いグラウンドがあるじゃないか」

「まさかこんな時間に試合をする気か?」

「そんな大げさなものじゃないよ、ミニゲームとでも思ってもらえば良い」

「はっ、くだらん……」

 レイブンが苦笑する。

「……逃げるのかい?」

「なに?」

「まさか魔王と呼ばれるほどの君が臆したと?」

「……そんなわけがなかろう」

「ならば少し遊ぼうじゃないか」

「よかろう……」

「レ、レイブン……」

「ななみ、他の連中を集めてきてくれ……」

「う、うん……」

 ななみがメンバーを集めてくる。約十分後、レイブンのチームとローのチームがグラウンドで対峙する。レイブンが笑う。

「はっ、貴様のチーム……4人しかおらんではないか」

 レイブンが顎をしゃくる。ローの後ろには3人の女性が立っているだけである。ローが首をすくめる。

「あいにく、車が4人乗りでね……」

「それでは試合が成立せんぞ」

「ミニゲームと言っただろう? あくまでも余興の類さ。それに……」

「それに?」

「これくらいがちょうど良いハンデになる」

「!」

「……どうかな?」

 ローが笑みを浮かべる。レイブンが腕を組んで頷く。

「面白いことを言うな。受けて立ってやる」

「それでは試合開始だ。2点先取した方が勝ちというルールで良いね?」

「ああ」

「それじゃあ、ミスななみ……開始の笛をお願いします」

「あ、は、はい、分かりました……」

 ななみが戸惑いながら笛を吹く。レイブンチームでキックオフとなり、ボールがレイブンのもとに転がる。

「さっさと終わらせる! ルト!」

「は、はいっす!」

 レイブンがルトに鋭いパスを送る。

「お前とトッケのスピードで圧倒するんじゃ!」

「わ、分かったっす! トッケ!」

「よっと! それみゃあ!」

「よしっす!」

 ルトとトッケの素早くリズミカルなパス交換で、あっという間に相手ゴール前まで迫る。レイブンが声を上げる。

「よし、シュートじゃ!」

「も、もらったっす!」

 ルトが鋭いシュートを放つ。ボールはゴール目指して飛んでいく。

「……はあ」

「なっ⁉」

 ゴール前に立っていた、ローブに身を包んだ茶髪の女性がさっと手をかざすと、ボールは空中でピタッと止まる。

「はあ……」

「おっと⁉」

 女性が再び手をかざすと止まっていたボールが弾き飛ばされたようになり、トッケの前にコロコロと転がる。ルトが声を上げる。

「トッケ、チャンスっす!」

「お、おう!」

 今度はトッケが鋭いシュートを放つ。

「面倒ね……」

「みゃあ⁉」

 トッケのシュートもゴールラインを割らず、その手前でピタッと止まる。ローが笑う。

「さすがは賢者レイナだ」

「ま、魔法を使ったのか⁉」

「ああ、彼女はこの世界に戻ってきてからも、それほど魔力に影響が出なかったようだからね……もっとも完全というわけじゃないようだけど」

 ローがレイブンに向かって告げる。レイナと呼ばれた女性が面倒そうに呟く。

「さっさと終わらせて……」

「うおっ!」

「みゃあ!」

 レイナが手を振ると、ボールが動き出し、ルトとトッケに当たり、フィールドの中央に転がる。レイブンが指示を出す。

「スラ! ルーズボールを確保しろ!」

「わ、分かったラ~!」

「甘い!」

「どわあ~!」

 スラが白い拳法着を着た女性にボールごと蹴り飛ばされる。ボールがこぼれる。

「スラ! くっ!」

 ゴブがこぼれたボールを拾おうとする。

「させん!」

「ぐほっ⁉」

 女性が長い脚を伸ばし、ボールを強引にかっさらう。ゴブはたまらず吹っ飛ばされる。

「さすがは格闘家リンだ……」

「審判! ファールじゃろう!」

 ローが呟く横で、レイブンがななみに抗議する。

「え、えっと……」

「審判、勘違いするな」

 リンと呼ばれた女性がななみに向かって呟く。

「え?」

「……私はサッカーをやっているまでだ」

 ボールをキープしながらリンが構えを取る。レイブンが声を荒げる。

「ふ、ふざけるな!」

「ちゃんとボールに足がいっているぞ……」

「審判!」

「ノ、ノーファール!」

「なんじゃと⁉」

 ななみの下した判定にレイブンが愕然とする。

「ふっ……」

「リン! ゴール前へ!」

「ああ! それ!」

 ローの指示に従い、リンが強烈なキックを前線に蹴りこむ。そこには小柄な赤毛の女の子が立っていた。女の子は転がってきたボールを足元に収める。

「クーオ! ボールを奪え!」

「わ、分かったっぺ!」

 レイブンの指示を受け、クーオが女の子に向かって迫る。体格差は歴然としている。ゲームをライン際で眺めていたフォーが声を上げる。

「クーオ! ちょっと当たっただけでもファールになる恐れがあるわ! 冷静にね!」

「ああ! む⁉」

 クーオが驚く。女の子が巨大なドラゴンに変化したからである。
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