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第1章
第1話(2)説明少なの説明会
しおりを挟む「ええ……」
美人部長の意味不明な話に体育館がざわつく。美人部長はニヤッと笑い、こう付け足す。
「詳細については省く」
「いや、省くのかよ」
超慈がボソッと呟く。
「興味・関心を抱いた者は今日の夕方5時過ぎにこの体育館に集まってくれ。詳しい説明はその時に行う……以上だ」
美人部長は颯爽と壇上から降りる。
「な、なんだったんだ……」
「どうよ超慈、行くのか?」
「い、いや……ちょっと……無いな」
「だよな」
仁の問いに超慈は苦笑いを浮かべつつ首を振る。仁も笑う。
「……と思ったら、何故に俺はここにいるんだ?」
放課後、午後5時を過ぎた頃、超慈は体育館に足を運んでいた。体育館は照明をやや落としているようで薄暗く、今ひとつ様子が分からなかったが、どうやら自分の他に何名かが集まっているということを超慈は理解した。
「ほう……意外と集まったな」
「!」
壇上からよく通る声がする。超慈は壇上に視線を向ける。暗くて顔は見えないが、昼間の美人部長だということは声で分かった。
「興味・関心を抱く時点で素質はあるということだな……改めて自己紹介をさせてもらおう、三年の灰冠姫乃だ。これから簡単な入部説明会を始める……」
「ま、まあ、一応聞いておくか……」
超慈は小声で呟く。
「そもそも合導魂波というものは古来より行われており、それが平安時代に『合魂道』として体系化され……」
「やっぱり俺の知っている合コンと違う!」
超慈が思わず声を上げる。姫乃が首を傾げる。
「む……何か質問があるのか?」
「い、いえ……すいません……」
超慈は慌てて謝罪する。姫乃は一呼吸置いて話を再開する。
「続けるぞ……合魂道にはいくつかの流派が存在するのだが……」
「ね~部長さんさ~そんな退屈な話はもういいって♪」
「そうそう、それより俺たちと遊ばない?」
「ん……?」
壇上に二人の男が上がる。薄暗いために顔までは分からないが、制服は着崩しており、素行のよろしくない生徒であるということを超慈は察する。姫乃が尋ねる。
「遊ぶとはどういうことだ?」
「またまた~合コンなら名駅近くのカラオケでも行って盛り上がろうよ~」
「そうそう、あそこのカラオケボックスで俺らの先輩たちバイトしてるからさ、安くしてくれんだよ。京高の可愛い娘連れてこいよって言われてるしさ」
そう言って男たちは下卑な笑い声をあげる。姫乃がため息をつきながら淡々と呟く。
「はあ……わが校はそれなりに偏差値が高いはずなのだが、貴様らのような程度の低い連中が必ず一定数は混ざるのだな……不思議なものだ」
「あん? 程度の低いだと?」
「言葉を理解するのだな。リビドーに取りつかれた猿かと思ったぞ」
「さ、猿だと⁉」
「貴様らの相手をしている暇などない、さっさと動物園に帰れ」
姫乃は心底面倒くさそうに手をひらひらとさせる。
「い、良い度胸してんじゃねえか、パイセン!」
「ちょっと痛い目を見てもらうぜ、分からせてやる!」
逆上した男たちが姫乃に迫る。超慈が叫ぶ。
「あ、危ない!」
「……」
「! が、がはっ……」
「ぐはっ……」
次の瞬間、男たちがその場に崩れ落ちる。姫乃が掲げた杖をさっと下ろす。
「ふん……」
「ま、まさか、あの杖で男二人をのしたのか……?」
超慈は驚く。姫乃が正面に向き直って告げる。
「不純な輩は排除した。これで人数的にもちょうど良いな。それでは『合魂』を始めよう!」
「なっ……」
体育館に集まった者たちから戸惑い気味の声が上がる。
「自分で言うのもなんだが、私は説明が不得手だ。『習うより慣れよ』とはよく言ったもの。さっそく諸君らにはこの体育館で魂のぶつかり合いをしてもらう」
「た、魂のぶつかり合いと言っても、具体的にどうすれば?」
ある者が至極もっともな疑問を口にする。
「やり方は人それぞれだ」
「ひ、人それぞれって……」
「互いの魂を合わせることによって生じる波動を導く……要は生み出されるエネルギーを感じ取るということだな」
(やべえ……ルックスに釣られたが、あの女マジで頭逝っちゃってる……このままだと変な壺とか買わされかねん。今のうちに……ん?)
