5 / 51
第1章
第1話(4)お持ち還り
しおりを挟む
「応用形が発現するとは……思っていたより素質はあるかもしれないな」
姫乃が呟く。
「応用形? なんで刀なんですか?」
「貴様はコンタクトを持っていたか?」
「は、はい……」
「つまりはそれが魂択刀になったということだ」
「つまりって! 説明が下手!」
超慈の言葉に姫乃が若干ムッとする。
「そういうものなのだから他に説明しようがない……」
「じゃあ彼女が持っているあの棒のようなものは⁉」
超慈が向かい合う女子の持つ物を指差して尋ねる。姫乃が答える。
「私も全ての魂道具に精通しているわけではないが……あれは『魂棒(こんぼう)』だな」
「魂棒⁉」
「棍棒が魂道具として発現したのだろうな」
「よく分からないけど、こんなこともあろうかと棍棒を持ち歩いていて良かったわ~」
「こんなこともって! どんな想定していたらそうなるんだよ!」
女子の言葉に超慈は思わず突っ込みを入れる。姫乃が冷静に呟く。
「あれはそのままの形で魂道具として発現している……基本形というやつだな」
「基本形……」
「ねえ、部長さん、合コンを続けて良いんでしょ?」
「ああ、邪魔をして済まなかったな。存分に魂をぶつけ合え」
女子の問いに姫乃が頷く。女子が笑顔を浮かべる。
「さて、再開といきましょうか!」
「ぐっ⁉」
女子の振り下ろした魂棒を超慈は二本の魂択刀で受け止める。
「へえ? 細身なのに意外と力があるのね? ますます興味が湧いてきちゃったわ……」
「俺はどんどん引いているけどな! ふん!」
「む!」
超慈は女子の魂棒をなんとか押し返すと、距離を取る。
「はあ、はあ……」
「休ませないわよ!」
「! 速い!」
「せい!」
女子があっという間に距離を詰め、魂棒を横に薙ぐ。
「ぐっ!」
鋭い一撃だったが、超慈はなんとかこれも受け止める。
「やるわね! ならば連続攻撃はどうかしら⁉」
「⁉」
「おらおらおら!」
女子が魂棒を振り回す。
「ぐうぅ!」
超慈は二刀流を器用に扱い、連続攻撃をどうにかさばく。
「えい!」
「どおっ⁉」
女子の攻撃速度がわずかに上回り、受け止めきれなかった超慈は最後の攻撃を喰らって、吹き飛ばされ、またもや壁に打ち付けられる。
「ふふっ!」
「や、やっぱり、パワーで打ち負けるな……」
「よくやった方だけど、もうそろそろ本当に終わりにしましょう!」
「終わりって、冗談じゃねえよ……ってか、なにがどうなったら終わりになるんだ?」
超慈は視線を姫乃に向ける。姫乃は肩をすくめる。
「知りたいか?」
「いや、そりゃあ知りたいでしょう!」
「合魂とは魂のぶつかり合いではあるのだが、相手の持つ魂力(こんりょく)を吸い取って、自らに還元……『お持ち還り』するのも大きな目的だな」
「魂力?」
「ああ、魂の力だ」
「それを吸い取られるとどうなるんですか?」
「吸い取られ具合にもよるのだが……大体は魂道具をしばらく発現出来なくなるな」
「……と、いうことは?」
「合魂には魂道具を持って参加することは出来なくなるな」
「……それはむしろ良いことなんじゃないか?」
超慈は顎に手をあてて呟く。姫乃は淡々と呟く。
「まあ、どのように振る舞うのかは自由だが、魂力を吸い取られると色々マズいかもな……」
「マズい?」
「例えば何らかの後遺症が残るかもしれんな」
「え⁉ マジですか⁉」
「その辺はよく知らん。生憎、魂力を完全な形で吸い取られたことがないものでな」
姫乃が両手をわざとらしく広げる。超慈が愕然とする。
「そ、そんな……」
「お話中のところ悪いけど、これで終わりよ!」
「うおっ!」
「ちっ!」
女子の振るった魂棒を超慈は横に飛んでなんとかかわす。
「こ、こうなったら勝つしかないってことかよ!」
超慈の叫びに姫乃が頷く。
「まあ、そうなるな。その二本の刀であの女を打ち倒すしかあるまい」
「……出来れば女の子に手荒な真似はしたくない!」
「ほう、この期に及んでも紳士的だな……よかろう、少しヒントをやる」
「ヒント?」
首を捻る超慈に姫乃が説明する。
「魂択刀とは『魂を選択する』刀……相手の魂の中心、いわゆるコアの部分を見極めて突けば、与えるダメージは最小限に抑えることが出来る。魂択刀はそれが比較的容易な魂道具だ」
「見極めるって……どうやって?」
「魂択刀を使ったことが無いものでな、さっぱり分からん」
「わ、分からんって……」
「あとは……」
「あとは?」
「気合で頑張れ」
「き、気合って⁉」
「人をほったらかして、盛り上がらないでよ!」
女子が魂棒を振りかざしながら突進してくる。
「くっ、どうする⁉ ⁉」
超慈が思わず片目をつむるが、その瞬間、女子の体の一部分が光ったように見えた。
「うおおっ!」
「ええい! ままよ!」
「⁉」
超慈の振るった刀が女子の体の光った部分を突いた。超慈は無我夢中で叫ぶ。
「お、『お持ち還り』だ!」
「……」
女子は倒れこむ。魂棒も消える。超慈が恐る恐るのぞき込み、呟く。
「や、やったのか……? ん⁉」
体育館の照明がパッと明るくなる。いつの間にか壇上にいた姫乃が大声で告げる。
「そこまでだ! 最後まで立っていた者たち……合魂部へようこそ!」
「ええっ⁉ ……な、なんか気が抜けちまった……」
超慈は気を失ってその場に倒れこむ。
姫乃が呟く。
「応用形? なんで刀なんですか?」
「貴様はコンタクトを持っていたか?」
「は、はい……」
「つまりはそれが魂択刀になったということだ」
「つまりって! 説明が下手!」
超慈の言葉に姫乃が若干ムッとする。
「そういうものなのだから他に説明しようがない……」
「じゃあ彼女が持っているあの棒のようなものは⁉」
超慈が向かい合う女子の持つ物を指差して尋ねる。姫乃が答える。
「私も全ての魂道具に精通しているわけではないが……あれは『魂棒(こんぼう)』だな」
「魂棒⁉」
「棍棒が魂道具として発現したのだろうな」
「よく分からないけど、こんなこともあろうかと棍棒を持ち歩いていて良かったわ~」
「こんなこともって! どんな想定していたらそうなるんだよ!」
女子の言葉に超慈は思わず突っ込みを入れる。姫乃が冷静に呟く。
「あれはそのままの形で魂道具として発現している……基本形というやつだな」
「基本形……」
「ねえ、部長さん、合コンを続けて良いんでしょ?」
「ああ、邪魔をして済まなかったな。存分に魂をぶつけ合え」
女子の問いに姫乃が頷く。女子が笑顔を浮かべる。
「さて、再開といきましょうか!」
「ぐっ⁉」
女子の振り下ろした魂棒を超慈は二本の魂択刀で受け止める。
「へえ? 細身なのに意外と力があるのね? ますます興味が湧いてきちゃったわ……」
「俺はどんどん引いているけどな! ふん!」
「む!」
超慈は女子の魂棒をなんとか押し返すと、距離を取る。
「はあ、はあ……」
「休ませないわよ!」
「! 速い!」
「せい!」
女子があっという間に距離を詰め、魂棒を横に薙ぐ。
「ぐっ!」
鋭い一撃だったが、超慈はなんとかこれも受け止める。
「やるわね! ならば連続攻撃はどうかしら⁉」
「⁉」
「おらおらおら!」
女子が魂棒を振り回す。
「ぐうぅ!」
超慈は二刀流を器用に扱い、連続攻撃をどうにかさばく。
「えい!」
「どおっ⁉」
女子の攻撃速度がわずかに上回り、受け止めきれなかった超慈は最後の攻撃を喰らって、吹き飛ばされ、またもや壁に打ち付けられる。
「ふふっ!」
「や、やっぱり、パワーで打ち負けるな……」
「よくやった方だけど、もうそろそろ本当に終わりにしましょう!」
「終わりって、冗談じゃねえよ……ってか、なにがどうなったら終わりになるんだ?」
超慈は視線を姫乃に向ける。姫乃は肩をすくめる。
「知りたいか?」
「いや、そりゃあ知りたいでしょう!」
「合魂とは魂のぶつかり合いではあるのだが、相手の持つ魂力(こんりょく)を吸い取って、自らに還元……『お持ち還り』するのも大きな目的だな」
「魂力?」
「ああ、魂の力だ」
「それを吸い取られるとどうなるんですか?」
「吸い取られ具合にもよるのだが……大体は魂道具をしばらく発現出来なくなるな」
「……と、いうことは?」
「合魂には魂道具を持って参加することは出来なくなるな」
「……それはむしろ良いことなんじゃないか?」
超慈は顎に手をあてて呟く。姫乃は淡々と呟く。
「まあ、どのように振る舞うのかは自由だが、魂力を吸い取られると色々マズいかもな……」
「マズい?」
「例えば何らかの後遺症が残るかもしれんな」
「え⁉ マジですか⁉」
「その辺はよく知らん。生憎、魂力を完全な形で吸い取られたことがないものでな」
姫乃が両手をわざとらしく広げる。超慈が愕然とする。
「そ、そんな……」
「お話中のところ悪いけど、これで終わりよ!」
「うおっ!」
「ちっ!」
女子の振るった魂棒を超慈は横に飛んでなんとかかわす。
「こ、こうなったら勝つしかないってことかよ!」
超慈の叫びに姫乃が頷く。
「まあ、そうなるな。その二本の刀であの女を打ち倒すしかあるまい」
「……出来れば女の子に手荒な真似はしたくない!」
「ほう、この期に及んでも紳士的だな……よかろう、少しヒントをやる」
「ヒント?」
首を捻る超慈に姫乃が説明する。
「魂択刀とは『魂を選択する』刀……相手の魂の中心、いわゆるコアの部分を見極めて突けば、与えるダメージは最小限に抑えることが出来る。魂択刀はそれが比較的容易な魂道具だ」
「見極めるって……どうやって?」
「魂択刀を使ったことが無いものでな、さっぱり分からん」
「わ、分からんって……」
「あとは……」
「あとは?」
「気合で頑張れ」
「き、気合って⁉」
「人をほったらかして、盛り上がらないでよ!」
女子が魂棒を振りかざしながら突進してくる。
「くっ、どうする⁉ ⁉」
超慈が思わず片目をつむるが、その瞬間、女子の体の一部分が光ったように見えた。
「うおおっ!」
「ええい! ままよ!」
「⁉」
超慈の振るった刀が女子の体の光った部分を突いた。超慈は無我夢中で叫ぶ。
「お、『お持ち還り』だ!」
「……」
女子は倒れこむ。魂棒も消える。超慈が恐る恐るのぞき込み、呟く。
「や、やったのか……? ん⁉」
体育館の照明がパッと明るくなる。いつの間にか壇上にいた姫乃が大声で告げる。
「そこまでだ! 最後まで立っていた者たち……合魂部へようこそ!」
「ええっ⁉ ……な、なんか気が抜けちまった……」
超慈は気を失ってその場に倒れこむ。
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【⁉】意味がわかると怖い話【解説あり】
絢郷水沙
ホラー
普通に読めばそうでもないけど、よく考えてみたらゾクッとする、そんな怖い話です。基本1ページ完結。
下にスクロールするとヒントと解説があります。何が怖いのか、ぜひ推理しながら読み進めてみてください。
※全話オリジナル作品です。

スライム10,000体討伐から始まるハーレム生活
昼寝部
ファンタジー
この世界は12歳になったら神からスキルを授かることができ、俺も12歳になった時にスキルを授かった。
しかし、俺のスキルは【@&¥#%】と正しく表記されず、役に立たないスキルということが判明した。
そんな中、両親を亡くした俺は妹に不自由のない生活を送ってもらうため、冒険者として活動を始める。
しかし、【@&¥#%】というスキルでは強いモンスターを討伐することができず、3年間冒険者をしてもスライムしか倒せなかった。
そんなある日、俺がスライムを10,000体討伐した瞬間、スキル【@&¥#%】がチートスキルへと変化して……。
これは、ある日突然、最強の冒険者となった主人公が、今まで『スライムしか倒せないゴミ』とバカにしてきた奴らに“ざまぁ”し、美少女たちと幸せな日々を過ごす物語。
Bグループの少年
櫻井春輝
青春
クラスや校内で目立つグループをA(目立つ)のグループとして、目立たないグループはC(目立たない)とすれば、その中間のグループはB(普通)となる。そんなカテゴリー分けをした少年はAグループの悪友たちにふりまわされた穏やかとは言いにくい中学校生活と違い、高校生活は穏やかに過ごしたいと考え、高校ではB(普通)グループに入り、その中でも特に目立たないよう存在感を薄く生活し、平穏な一年を過ごす。この平穏を逃すものかと誓う少年だが、ある日、特A(特に目立つ)の美少女を助けたことから変化を始める。少年は地味で平穏な生活を守っていけるのか……?
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる