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第1章
第12話(1)神様仏様鬼様
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12
「むっ!」
「さて……」
水仙が右手を掲げると、一体を残して、融合した巨大な影が三体散らばる。
「さ、散開した!」
深海が声を上げる。
「各自迎撃するぞ!」
「ちょっと待った……」
動き出そうとした三丸を夜塚が呼び止める。
「なんだ⁉」
「ボクらはこいつを止めるのに専念した方が良い……」
夜塚が水仙を指差す。
「むう……」
三丸が唇を噛む。
「戦力の分散は愚策だと言いますが……」
深海が眼鏡の縁を触りながら呟く。
「愚策? とんでもない」
夜塚が深海に視線を向け、両手を広げる。
「ええ?」
「戦力は十分に揃っているさ」
「せ、戦力って……」
深海が周囲を見回す。
「気付かないのかい? 眼鏡を替えた方が良いよ、破竹……」
夜塚が冗談っぽく笑みを浮かべる。
「ま、まさか……!」
深海がハッとした表情になる。
「……そのまさかさ」
「……大丈夫なのか?」
三丸が夜塚に問う。
「ここは、彼らのことを信じようじゃないか……言い換えるなら、彼らを第四部隊に選抜した己の眼にそれぞれ自信を持とうよ」
「ふっ……それもそうだな」
三丸が体の向きを水仙に向ける。
「まずは一体を確実に撃破ですね……」
「そういうこと♪」
深海の言葉に夜塚が笑顔で頷く。
♢
「各自、三人、もしくは四人ずつに分かれて迎撃だ!」
葉が周囲に指示を出す。
「とりあえずてめえに一番近い奴に当たれ!」
慶が周りに声をかける。
「落ち着いて対応するんだ!」
葉が冷静になるよう呼び掛ける。
「とりあえず勢いでバーっと、ガーっとやっちまえ!」
慶が身振り手振りで声を上げる。
「この影は!」
「こいつは!」
「自分がやる!」
「オイラがやる!」
葉と慶が隣り合わせで叫ぶ。
「「なっ⁉」」
葉と慶が顔を見合わせる。
「な、なんで貴様がここにいる!」
「そ、それはこっちの台詞だ!」
「そっちに行け!」
「そっちこそそっちに行けよ!」
葉と慶が言い合いをする。
「むう……」
「ちい……」
葉と慶が睨み合う。
「はあ……不毛な争いはやめろよ……」
二人の傍らに立つ蘭がため息交じりに呟く。
「これは剃っているんだよ!」
慶が自らの頭を撫でながら、蘭に向かって声を上げる。
「そこには反応するんだな……」
蘭が呆れる。葉が声を上げる。
「ふん……貴様が行かないというのならば、自分が行く!」
「まあ、待てよ、佐々美ちゃん……今さら悠長に席替えしている余裕はないぜ?」
「む……」
蘭の言葉に葉が冷静になる。蘭が頷く。
「分かれば結構……とりま、この影はアタイらでぶっ潰すぞ!」
蘭が金棒を巨大な影に向ける。
「グオオア……」
巨大な影が蘭たちに向かってくる。
「こういうのは先手必勝だ!」
蘭が影に飛びかかる。
「グオッ!」
「なにっ⁉」
蘭の金棒が軽く受け止められる。
「グオオッ!」
「どわあっ⁉」
蘭が弾き飛ばされ、岩壁に打ち付けられる。
「い、一番槍を取られちまった⁉」
「そ、そんなことを言っている場合か⁉ 志波田隊員のことを心配しろ!」
慶に葉が注意する。
「ああ、あれくらいなら大丈夫だろう。タフそうだし……」
「あれくらいって!」
「へへっ、全然大丈夫だぜ……」
立ち上がった蘭がゆっくりと歩いてくる。頭をはじめ、体中から血を流している。
「だ、大丈夫じゃない⁉」
葉が愕然とする。
「こんなもん、唾つけときゃ治るさ……」
「むしろ悪化するぞ!」
「おたくの宙山ちゃんが治癒してくれんだろう……それよりもこいつだ……」
「グオオアア……」
巨大な影が金棒のようなものを振りかざす。
「こ、こいつは……鬼?」
「ああ、どうやら三種が融合した中で、鬼の特徴が色濃く出ているのだろうな……」
慶の呟きに葉が反応する。
「そんなことがあんのか?」
「自分に聞かれても困る。目に見える情報をもとに推測したまでだからな」
慶の問いに葉が答える。
「ま、まあ、そりゃあそうか……」
慶が頷く。蘭が額に流れる血をさっと拭って、前に進み出る。
「鬼だっていうなら、やっぱりアタイの出番だな! 力比べと行こうぜ!」
「ちょ、ちょっと待て!」
「ああん?」
蘭は呼び止めてきた葉の方に振り返る。
「単独では無謀だと身に染みて分かっただろう⁉ ツインアタックだ! 金棒をかざせ!」
「ちっ……しゃあねえなあ……」
葉の指示通りに蘭が金棒をかざす。葉が重ねて指示する。
「分かっているな? 自分の唱え詞に合わせて金棒を振るんだ」
「ああ、分かっているよ……」
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「ふん!」
「!」
蘭が金棒を振り下ろすと、巨大な影に向かって雷が落ちる。慶が口笛を鳴らす。
「~♪ あれが『鬼神之雷』か……こりゃあ強烈だ、ひとたまりも……なにっ⁉」
「……」
巨大な影が雷に耐えているのが目に入った。蘭が舌打ちする。
「ちっ……」
「ば、馬鹿な……」
「おい、不良坊主! ボケっとしてないで畳みかけるぞ!」
「不良じゃねえよ!」
葉が慶に向かって唱える。
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「うおっしゃあ!」
「‼」
慶の放った鋭い突きがリーチ以上の伸びで巨大な影に向かう。
「どうだ! 『神速豪槍』! このスピードはかわせねえだろう! なにっ⁉」
巨大な影がその巨体に似合わぬ素早い動きで慶の槍をかわしてみせる。
「今のをかわすか……パワーもスピードも通じないとは……」
葉が顔をしかめる。蘭が口を開く。
「佐々美ちゃん、そんな顔をしなさんな、美人が台無しだぜ……」
「今はそんなことを言っている場合では……」
「なあに……まだやりようはあるさ」
「なに?」
「慶ちゃん!」
「おうよ!」
蘭の呼びかけに応じ、慶が槍を構え直す。蘭が叫ぶ。
「『鬼仏双撃』だ! おおっ!」
「⁉」
「ご、強引なまでの力押し⁉」
蘭が金棒を、慶が槍を振り回す。その様を見て葉が驚く。
「はあ、はあ……ど、どうだ?」
攻撃を止めた蘭が様子をうかがう。
「グオオアアア……」
巨大な影が立っている。慶が困惑する。
「そ、そんな……手応えはあったのに……」
「それでも耐えきったということだろう」
「マ、マジかよ……」
葉の言葉に慶が頭を抱える。
「ググオオアア……」
巨大な影が再び蘭たちに迫ってくる。
「さて……どうするよ?」
蘭が葉に問いかける。
「……これしかないだろう」
葉が左腕に付けた腕輪をかざす。
「トリケラトプスアタックか!」
「トリニティアタックだ……」
蘭の発言を葉が訂正する。慶が苦笑する。
「これはまた……ぶっつけ本番だな……」
「致し方あるまい……二人とも自分に合わせてくれ」
「……信じて良いんだな?」
「坊主に神様を信じろとは言わんが、自分を信じろ」
「へっ、分かったよ……」
慶と蘭が葉の前に立つ。二人の間に立った葉が詞を唱える。
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「おおっ⁉」
「な、なんだ⁉」
蘭と慶、そして葉がそれぞれ数十人に分身する。葉が人の形をした紙を手に叫ぶ。
「神事で用いる人形を応用した! 質より量で圧倒する方が貴様らの性には合うだろう!」
「ははっ、そりゃあそうだ!」
「へへっ、よく分かってらっしゃる!」
蘭と慶が笑う。葉がさらに叫ぶ。
「いっけえええっ!」
「グググオア⁉」
三人、もとい、三十人以上の波状攻撃を食らって、巨大な影は霧消する。
「『鬼仏神舞』……上手く行ったな」
元に戻った葉が満足気に頷く。
「むっ!」
「さて……」
水仙が右手を掲げると、一体を残して、融合した巨大な影が三体散らばる。
「さ、散開した!」
深海が声を上げる。
「各自迎撃するぞ!」
「ちょっと待った……」
動き出そうとした三丸を夜塚が呼び止める。
「なんだ⁉」
「ボクらはこいつを止めるのに専念した方が良い……」
夜塚が水仙を指差す。
「むう……」
三丸が唇を噛む。
「戦力の分散は愚策だと言いますが……」
深海が眼鏡の縁を触りながら呟く。
「愚策? とんでもない」
夜塚が深海に視線を向け、両手を広げる。
「ええ?」
「戦力は十分に揃っているさ」
「せ、戦力って……」
深海が周囲を見回す。
「気付かないのかい? 眼鏡を替えた方が良いよ、破竹……」
夜塚が冗談っぽく笑みを浮かべる。
「ま、まさか……!」
深海がハッとした表情になる。
「……そのまさかさ」
「……大丈夫なのか?」
三丸が夜塚に問う。
「ここは、彼らのことを信じようじゃないか……言い換えるなら、彼らを第四部隊に選抜した己の眼にそれぞれ自信を持とうよ」
「ふっ……それもそうだな」
三丸が体の向きを水仙に向ける。
「まずは一体を確実に撃破ですね……」
「そういうこと♪」
深海の言葉に夜塚が笑顔で頷く。
♢
「各自、三人、もしくは四人ずつに分かれて迎撃だ!」
葉が周囲に指示を出す。
「とりあえずてめえに一番近い奴に当たれ!」
慶が周りに声をかける。
「落ち着いて対応するんだ!」
葉が冷静になるよう呼び掛ける。
「とりあえず勢いでバーっと、ガーっとやっちまえ!」
慶が身振り手振りで声を上げる。
「この影は!」
「こいつは!」
「自分がやる!」
「オイラがやる!」
葉と慶が隣り合わせで叫ぶ。
「「なっ⁉」」
葉と慶が顔を見合わせる。
「な、なんで貴様がここにいる!」
「そ、それはこっちの台詞だ!」
「そっちに行け!」
「そっちこそそっちに行けよ!」
葉と慶が言い合いをする。
「むう……」
「ちい……」
葉と慶が睨み合う。
「はあ……不毛な争いはやめろよ……」
二人の傍らに立つ蘭がため息交じりに呟く。
「これは剃っているんだよ!」
慶が自らの頭を撫でながら、蘭に向かって声を上げる。
「そこには反応するんだな……」
蘭が呆れる。葉が声を上げる。
「ふん……貴様が行かないというのならば、自分が行く!」
「まあ、待てよ、佐々美ちゃん……今さら悠長に席替えしている余裕はないぜ?」
「む……」
蘭の言葉に葉が冷静になる。蘭が頷く。
「分かれば結構……とりま、この影はアタイらでぶっ潰すぞ!」
蘭が金棒を巨大な影に向ける。
「グオオア……」
巨大な影が蘭たちに向かってくる。
「こういうのは先手必勝だ!」
蘭が影に飛びかかる。
「グオッ!」
「なにっ⁉」
蘭の金棒が軽く受け止められる。
「グオオッ!」
「どわあっ⁉」
蘭が弾き飛ばされ、岩壁に打ち付けられる。
「い、一番槍を取られちまった⁉」
「そ、そんなことを言っている場合か⁉ 志波田隊員のことを心配しろ!」
慶に葉が注意する。
「ああ、あれくらいなら大丈夫だろう。タフそうだし……」
「あれくらいって!」
「へへっ、全然大丈夫だぜ……」
立ち上がった蘭がゆっくりと歩いてくる。頭をはじめ、体中から血を流している。
「だ、大丈夫じゃない⁉」
葉が愕然とする。
「こんなもん、唾つけときゃ治るさ……」
「むしろ悪化するぞ!」
「おたくの宙山ちゃんが治癒してくれんだろう……それよりもこいつだ……」
「グオオアア……」
巨大な影が金棒のようなものを振りかざす。
「こ、こいつは……鬼?」
「ああ、どうやら三種が融合した中で、鬼の特徴が色濃く出ているのだろうな……」
慶の呟きに葉が反応する。
「そんなことがあんのか?」