密かに体育館から出ようとした超慈だったが、何故か扉が開かない。
「ああ、この体育館は小一時間ほどバトルフィールドと化している。合魂が決着するまでは外に出ることは出来んぞ」
「はあ⁉」
超慈は大きな声を上げる。姫乃が告げる。
「諸君らも知っての通り、わが校は広大だ。この体育館もかなりの広さがある。存分に暴れまくってくれて構わないぞ」
「あ、暴れるって……」
「合魂でのことは現実空間には影響しない。ここに転がっている輩どももちょっと気を失っているだけのことだ」
「……ケガの心配はないってことですか?」
「ああ、大丈夫! ……なはずだ」
「はずって言った! 不確実なんだ!」
「……まあいい、そろそろ始めるぞ」
「あっ!」
騒ぐ超慈を無視して姫乃が指を鳴らす。周囲の空気が変わったことを超慈は察する。
「ふふふ……」
「なっ……?」
超慈の近くに大柄な女子が迫る。霊長類最強の座も狙えるほど屈強な体付きをしている。
「ふふ……」
「な、なにか御用でしょうか?」
超慈は丁寧にその女子に尋ねる。
「……貴方、昼間見かけたわ。アタシの好みのタイプよ」
「そ、それはどうも……」
「アタシと合コンしましょうよ!」
「うおっ⁉」
女子が光る棒のようなもので超慈に殴りかかってきたため、超慈は慌ててそれをかわす。体育館の硬い床が深くえぐれる。
「へえ、意外とすばしっこいわね! でもアタシって逃げられる方が逆に燃えるのよ!」
「な、なんだ、あの棒は⁉ それにあの破壊力……喰らったらひとたまりもないぞ!」
「ほう、もう発現させている者がいるようだな……その調子で存分にぶつかり合え!」
姫乃が壇上から声をかける。
「ええっ⁉」
超慈が困惑気味に叫ぶ。
美人部長の意味不明な話に体育館がざわつく。美人部長はニヤッと笑い、こう付け足す。
「詳細については省く」
「いや、省くのかよ」
超慈がボソッと呟く。
「興味・関心を抱いた者は今日の夕方5時過ぎにこの体育館に集まってくれ。詳しい説明はその時に行う……以上だ」
美人部長は颯爽と壇上から降りる。
「な、なんだったんだ……」
「どうよ超慈、行くのか?」
「い、いや……ちょっと……無いな」
「だよな」
仁の問いに超慈は苦笑いを浮かべつつ首を振る。仁も笑う。
「……と思ったら、何故に俺はここにいるんだ?」
放課後、午後5時を過ぎた頃、超慈は体育館に足を運んでいた。体育館は照明をやや落としているようで薄暗く、今ひとつ様子が分からなかったが、どうやら自分の他に何名かが集まっているということを超慈は理解した。
「ほう……意外と集まったな」
「!」
壇上からよく通る声がする。超慈は壇上に視線を向ける。暗くて顔は見えないが、昼間の美人部長だということは声で分かった。
「興味・関心を抱く時点で素質はあるということだな……改めて自己紹介をさせてもらおう、三年の灰冠姫乃だ。これから簡単な入部説明会を始める……」
「ま、まあ、一応聞いておくか……」
超慈は小声で呟く。
「そもそも合導魂波というものは古来より行われており、それが平安時代に『合魂道』として体系化され……」
「やっぱり俺の知っている合コンと違う!」
超慈が思わず声を上げる。姫乃が首を傾げる。
「む……何か質問があるのか?」
「い、いえ……すいません……」
超慈は慌てて謝罪する。姫乃は一呼吸置いて話を再開する。
「続けるぞ……合魂道にはいくつかの流派が存在するのだが……」
「ね~部長さんさ~そんな退屈な話はもういいって♪」
「そうそう、それより俺たちと遊ばない?」
「ん……?」
壇上に二人の男が上がる。薄暗いために顔までは分からないが、制服は着崩しており、素行のよろしくない生徒であるということを超慈は察する。姫乃が尋ねる。
「遊ぶとはどういうことだ?」
「またまた~合コンなら名駅近くのカラオケでも行って盛り上がろうよ~」
「そうそう、あそこのカラオケボックスで俺らの先輩たちバイトしてるからさ、安くしてくれんだよ。京高の可愛い娘連れてこいよって言われてるしさ」
そう言って男たちは下卑な笑い声をあげる。姫乃がため息をつきながら淡々と呟く。
「はあ……わが校はそれなりに偏差値が高いはずなのだが、貴様らのような程度の低い連中が必ず一定数は混ざるのだな……不思議なものだ」
「あん? 程度の低いだと?」
「言葉を理解するのだな。リビドーに取りつかれた猿かと思ったぞ」
「さ、猿だと⁉」
「貴様らの相手をしている暇などない、さっさと動物園に帰れ」
姫乃は心底面倒くさそうに手をひらひらとさせる。
「い、良い度胸してんじゃねえか、パイセン!」
「ちょっと痛い目を見てもらうぜ、分からせてやる!」
逆上した男たちが姫乃に迫る。超慈が叫ぶ。
「あ、危ない!」
「……」
「! が、がはっ……」
「ぐはっ……」
次の瞬間、男たちがその場に崩れ落ちる。姫乃が掲げた杖をさっと下ろす。
「ふん……」
「ま、まさか、あの杖で男二人をのしたのか……?」
超慈は驚く。姫乃が正面に向き直って告げる。
「不純な輩は排除した。これで人数的にもちょうど良いな。それでは『合魂』を始めよう!」
「なっ……」
体育館に集まった者たちから戸惑い気味の声が上がる。
「自分で言うのもなんだが、私は説明が不得手だ。『習うより慣れよ』とはよく言ったもの。さっそく諸君らにはこの体育館で魂のぶつかり合いをしてもらう」
「た、魂のぶつかり合いと言っても、具体的にどうすれば?」
ある者が至極もっともな疑問を口にする。
「やり方は人それぞれだ」
「ひ、人それぞれって……」
「互いの魂を合わせることによって生じる波動を導く……要は生み出されるエネルギーを感じ取るということだな」
(やべえ……ルックスに釣られたが、あの女マジで頭逝っちゃってる……このままだと変な壺とか買わされかねん。今のうちに……ん?)
密かに体育館から出ようとした超慈だったが、何故か扉が開かない。
「ああ、この体育館は小一時間ほどバトルフィールドと化している。合魂が決着するまでは外に出ることは出来んぞ」
「はあ⁉」
超慈は大きな声を上げる。姫乃が告げる。
「諸君らも知っての通り、わが校は広大だ。この体育館もかなりの広さがある。存分に暴れまくってくれて構わないぞ」
「あ、暴れるって……」
「合魂でのことは現実空間には影響しない。ここに転がっている輩どももちょっと気を失っているだけのことだ」
「……ケガの心配はないってことですか?」
「ああ、大丈夫! ……なはずだ」
「はずって言った! 不確実なんだ!」
「……まあいい、そろそろ始めるぞ」
「あっ!」
騒ぐ超慈を無視して姫乃が指を鳴らす。周囲の空気が変わったことを超慈は察する。
「ふふふ……」
「なっ……?」
超慈の近くに大柄な女子が迫る。霊長類最強の座も狙えるほど屈強な体付きをしている。
「ふふ……」
「な、なにか御用でしょうか?」
超慈は丁寧にその女子に尋ねる。
「……貴方、昼間見かけたわ。アタシの好みのタイプよ」
「そ、それはどうも……」
「アタシと合コンしましょうよ!」
「うおっ⁉」
女子が光る棒のようなもので超慈に殴りかかってきたため、超慈は慌ててそれをかわす。体育館の硬い床が深くえぐれる。
「へえ、意外とすばしっこいわね! でもアタシって逃げられる方が逆に燃えるのよ!」
「な、なんだ、あの棒は⁉ それにあの破壊力……喰らったらひとたまりもないぞ!」
「ほう、もう発現させている者がいるようだな……その調子で存分にぶつかり合え!」
姫乃が壇上から声をかける。
「ええっ⁉」
超慈が困惑気味に叫ぶ。
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