19 / 51
第1章
第5話(2)待ち伏せ
しおりを挟む
亜門と瑠衣は建物の前に並んで立つ。亜門が呟く。
「普通科の他にもこれほど立派な体育館があるとはな……流石はマンモス学校だ」
「あちらが空いているし」
そう言って瑠衣が体育館の隣の建物にスタスタと入っていく。
「ちょ、ちょっと待て……ったく、仕方が無いな」
亜門はため息をついて瑠衣の後に続く。建物に入った瑠衣は周囲を見回す。
「ここは……?」
「道場だろう。柔道部が使うところか……!」
「!」
複数の屈強な体格の男が亜門たちに襲い掛かる。
「ちっ! 先手を取ったつもりが迎えうちか!」
「うおお!」
「ふん……ぬおっ⁉」
男たちの突進を完全にかわしたつもりだった亜門だが、拳が繰り出されたことに驚く。
「ちっ! 避けやがったか……」
「な、なんだ⁉」
「考える余裕は与えん!」
「くっ!」
「そらっ!」
「おっと!」
男たちの繰り出してくる攻撃を亜門はなんとか回避する。
「ちぃっ! この色男、なかなかやりやがるぜ……」
「だが、追い詰めたぞ!」
「む……」
亜門は道場の壁に背をつける。男たちは笑みを浮かべる。
「ふん、もう逃げ場はないぞ……」
亜門は考えを巡らす。
(ちっ……しかし、なんだ、こいつらの体術は? 柔道ではないようだが……)
「動きから見て恐らく……『魂羽闘参歩(コンバットサンボ)』でござろう」
「なっ! 人の思考を勝手に読むな! ござるニン女! っていうか、どこにいる⁉」
「ここでござるよ!」
「⁉」
「い、いつの間に⁉」
瑠衣が道場の天井に逆さまの体勢になってぶら下がっていることに亜門も男たちも度肝を抜かれる。
「お、お前、上から高みの見物を決め込むな! ぼうっとしてないで援護しろ!」
「ぼうっとしていたわけではござらん!」
「何⁉」
「屈強な男たちに力強くで抑え込まれる寸前の美男子に興味深々だったのでござる!」
「ふ、ふざけるな!」
「冗談でござる!」
「お前の場合、どこまでが冗談か分からん!」
「なにを悠長にしゃべっていやがる!」
「やっちまえ!」
「むっ!」
「『ぶっかけパウダー』!」
瑠衣が魂白刀を振って、天井から道場全体に粉をまき散らす。
「うおっ!」
「こ、粉で視界が……」
「はっ!」
「ぐはっ⁉」
亜門が魂旋刀を振るい、男たちの魂力を吸い取り、男たちは崩れ落ちる。
「お持ち還りだ……」
亜門は刀を鞘に納めて呟く。瑠衣が床に着地してうんうんと頷く。
「美男子は粉まみれでも絵になるニン!」
「お前のこの技、なんとかならんのか……?」
亜門は粉を払いながらぼやく。
「……ここはプールか」
「そうですね。体育科専用のプールです」
仁の呟きに四季が頷く。
「ここを通った方が近道なんですね?」
「情報によればそのようですね」
「ならば早く行きましょう」
「そうは行くか!」
「どわっ!」
脇から飛び出した競泳水着姿の男女たちに突き飛ばされ、仁たちはプールに落とされる。
「ふふっ! プールに落とせばこっちのものだ!」
「やってしまえ!」
「ぶはっ! ま、待ち伏せか⁉」
「どうやらその様ですね」
水中から顔を出して叫ぶ仁とは対照的に四季は冷静に呟く。
「行くぞ! 『魂目(コンメ)』!」
「な、なんだ! うわっ⁉」
仁は男に両手で叩かれる。続いて別の男に足をすくわれる。
「まだまだよ!」
「ぬおっ!」
仁は女に体をひっくり返される。水中で動きが思うように出来ない仁は困惑する。
「ははっ! 手も足も出まい!」
「こ、これは⁉」
「どうやら水泳の個人メドレーのことを『コンメ』と略すそうですね。バタフライ、平泳ぎ、背泳ぎを模した攻撃を立て続けに喰らっています……」
「す、すると最後は⁉」
「お察しの通り、自由形でフィニッシュです……」
「くっ……ならばこちらは犬かきで!」
「落ち着いて下さい。有効な対応とは思えません……」
「竹村先輩、魂昔物語集でなんとかなりませんか⁉」
「生憎、水に濡れてしまったので……なんともなりません」
「ええっ⁉」
「なにやらべらべら喋っているようだが、これで終わりだ!」
仁たちを包囲する男女が一斉にクロールの体勢に入る。仁が動揺する。
「ど、どうすれば……!」
「今は昔、駿河国に私市宗平という相撲人あり……」
「どわっ⁉」
四季は自分たちに群がってきた男女をバッタバッタとプールサイドに投げ込む。
「川の中で襲ってきた鮫を軽々と投げ飛ばした相撲取りの話を思い出しました……案外なんとかなるものですね。外國君、とどめを」
「は、はい! お持ち還りだ!」
急いでプールサイドに上がった仁が魂棒を振るって、相手の魂力を吸い取る。
「……仕掛けたつもりですが、待ち構えられていましたね。ならばあの厄介な方も……」
ゆっくりとプールサイドに上がった四季が顎に手を当てて呟く。
「くっ……」
「ちっ……」
グラウンドで超慈とステラが膝をつく。超慈が呟く。
「は、速い……」
「ははは! 遅えよ!」
夕暮れのグラウンドに高らかな笑い声が響く。
「普通科の他にもこれほど立派な体育館があるとはな……流石はマンモス学校だ」
「あちらが空いているし」
そう言って瑠衣が体育館の隣の建物にスタスタと入っていく。
「ちょ、ちょっと待て……ったく、仕方が無いな」
亜門はため息をついて瑠衣の後に続く。建物に入った瑠衣は周囲を見回す。
「ここは……?」
「道場だろう。柔道部が使うところか……!」
「!」
複数の屈強な体格の男が亜門たちに襲い掛かる。
「ちっ! 先手を取ったつもりが迎えうちか!」
「うおお!」
「ふん……ぬおっ⁉」
男たちの突進を完全にかわしたつもりだった亜門だが、拳が繰り出されたことに驚く。
「ちっ! 避けやがったか……」
「な、なんだ⁉」
「考える余裕は与えん!」
「くっ!」
「そらっ!」
「おっと!」
男たちの繰り出してくる攻撃を亜門はなんとか回避する。
「ちぃっ! この色男、なかなかやりやがるぜ……」
「だが、追い詰めたぞ!」
「む……」
亜門は道場の壁に背をつける。男たちは笑みを浮かべる。
「ふん、もう逃げ場はないぞ……」
亜門は考えを巡らす。
(ちっ……しかし、なんだ、こいつらの体術は? 柔道ではないようだが……)
「動きから見て恐らく……『魂羽闘参歩(コンバットサンボ)』でござろう」
「なっ! 人の思考を勝手に読むな! ござるニン女! っていうか、どこにいる⁉」
「ここでござるよ!」
「⁉」
「い、いつの間に⁉」
瑠衣が道場の天井に逆さまの体勢になってぶら下がっていることに亜門も男たちも度肝を抜かれる。
「お、お前、上から高みの見物を決め込むな! ぼうっとしてないで援護しろ!」
「ぼうっとしていたわけではござらん!」
「何⁉」
「屈強な男たちに力強くで抑え込まれる寸前の美男子に興味深々だったのでござる!」
「ふ、ふざけるな!」
「冗談でござる!」
「お前の場合、どこまでが冗談か分からん!」
「なにを悠長にしゃべっていやがる!」
「やっちまえ!」
「むっ!」
「『ぶっかけパウダー』!」
瑠衣が魂白刀を振って、天井から道場全体に粉をまき散らす。
「うおっ!」
「こ、粉で視界が……」
「はっ!」
「ぐはっ⁉」
亜門が魂旋刀を振るい、男たちの魂力を吸い取り、男たちは崩れ落ちる。
「お持ち還りだ……」
亜門は刀を鞘に納めて呟く。瑠衣が床に着地してうんうんと頷く。
「美男子は粉まみれでも絵になるニン!」
「お前のこの技、なんとかならんのか……?」
亜門は粉を払いながらぼやく。
「……ここはプールか」
「そうですね。体育科専用のプールです」
仁の呟きに四季が頷く。
「ここを通った方が近道なんですね?」
「情報によればそのようですね」
「ならば早く行きましょう」
「そうは行くか!」
「どわっ!」
脇から飛び出した競泳水着姿の男女たちに突き飛ばされ、仁たちはプールに落とされる。
「ふふっ! プールに落とせばこっちのものだ!」
「やってしまえ!」
「ぶはっ! ま、待ち伏せか⁉」
「どうやらその様ですね」
水中から顔を出して叫ぶ仁とは対照的に四季は冷静に呟く。
「行くぞ! 『魂目(コンメ)』!」
「な、なんだ! うわっ⁉」
仁は男に両手で叩かれる。続いて別の男に足をすくわれる。
「まだまだよ!」
「ぬおっ!」
仁は女に体をひっくり返される。水中で動きが思うように出来ない仁は困惑する。
「ははっ! 手も足も出まい!」
「こ、これは⁉」
「どうやら水泳の個人メドレーのことを『コンメ』と略すそうですね。バタフライ、平泳ぎ、背泳ぎを模した攻撃を立て続けに喰らっています……」
「す、すると最後は⁉」
「お察しの通り、自由形でフィニッシュです……」
「くっ……ならばこちらは犬かきで!」
「落ち着いて下さい。有効な対応とは思えません……」
「竹村先輩、魂昔物語集でなんとかなりませんか⁉」
「生憎、水に濡れてしまったので……なんともなりません」
「ええっ⁉」
「なにやらべらべら喋っているようだが、これで終わりだ!」
仁たちを包囲する男女が一斉にクロールの体勢に入る。仁が動揺する。
「ど、どうすれば……!」
「今は昔、駿河国に私市宗平という相撲人あり……」
「どわっ⁉」
四季は自分たちに群がってきた男女をバッタバッタとプールサイドに投げ込む。
「川の中で襲ってきた鮫を軽々と投げ飛ばした相撲取りの話を思い出しました……案外なんとかなるものですね。外國君、とどめを」
「は、はい! お持ち還りだ!」
急いでプールサイドに上がった仁が魂棒を振るって、相手の魂力を吸い取る。
「……仕掛けたつもりですが、待ち構えられていましたね。ならばあの厄介な方も……」
ゆっくりとプールサイドに上がった四季が顎に手を当てて呟く。
「くっ……」
「ちっ……」
グラウンドで超慈とステラが膝をつく。超慈が呟く。
「は、速い……」
「ははは! 遅えよ!」
夕暮れのグラウンドに高らかな笑い声が響く。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?


ちょっと大人な体験談はこちらです
神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない
ちょっと大人な体験談です。
日常に突然訪れる刺激的な体験。
少し非日常を覗いてみませんか?
あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ?
※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに
Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。
※不定期更新です。
※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。
上杉山御剣は躊躇しない
阿弥陀乃トンマージ
キャラ文芸
【第11回ネット小説大賞 一次選考通過作品】
新潟県は長岡市に住む青年、鬼ヶ島勇次はとある理由から妖を絶やす為の組織、妖絶講への入隊を志願する。
人の言葉を自由に操る不思議な黒猫に導かれるまま、山の中を進んでいく勇次。そこで黒猫から勇次に告げられたのはあまりにも衝撃的な事実だった!
勇次は凄腕の女剣士であり妖絶士である上杉山御剣ら個性の塊でしかない仲間たちとともに、妖退治の任務に臨む。
無双かつ爽快で華麗な息もつかせぬ剣戟アクション活劇、ここに開幕!
※第11回ネット小説大賞一次選考通過作品。
百合系サキュバスにモテてしまっていると言う話
釧路太郎
キャラ文芸
名門零楼館高校はもともと女子高であったのだが、様々な要因で共学になって数年が経つ。
文武両道を掲げる零楼館高校はスポーツ分野だけではなく進学実績も全国レベルで見ても上位に食い込んでいるのであった。
そんな零楼館高校の歴史において今まで誰一人として選ばれたことのない“特別指名推薦”に選ばれたのが工藤珠希なのである。
工藤珠希は身長こそ平均を超えていたが、運動や学力はいたって平均クラスであり性格の良さはあるものの特筆すべき才能も無いように見られていた。
むしろ、彼女の幼馴染である工藤太郎は様々な部活の助っ人として活躍し、中学生でありながら様々な競技のプロ団体からスカウトが来るほどであった。更に、学力面においても優秀であり国内のみならず海外への進学も不可能ではないと言われるほどであった。
“特別指名推薦”の話が学校に来た時は誰もが相手を間違えているのではないかと疑ったほどであったが、零楼館高校関係者は工藤珠希で間違いないという。
工藤珠希と工藤太郎は血縁関係はなく、複雑な家庭環境であった工藤太郎が幼いころに両親を亡くしたこともあって彼は工藤家の養子として迎えられていた。
兄妹同然に育った二人ではあったが、お互いが相手の事を守ろうとする良き関係であり、恋人ではないがそれ以上に信頼しあっている。二人の関係性は苗字が同じという事もあって夫婦と揶揄されることも多々あったのだ。
工藤太郎は県外にあるスポーツ名門校からの推薦も来ていてほぼ内定していたのだが、工藤珠希が零楼館高校に入学することを決めたことを受けて彼も零楼館高校を受験することとなった。
スポーツ分野でも名をはせている零楼館高校に工藤太郎が入学すること自体は何の違和感もないのだが、本来入学する予定であった高校関係者は落胆の声をあげていたのだ。だが、彼の出自も相まって彼の意志を否定する者は誰もいなかったのである。
二人が入学する零楼館高校には外に出ていない秘密があるのだ。
零楼館高校に通う生徒のみならず、教員職員運営者の多くがサキュバスでありそのサキュバスも一般的に知られているサキュバスと違い女性を対象とした変異種なのである。
かつては“秘密の花園”と呼ばれた零楼館女子高等学校もそういった意味を持っていたのだった。
ちなみに、工藤珠希は工藤太郎の事を好きなのだが、それは誰にも言えない秘密なのである。
この作品は「小説家になろう」「カクヨム」「ノベルアッププラス」「ノベルバ」「ノベルピア」にも掲載しております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる