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第1章
第2話(2)突然のチュートリアル
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「ふん!」
「うおっ!」
突然の攻撃を超慈はなんとかかわす。
「ちっ!」
「な、なんだ⁉」
超慈は距離を取って、襲撃者をよく観察する。赤く光る刀のようなものを持っている。自分と同じ制服を着ていることから見ても、愛京高校の男子生徒だろう。
「……今度は外さん」
「ひょ、ひょっとして……!」
端末が鳴る。取り出してみると、姫乃からの通話通知である。超慈は通話をオンにする。
「……お忙しいところ恐縮だ」
「なんすかこれ⁉」「これは⁉」「何事だし⁉」「どういうことだ⁉」
4人の声が重なる。一呼吸おいて姫乃が答える。
「……グループ通話だ。一斉に喋られても分からん……が、貴様らの問いたいことは分かる。一体どういう状況なのかということだろう?」
「そ、そうです!」
「昨夕の体育館での合魂で貴様らの魂力がそれなりに高いということが分かった」
「そ、それが何か?」
「魂力を探知・調査する方法というのはいくつかある……どのような経緯かまでは分からないが、貴様らの魂力は既にこの学園都市に大体知れ渡っている」
「えっ⁉」
「よって、貴様らは標的になった」
「ひょ、標的⁉」
「何をごちゃごちゃと話してやがる!」
「どわっ⁉」
男子が再び斬りかかってきたため、超慈は慌ててかわす。姫乃はマイペースに話を続ける。
「……ターゲットと言った方が良いかな?」
「い、いや、それは別にどっちでも良いですが、なんでそうなるんですか⁉」
「相手の魂力を吸収し、自己の魂力を高めるためだ」
「ええっ⁉」
「『合魂部』の入部説明会を勝ち抜いた貴様らは恰好の的だ」
「ま、まだ入部するって決めたわけじゃないですよ!」
「それはもはや大した問題ではない」
「へっ⁉」
「魂力を高め、魂道具を発現させた時点で、奴らにとっては無視出来ない存在になっている」
「奴らって誰ですか⁉」
「それは例えば……今貴様らを襲っている連中だ」
「おらっ!」
「ぐっ⁉」
別方向から別の男子が斬りかかってきたが、超慈はこれもなんとかかわす。
「ちっ! ちょこまかと!」
「増えた⁉ 相手は一人じゃないのか⁉」
「……見たところ、奴の配下どものようだな」
「はい⁉」
「使っている魂道具は……ふむ、『魂火煮弁刀(こんびにべんとう)』か……」
「ええっ⁉」
「なるほど、ちょうど昼食時だからな……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「なんだ?」
「も、もしかして部長さん、見える場所にいらっしゃいます?」
「まあ、貴様らをその場に誘導したようなものだからな……」
「ど、どこにいるんですか⁉」
「ばっちり見える場所……とだけ言っておこうか」
「そ、そんな⁉」
「ほら、よそ見をしている場合じゃないぞ」
「⁉ うおっと⁉」
また別の方向から男子が斬りかかってくる。超慈はすんでのところでかわす。
「避ける一方ではどうしようもないぞ」
「し、しかし!」
「今、貴様らは一つの分かれ道に立っている……」
「分かれ道⁉」
「そう、このまま訳も分からず、そいつらに魂力を吸い取られるか、それとも合魂部に入部し、魂力の高みを極めるか……さあ、前者と後者、どっちを選ぶ?」
「そ、そんなの決まっているでしょう!」
姫乃の問いかけに4人が揃って答える。
「前者だ!」「「「後者!」」」
「⁉ あ、あれ⁉」
「……優月超慈、貴様だけ違う答えだったようだが……?」
「い、いや、後者です! あの、あれです、見る方向が逆だったんです!」
「なんだそれは……まあいい、全員、高みを極めるつもりがあるということだな」
「は、はい!」
「うむ! その意気やよし!」
4人の返答に姫乃は満足気に頷く。超慈が小声で呟く。
「正直高みを極めるって意味分からねえけど……」
「言ったそばからよそ見をするな」
「! よっと!」
「反応が良いな……」
超慈の様子を見て、姫乃は感心したように呟く。超慈が声を上げる。
「な、なんか、気のせいか敵が多くなっているような!」
「気のせいではない。広場中が敵だと思え」
「ぶ、部長、見てないで加勢して下さいよ!」
「……ゲームの序盤から強キャラを使用出来たら興醒めだろう」
「じ、自分のことを強キャラ扱いっすか……って、序盤⁉」
「そうだ、これはいわば操作方法を確認するチュートリアルだ」
「チュ、チュートリアル⁉」
「ただし! 敵キャラはガチでくるチュートリアルだ」
「それってチュートリアルって言わないでしょう⁉」
超慈が再び声を上げる。姫乃が淡々と話す。
「繰り返しになるが、防戦一方だぞ、そろそろ仕掛けろ。今この広場は合魂のバトルフィールドと化している。周囲からは見えんし、一般人は迷い込んでいない、その点は安心しろ」
「そ、それもそうなんですが!」
「うん? まだなにかあるか?」
姫乃が首を傾げる。
「魂道具の発現方法が分からないのですが!」
「なんだ、そんなことか」
姫乃がため息をつく。超慈がたまらず叫ぶ。
「そんなって! 大事なことですよ!」
「集中力を研ぎ澄まし、自身のイメージを膨らませろ……」
「集中力……イメージ……」
超慈は姫乃の言葉を反芻する。姫乃が声を上げる。
「そして思いのままに叫ぶのだ!」
「魂~道~具!」「よっ!」「はっ!」「ふん……」
「あ、あれ……?」
超慈は周囲の様子を見て首を捻る。姫乃は笑いをこらえながら話す。
「べ、別にそこまで声を張る必要はないぞ、こ、魂~道~具!って……」
「ええっ⁉」
超慈の顔が真っ赤になる。
「うおっ!」
突然の攻撃を超慈はなんとかかわす。
「ちっ!」
「な、なんだ⁉」
超慈は距離を取って、襲撃者をよく観察する。赤く光る刀のようなものを持っている。自分と同じ制服を着ていることから見ても、愛京高校の男子生徒だろう。
「……今度は外さん」
「ひょ、ひょっとして……!」
端末が鳴る。取り出してみると、姫乃からの通話通知である。超慈は通話をオンにする。
「……お忙しいところ恐縮だ」
「なんすかこれ⁉」「これは⁉」「何事だし⁉」「どういうことだ⁉」
4人の声が重なる。一呼吸おいて姫乃が答える。
「……グループ通話だ。一斉に喋られても分からん……が、貴様らの問いたいことは分かる。一体どういう状況なのかということだろう?」
「そ、そうです!」
「昨夕の体育館での合魂で貴様らの魂力がそれなりに高いということが分かった」
「そ、それが何か?」
「魂力を探知・調査する方法というのはいくつかある……どのような経緯かまでは分からないが、貴様らの魂力は既にこの学園都市に大体知れ渡っている」
「えっ⁉」
「よって、貴様らは標的になった」
「ひょ、標的⁉」
「何をごちゃごちゃと話してやがる!」
「どわっ⁉」
男子が再び斬りかかってきたため、超慈は慌ててかわす。姫乃はマイペースに話を続ける。
「……ターゲットと言った方が良いかな?」
「い、いや、それは別にどっちでも良いですが、なんでそうなるんですか⁉」
「相手の魂力を吸収し、自己の魂力を高めるためだ」
「ええっ⁉」
「『合魂部』の入部説明会を勝ち抜いた貴様らは恰好の的だ」
「ま、まだ入部するって決めたわけじゃないですよ!」
「それはもはや大した問題ではない」
「へっ⁉」