「自分に聞かれても困る。目に見える情報をもとに推測したまでだからな」
慶の問いに葉が答える。
「ま、まあ、そりゃあそうか……」
慶が頷く。蘭が額に流れる血をさっと拭って、前に進み出る。
「鬼だっていうなら、やっぱりアタイの出番だな! 力比べと行こうぜ!」
「ちょ、ちょっと待て!」
「ああん?」
蘭は呼び止めてきた葉の方に振り返る。
「単独では無謀だと身に染みて分かっただろう⁉ ツインアタックだ! 金棒をかざせ!」
「ちっ……しゃあねえなあ……」
葉の指示通りに蘭が金棒をかざす。葉が重ねて指示する。
「分かっているな? 自分の唱え詞に合わせて金棒を振るんだ」
「ああ、分かっているよ……」
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「ふん!」
「!」
蘭が金棒を振り下ろすと、巨大な影に向かって雷が落ちる。慶が口笛を鳴らす。
「~♪ あれが『鬼神之雷』か……こりゃあ強烈だ、ひとたまりも……なにっ⁉」
「……」
巨大な影が雷に耐えているのが目に入った。蘭が舌打ちする。
「ちっ……」
「ば、馬鹿な……」
「おい、不良坊主! ボケっとしてないで畳みかけるぞ!」
「不良じゃねえよ!」
葉が慶に向かって唱える。
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「うおっしゃあ!」
「‼」
慶の放った鋭い突きがリーチ以上の伸びで巨大な影に向かう。
「どうだ! 『神速豪槍』! このスピードはかわせねえだろう! なにっ⁉」
巨大な影がその巨体に似合わぬ素早い動きで慶の槍をかわしてみせる。
「今のをかわすか……パワーもスピードも通じないとは……」
葉が顔をしかめる。蘭が口を開く。
「佐々美ちゃん、そんな顔をしなさんな、美人が台無しだぜ……」
「今はそんなことを言っている場合では……」
「なあに……まだやりようはあるさ」
「なに?」
「慶ちゃん!」
「おうよ!」
蘭の呼びかけに応じ、慶が槍を構え直す。蘭が叫ぶ。
「『鬼仏双撃』だ! おおっ!」
「⁉」
「ご、強引なまでの力押し⁉」
蘭が金棒を、慶が槍を振り回す。その様を見て葉が驚く。
「はあ、はあ……ど、どうだ?」
攻撃を止めた蘭が様子をうかがう。
「グオオアアア……」
巨大な影が立っている。慶が困惑する。
「そ、そんな……手応えはあったのに……」
「それでも耐えきったということだろう」
「マ、マジかよ……」
葉の言葉に慶が頭を抱える。
「ググオオアア……」
巨大な影が再び蘭たちに迫ってくる。
「さて……どうするよ?」
蘭が葉に問いかける。
「……これしかないだろう」
葉が左腕に付けた腕輪をかざす。
「トリケラトプスアタックか!」
「トリニティアタックだ……」
蘭の発言を葉が訂正する。慶が苦笑する。
「これはまた……ぶっつけ本番だな……」
「致し方あるまい……二人とも自分に合わせてくれ」
「……信じて良いんだな?」
「坊主に神様を信じろとは言わんが、自分を信じろ」
「へっ、分かったよ……」
慶と蘭が葉の前に立つ。二人の間に立った葉が詞を唱える。
「掛けまくも畏き……恐み恐み申す!」
「おおっ⁉」
「な、なんだ⁉」
蘭と慶、そして葉がそれぞれ数十人に分身する。葉が人の形をした紙を手に叫ぶ。
「神事で用いる人形を応用した! 質より量で圧倒する方が貴様らの性には合うだろう!」
「ははっ、そりゃあそうだ!」
「へへっ、よく分かってらっしゃる!」
蘭と慶が笑う。葉がさらに叫ぶ。
「いっけえええっ!」
「グググオア⁉」
三人、もとい、三十人以上の波状攻撃を食らって、巨大な影は霧消する。
「『鬼仏神舞』……上手く行ったな」
元に戻った葉が満足気に頷く。
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