「魂力を高め、魂道具を発現させた時点で、奴らにとっては無視出来ない存在になっている」
「奴らって誰ですか⁉」
「それは例えば……今貴様らを襲っている連中だ」
「おらっ!」
「ぐっ⁉」
別方向から別の男子が斬りかかってきたが、超慈はこれもなんとかかわす。
「ちっ! ちょこまかと!」
「増えた⁉ 相手は一人じゃないのか⁉」
「……見たところ、奴の配下どものようだな」
「はい⁉」
「使っている魂道具は……ふむ、『魂火煮弁刀(こんびにべんとう)』か……」
「ええっ⁉」
「なるほど、ちょうど昼食時だからな……」
「ちょ、ちょっと待って下さい!」
「なんだ?」
「も、もしかして部長さん、見える場所にいらっしゃいます?」
「まあ、貴様らをその場に誘導したようなものだからな……」
「ど、どこにいるんですか⁉」
「ばっちり見える場所……とだけ言っておこうか」
「そ、そんな⁉」
「ほら、よそ見をしている場合じゃないぞ」
「⁉ うおっと⁉」
また別の方向から男子が斬りかかってくる。超慈はすんでのところでかわす。
「避ける一方ではどうしようもないぞ」
「し、しかし!」
「今、貴様らは一つの分かれ道に立っている……」
「分かれ道⁉」
「そう、このまま訳も分からず、そいつらに魂力を吸い取られるか、それとも合魂部に入部し、魂力の高みを極めるか……さあ、前者と後者、どっちを選ぶ?」
「そ、そんなの決まっているでしょう!」
姫乃の問いかけに4人が揃って答える。
「前者だ!」「「「後者!」」」
「⁉ あ、あれ⁉」
「……優月超慈、貴様だけ違う答えだったようだが……?」
「い、いや、後者です! あの、あれです、見る方向が逆だったんです!」
「なんだそれは……まあいい、全員、高みを極めるつもりがあるということだな」
「は、はい!」
「うむ! その意気やよし!」
4人の返答に姫乃は満足気に頷く。超慈が小声で呟く。
「正直高みを極めるって意味分からねえけど……」
「言ったそばからよそ見をするな」
「! よっと!」
「反応が良いな……」
超慈の様子を見て、姫乃は感心したように呟く。超慈が声を上げる。
「な、なんか、気のせいか敵が多くなっているような!」
「気のせいではない。広場中が敵だと思え」
「ぶ、部長、見てないで加勢して下さいよ!」
「……ゲームの序盤から強キャラを使用出来たら興醒めだろう」
「じ、自分のことを強キャラ扱いっすか……って、序盤⁉」
「そうだ、これはいわば操作方法を確認するチュートリアルだ」
「チュ、チュートリアル⁉」
「ただし! 敵キャラはガチでくるチュートリアルだ」
「それってチュートリアルって言わないでしょう⁉」
超慈が再び声を上げる。姫乃が淡々と話す。
「繰り返しになるが、防戦一方だぞ、そろそろ仕掛けろ。今この広場は合魂のバトルフィールドと化している。周囲からは見えんし、一般人は迷い込んでいない、その点は安心しろ」
「そ、それもそうなんですが!」
「うん? まだなにかあるか?」
姫乃が首を傾げる。
「魂道具の発現方法が分からないのですが!」
「なんだ、そんなことか」
姫乃がため息をつく。超慈がたまらず叫ぶ。
「そんなって! 大事なことですよ!」
「集中力を研ぎ澄まし、自身のイメージを膨らませろ……」
「集中力……イメージ……」
超慈は姫乃の言葉を反芻する。姫乃が声を上げる。
「そして思いのままに叫ぶのだ!」
「魂~道~具!」「よっ!」「はっ!」「ふん……」
「あ、あれ……?」
超慈は周囲の様子を見て首を捻る。姫乃は笑いをこらえながら話す。
「べ、別にそこまで声を張る必要はないぞ、こ、魂~道~具!って……」
「ええっ⁉」
超慈の顔が真っ赤になる。
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